2014/11/26
2014年の上陸台風
今年もあと1か月余りとなった。現在のところ台風発生数は20個で平年より少なめである。12月の平年の台風発生数は1.2個なので、もう1個程度発生する可能性もあるがそれでも少なめである。発生した20個の台風のうち、日本列島に接近した台風は12個であり、このうち8号、11号、18号と19号の4つの台風が上陸した。上陸した台風の概要を簡単に述べる。
台風第8号は7月4日朝にマリアナ諸島近海で発生してから北西に進みながら発達を続け、7日3時に北緯20度線付近で中心気圧930㍱まで深まり最盛期を迎えた。気象庁は、台風の進路にあたる沖縄近海の海水温が高いことから、さらに発達し猛烈な強さで沖縄本島地方と宮古島地方を襲うと予想して、台風に対する特別警報を適用した。台風に対しては初めての特別警報の発表である。幸い宮古島への直撃が避けられたことと、台風の発達が予想ほどでなかったこともあって、被害は比較的少なく済んだ。宮古島の東を通過した8号は東シナ海を北上を続け、九州の西海上に進んだころから急速に勢力を弱め、かつ進路を東に変えて、10日朝、鹿児島県阿久根市に上陸した。その後、四国の南、本州の沿岸に沿って東に進み、11日朝関東の東海上で温帯低気圧に変わった。
7月29日にマリアナ諸島近海で発生した台風第11号は非常にゆっくりした動きが特徴で、経路図で見ると北緯20度以南で転向したように見えるが、偏西風の流れは北緯40 以北にあったため、日本付近を覆っていた太平洋高気圧の割れ目をゆっくりと北上を続け、8月10日6時過ぎに高知県安芸市付近に上陸した。発生から13日目の上陸であり、寿命の長い台風であった。上陸後は、次第に速度を速めながら四国・近畿地方を通過し日本海へ進んだ。台風がゆっくり北上したことと日本付近に停滞した前線の影響も重なり、台風の東側を回って湿潤な空気の流入が続き大雨となったところがあった。特に三重県では台風が四国に上陸する1日前の9日に北中部を中心に記録的な雨となって、三重県に大雨特別警報が発表された。津市白山では、それまでの日雨量1位の値の1.7倍の435.5㎜を記録した。四国では総雨量が1000㎜を超えた所もあった。
9月29日にトラック諸島近海で発生した台風第18号は西北西進を続け、10月2日には中心気圧935㍱の非常に強い勢力になった。 その後も非常に強い勢力を維持したまま北西進し、5日朝、奄美大島の東海上で進路を北東に変え、四国の南海上を進んで、10月6日朝、静岡県浜松市付近に上陸した。台風と本州付近に停滞した前線の影響で、東日本太平洋側を中心に大雨となった。特に静岡県から神奈川県にかけては、台風の通過時に非常に激しい雨が降り、所により400㎜を超える大雨となり、土砂災害や浸水害が発生した。神奈川県では土砂崩れにより2名の方がなくなった。激しい雨の様子をレーダーエコー図で見と、静岡付近に台風の中心があり、それを取り巻くように時間80mm以上に相当する猛烈な雨の領域があった。関東地方は台風が月曜日の出勤時間帯に直撃の恐れがあるとして、交通機関は運行規制など事前に対応したこともあり、大きな混乱はなかった。
台風第19号は、10月3日マーシャル諸島近海に発生し発達しながら西北西進し、8日にはヒィリピンの東海上で中心気圧900㍱の猛烈な強さにまで発達し、今年最強の台風となった。その後進路を北北西にとってゆっくり北上を続け、12日には沖縄本島を通過し(この時中心気圧945㍱)、12日奄美大島の西海上で北東に転向し、13日朝鹿児島県枕崎市付近に上陸した(この時中心気圧975㍱)。その後九州、四国、近畿、中部、関東地方を通過し、三陸沖で温帯低気圧に変わった。台風の上陸までに勢力が弱まったこともあるが、18号の上陸から1週間後の上陸であったこともあって、自治体の避難勧告や交通機関の運行規制などが速やかに行われた。こうした行動によって被害が比較的少なくなったことに結び付いたともいえるので、今回のような事前の防災対策が定着することになってほしい。
ここで、4つの台風が最盛期を迎えたころの衛星画像を並べてみることにする。
気象庁は北西太平洋域で発生・発達する台風の位置の決定や強度・規模の解析に衛星画像を用いている。これは台風の眼の形状、雲域のまとまり方、活発な対流雲列の取り巻き方などを用いるもので、かなり高い精度で決定することができる。特に強い勢力に発達する台風では眼の形状が大きな要素となっている。
今年上陸した4つの台風のうち、18号を除くと北緯20度以南で最盛期を迎えており、非常にはっきりした小さい眼があり、非常に発達した台風であることがわかる。最も強い勢力となった19号は円形の雲域の中心に直径30km程度のはっきりした眼がある。この台風は1日に65㍱の気圧の急降下が起こり900㍱と猛烈な強さになった。猛烈な勢力に達する台風の中は、1日に50 ㍱以上の発達することはよくあり、11号も1日に50㍱の急降下が起こっていた。8号の眼を取り巻く白い雲域の北側部分に雲の丸みと直交するような毛羽が立っているように見える。これは強い台風の周辺に現れる波状構造の雲である。
なお、18号は眼の輪郭が不明瞭であるが、小さな眼は非常に強い台風であることを示している。
今度は上陸時の衛星画像を並べてみる。日本への上陸となると、北緯30度を超え、偏西風の流れの影響を受けるため、台風の雲域は次第に変形が始まる。さらに日本列島の地形によって強雨域の偏りなども加わり、中心位置がはっきりしなくなることも多い。4つの台風の中で8号の変形がもっとも大きく、台風中心は鹿児島県西部にあるが、雲域の中心は南から南東側に移りかつ活発な積乱雲もすくなくなっていた。勢力が弱まっていることを表している。4つの台風の中では11号が上陸時にも雲域の丸みが明瞭で最も強い勢力であることがわかる。18号、19号は共に10月に入ってからの台風であったこともあって、偏西風の流れの影響が大きく現れ、北側に幅広く厚い雲域が広がっているのに対して、台風の南西側の雲が少なくなっている。台風一過の晴天ともいわれるが、台風の接近時には早くから天気が崩れ、通過後は急速に天気が回復することを示しているが、このことは雲の形状にもはっきり表れる。「台風の進路予想はいつも遅いようだ」と言われるが、台風がこのように変形が大きくなることが多いことにも関係しているようだ。
台風第8号は7月4日朝にマリアナ諸島近海で発生してから北西に進みながら発達を続け、7日3時に北緯20度線付近で中心気圧930㍱まで深まり最盛期を迎えた。気象庁は、台風の進路にあたる沖縄近海の海水温が高いことから、さらに発達し猛烈な強さで沖縄本島地方と宮古島地方を襲うと予想して、台風に対する特別警報を適用した。台風に対しては初めての特別警報の発表である。幸い宮古島への直撃が避けられたことと、台風の発達が予想ほどでなかったこともあって、被害は比較的少なく済んだ。宮古島の東を通過した8号は東シナ海を北上を続け、九州の西海上に進んだころから急速に勢力を弱め、かつ進路を東に変えて、10日朝、鹿児島県阿久根市に上陸した。その後、四国の南、本州の沿岸に沿って東に進み、11日朝関東の東海上で温帯低気圧に変わった。
7月29日にマリアナ諸島近海で発生した台風第11号は非常にゆっくりした動きが特徴で、経路図で見ると北緯20度以南で転向したように見えるが、偏西風の流れは北緯40 以北にあったため、日本付近を覆っていた太平洋高気圧の割れ目をゆっくりと北上を続け、8月10日6時過ぎに高知県安芸市付近に上陸した。発生から13日目の上陸であり、寿命の長い台風であった。上陸後は、次第に速度を速めながら四国・近畿地方を通過し日本海へ進んだ。台風がゆっくり北上したことと日本付近に停滞した前線の影響も重なり、台風の東側を回って湿潤な空気の流入が続き大雨となったところがあった。特に三重県では台風が四国に上陸する1日前の9日に北中部を中心に記録的な雨となって、三重県に大雨特別警報が発表された。津市白山では、それまでの日雨量1位の値の1.7倍の435.5㎜を記録した。四国では総雨量が1000㎜を超えた所もあった。
9月29日にトラック諸島近海で発生した台風第18号は西北西進を続け、10月2日には中心気圧935㍱の非常に強い勢力になった。 その後も非常に強い勢力を維持したまま北西進し、5日朝、奄美大島の東海上で進路を北東に変え、四国の南海上を進んで、10月6日朝、静岡県浜松市付近に上陸した。台風と本州付近に停滞した前線の影響で、東日本太平洋側を中心に大雨となった。特に静岡県から神奈川県にかけては、台風の通過時に非常に激しい雨が降り、所により400㎜を超える大雨となり、土砂災害や浸水害が発生した。神奈川県では土砂崩れにより2名の方がなくなった。激しい雨の様子をレーダーエコー図で見と、静岡付近に台風の中心があり、それを取り巻くように時間80mm以上に相当する猛烈な雨の領域があった。関東地方は台風が月曜日の出勤時間帯に直撃の恐れがあるとして、交通機関は運行規制など事前に対応したこともあり、大きな混乱はなかった。
台風第19号は、10月3日マーシャル諸島近海に発生し発達しながら西北西進し、8日にはヒィリピンの東海上で中心気圧900㍱の猛烈な強さにまで発達し、今年最強の台風となった。その後進路を北北西にとってゆっくり北上を続け、12日には沖縄本島を通過し(この時中心気圧945㍱)、12日奄美大島の西海上で北東に転向し、13日朝鹿児島県枕崎市付近に上陸した(この時中心気圧975㍱)。その後九州、四国、近畿、中部、関東地方を通過し、三陸沖で温帯低気圧に変わった。台風の上陸までに勢力が弱まったこともあるが、18号の上陸から1週間後の上陸であったこともあって、自治体の避難勧告や交通機関の運行規制などが速やかに行われた。こうした行動によって被害が比較的少なくなったことに結び付いたともいえるので、今回のような事前の防災対策が定着することになってほしい。
ここで、4つの台風が最盛期を迎えたころの衛星画像を並べてみることにする。
気象庁は北西太平洋域で発生・発達する台風の位置の決定や強度・規模の解析に衛星画像を用いている。これは台風の眼の形状、雲域のまとまり方、活発な対流雲列の取り巻き方などを用いるもので、かなり高い精度で決定することができる。特に強い勢力に発達する台風では眼の形状が大きな要素となっている。
今年上陸した4つの台風のうち、18号を除くと北緯20度以南で最盛期を迎えており、非常にはっきりした小さい眼があり、非常に発達した台風であることがわかる。最も強い勢力となった19号は円形の雲域の中心に直径30km程度のはっきりした眼がある。この台風は1日に65㍱の気圧の急降下が起こり900㍱と猛烈な強さになった。猛烈な勢力に達する台風の中は、1日に50 ㍱以上の発達することはよくあり、11号も1日に50㍱の急降下が起こっていた。8号の眼を取り巻く白い雲域の北側部分に雲の丸みと直交するような毛羽が立っているように見える。これは強い台風の周辺に現れる波状構造の雲である。
なお、18号は眼の輪郭が不明瞭であるが、小さな眼は非常に強い台風であることを示している。
今度は上陸時の衛星画像を並べてみる。日本への上陸となると、北緯30度を超え、偏西風の流れの影響を受けるため、台風の雲域は次第に変形が始まる。さらに日本列島の地形によって強雨域の偏りなども加わり、中心位置がはっきりしなくなることも多い。4つの台風の中で8号の変形がもっとも大きく、台風中心は鹿児島県西部にあるが、雲域の中心は南から南東側に移りかつ活発な積乱雲もすくなくなっていた。勢力が弱まっていることを表している。4つの台風の中では11号が上陸時にも雲域の丸みが明瞭で最も強い勢力であることがわかる。18号、19号は共に10月に入ってからの台風であったこともあって、偏西風の流れの影響が大きく現れ、北側に幅広く厚い雲域が広がっているのに対して、台風の南西側の雲が少なくなっている。台風一過の晴天ともいわれるが、台風の接近時には早くから天気が崩れ、通過後は急速に天気が回復することを示しているが、このことは雲の形状にもはっきり表れる。「台風の進路予想はいつも遅いようだ」と言われるが、台風がこのように変形が大きくなることが多いことにも関係しているようだ。
執筆者
気象庁OB
市澤成介