2014/06/27

平成11年(1999年)6月29日 広島で土砂災害頻発

前回取り上げた福岡の水害事例と同じ日に起こった事例を取り上げる。
この日の朝、福岡市に浸水被害をもたらした低気圧と前線は、午後には中国地方に進んで局所的な大雨により大きな被害が発生した。広島市北西部の安佐北区、佐伯区、呉市などで局地的豪雨によって斜面崩壊や土石流が多発して家屋を直撃するなどにより、死者31名行方不明1名に及ぶ大きな災害となった。この時の土砂災害発生場所を示す図を河川情報センターの企画・編集による「災害列島1999 平成11年の水害を検証する」より引用して掲載する。広島市の西部から北部と呉市に集中して発生している。

1999年6月29日広島の土砂災害_1

中国地方は23日頃から梅雨前線上を次々と低気圧が通過し、そのたびに断続的な大雨となっていた。28日に雨はいったん止んだが、既に総雨量は200㎜を超えた所が多くなっていた。
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こうした中、29日には福岡県に猛烈な雨を降らせた低気圧が山陰沖に進んだのに伴って、低気圧に向かって南からの暖かく湿った空気が入り込んで中国地方を中心に梅雨前線の活動が活発となり、午後1時頃から5時頃にかけて、広島市や呉市の周辺で局地的に短時間に猛烈な雨が降った。解析雨量によると、広島市西部から北部にかけてと、呉市付近に線状に非常に強い降雨域がかかっており、時間60㎜~80㎜以上の猛烈な雨の所があった。
この非常に強い雨の領域は、被害の発生域と重なり、23日からの地盤が緩んでいたところに、短時間に集中的に降った猛烈な雨によって同時多発的に土砂災害が発生したものである。広島県内では合わせて139か所で土石流が発生、186か所でがけ崩れが発生した。

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呉市の降雨の時間経過を見ると、突然猛烈な雨が降り出し、2時間程度集中して降っており、この時間帯にほとんどの土砂災害が起こっている。

中国山地の南斜面に位置する広島県は、もろい「まさ土」の斜面が多く、土砂災害に弱い地質特性を持っている。このため、土石流危険渓流が5607か所、急傾斜地崩壊危険箇所が6410か所もあり、その数は全国で最多である。

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ところで、この豪雨の現場に入った放送局の記者から次のようなことを聞いた。 「広島市北西部での土砂災害の現場周辺での聞き取りによると、どの現場も激しい雨が降り15時前後に土砂崩れが起こった。松枯れ(松食い虫による被害だが、地元では平成3年19号台風の後一段と進んだという)がひどく、最近は雨の後にすぐ水が出るが、その後は枯れ沢となるなどで、大雨があれば危ないと思っていたなどの話しを聞いた。崩れ易い土壌に加え、これも被害が大きくなったとも考えられる。」 土石流はこれらの枯死した木々を巻き込み奈川流れ下り住宅地を襲ったため被害が更に拡大したと見られている。

大雨災害は単純に雨の量だけでなく、その雨以前の降雨の状況、地域の地質・地形はもとより、その地域の環境の変化などの様々な要因が重なって、被害の拡大を招くことがある。この事例は、そんな多様な要因が重なって引き起こされた土砂災害の事例といえる。