台風第8号の眼(その2)
7月8日朝、沖縄本島と宮古島の間を北上して東シナ海に進んだ台風第8号は九州の西海上まで北上した9日昼過ぎ急に進路を東に変えた。その後ゆっくり九州に接近し、10日7時前に鹿児島県阿久根市付近に上陸した。
今回は台風が九州の西で進路を変える前後の台風の眼の様子を見る。9日12時の画像で、台風の中心気圧は965㍱、最大風速35m/s、最大瞬間風速50m/sと大型で強い台風であった。西日本をすっぽりと覆うように円形の雲域が見られ、西日本は台風の渦の中に入っていることがわかる。
可視画像では台風の眼の壁雲は最盛期の状態と違って、南側の一部に活発な対流雲が見られるが、北側では低い雲しかなくなっており、眼が半分露出している。拡大図を見て確認してほしい。台風は対流雲が連続的に発達を繰り返すことでその勢力が維持されるが、この画像で見られるように北から西側の部分で対流活動が不活発な状況になるとはっきり衰弱に向かっていると見ることができる。
この台風と共に熱帯域の暖湿な気流が持ち込まれたが、北西側では北から乾燥した気流が台風に巻き込み始めたために現れた変化であろう。
ここで台風が9日1時に東シナ海を北上している状態から、10日昼頃に進路を変えて九州に接近した10日6時までの赤外画像で台風の動きを追って見る。中心付近では対流雲の発達が見られるが持続的ではなく、新たなものが時々発達する状況である。しかも、最初は中心近傍で発達が見られたが、九州に接近する頃には、中心から離れた南側へと移っている。台風の衰弱期には、上層の雲の中心と台風中心がずれを生ずることがしばしばある。可視画像のない夜間にこのような状況が起こると、上層の雲に惑わされて台風中心を見誤ることもあった。
最初の画像では上層の吹き出し雲が北側にも見られたが、北上と共に北西側から減少が始まり、東に向きを変える頃には北から西側では上層雲がなくなり、発達した対流雲も北から北西側ではすっかり消えていた。さらに、下層の雲の減少も始まっている様子も見られ、明らかに台風の円形の雲分布の崩れが見られる。これらの画像で見られる雲域の変化は台風の衰弱が始まっていることを示している。
一方、台風から離れた南側では活発な対流活動が持続しており、何本かのスパイラルバンドが南西諸島に沿って延びており、激しい雨が断続していたことを示している。
この台風が東に転向したのはやや変則的で、この時点で偏西風の流れは北緯40度付近に位置していた。一方、台風を北に持ち上げる働きをしていた太平洋高気圧の勢力は北緯30度の少し北までであったことから、北への押し上げがなくなり、ゆっくりと東に向かうことに繋がったようだ。
やや変則的な経路を経たようだが、こうした偏西風の流れより南側で東に転じゆっくり進んだ台風も過去にいくつか見られる。例えば1987年7月末に四国沖に接近した台風第7号は四国沖200km付近で東に向きを変え、八丈島の南を通った。この時も前線は北緯40度付近にあった。
今回は台風が九州の西で進路を変える前後の台風の眼の様子を見る。9日12時の画像で、台風の中心気圧は965㍱、最大風速35m/s、最大瞬間風速50m/sと大型で強い台風であった。西日本をすっぽりと覆うように円形の雲域が見られ、西日本は台風の渦の中に入っていることがわかる。
可視画像では台風の眼の壁雲は最盛期の状態と違って、南側の一部に活発な対流雲が見られるが、北側では低い雲しかなくなっており、眼が半分露出している。拡大図を見て確認してほしい。台風は対流雲が連続的に発達を繰り返すことでその勢力が維持されるが、この画像で見られるように北から西側の部分で対流活動が不活発な状況になるとはっきり衰弱に向かっていると見ることができる。
この台風と共に熱帯域の暖湿な気流が持ち込まれたが、北西側では北から乾燥した気流が台風に巻き込み始めたために現れた変化であろう。
ここで台風が9日1時に東シナ海を北上している状態から、10日昼頃に進路を変えて九州に接近した10日6時までの赤外画像で台風の動きを追って見る。中心付近では対流雲の発達が見られるが持続的ではなく、新たなものが時々発達する状況である。しかも、最初は中心近傍で発達が見られたが、九州に接近する頃には、中心から離れた南側へと移っている。台風の衰弱期には、上層の雲の中心と台風中心がずれを生ずることがしばしばある。可視画像のない夜間にこのような状況が起こると、上層の雲に惑わされて台風中心を見誤ることもあった。
最初の画像では上層の吹き出し雲が北側にも見られたが、北上と共に北西側から減少が始まり、東に向きを変える頃には北から西側では上層雲がなくなり、発達した対流雲も北から北西側ではすっかり消えていた。さらに、下層の雲の減少も始まっている様子も見られ、明らかに台風の円形の雲分布の崩れが見られる。これらの画像で見られる雲域の変化は台風の衰弱が始まっていることを示している。
一方、台風から離れた南側では活発な対流活動が持続しており、何本かのスパイラルバンドが南西諸島に沿って延びており、激しい雨が断続していたことを示している。
この台風が東に転向したのはやや変則的で、この時点で偏西風の流れは北緯40度付近に位置していた。一方、台風を北に持ち上げる働きをしていた太平洋高気圧の勢力は北緯30度の少し北までであったことから、北への押し上げがなくなり、ゆっくりと東に向かうことに繋がったようだ。
やや変則的な経路を経たようだが、こうした偏西風の流れより南側で東に転じゆっくり進んだ台風も過去にいくつか見られる。例えば1987年7月末に四国沖に接近した台風第7号は四国沖200km付近で東に向きを変え、八丈島の南を通った。この時も前線は北緯40度付近にあった。
執筆者
気象庁OB
市澤成介