2015/03/10
「気象予測の検証を」 総務省が気象庁に勧告
先日(2月27日)、新聞等に次のような記事が報道されました。
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「気象予測の検証を」 総務省が気象庁に勧告
総務省は27日、大雨警報などの情報が住民の避難や防災にどのくらい役立ったかを検証し、公表するよう気象庁に勧告した。「利用者の立場に立った検証や情報提供が不十分」だと指摘し、気象庁の方針について半年後に回答を求める。
大雨警報の発令後、実際に一定の雨量に達するまでにかかった時間や、事業者向けの緊急地震速報がどのくらい正確だったかといった点について検証を求めた。大雪警報や津波警報のように予測が難しいものについては、どのような技術的な課題があるかを国民に分かりやすく情報提供するよう求めた。
(日本経済新聞:2015/2/27 13:24 )
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また、総務省様のHPにも本件に関わる報道発表内容、及び資料等が掲載されています。
気象予測の精度向上等の取組に関する行政評価・監視 <調査結果に基づく勧告>
リンク:http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/93237.html
この総務省様からの改善勧告書を読ませていただきましたが、これは単に気象庁さんだけに向けたものではなく、我々民間気象情報会社を含む気象業界全体に対して発せられた改善勧告であると、私は受け取っています。
ご指摘事項はごもっとも…というものが多く(一部、誤認されているのではないか…と思えるものもありはするのですが)、我々民間気象情報会社もこれを真摯に受け止めなければならない…と思っています。
今回の勧告、突き詰めて言わせていただくと、気象は理学、防災は工学…これに尽きるのではないか…と私は思っています。
気象庁さんは気象庁さんなりに精一杯頑張っておられます。誤解を恐れずに言わせていただくと、その頑張りは、大変申し訳ない言い方にはなりますが、“理学屋さん”としての頑張りが主体なんです。“理(ことわり)”の学問と書くように理学の目的は、真理の探求にあります。気象で言うならば、気象・地象・海象という自然現象がなぜ起こるか…ということの探求というわけです。その目的は、未来を予測するためです。原因が突き止められ、理論化されないと、未来の予測などできません。これはこれで全てのベースになることで極めて重要なことです。
一方で、情報はそれ自体なんの価値も持たないもので、情報を活用して“しっかり守りたい”、“無駄を省きたい”、“もっと守りたい”という情報の受け手(利用者)の問題や課題を解決して初めて価値を産むものである…と私は思っています。情報の受け手(利用者)はそれぞれ異なった問題や課題を抱えているわけで、同じではありません。そこには、それぞれの情報の受け手(利用者)の抱える問題や課題に合ったように情報に付加価値を持たせることが求められます。地域防災だって同じことです。地域ごとに地形や土壌や都市開発の形がまったく異なるわけで、一律ではありません。同じ量の雨が降ったとしても、地域ごとの地形や土壌や都市開発の形の違いにより、現れてくる災害リスクは異なります。あるところは土砂災害を警戒しないといけないし、あるところは河川氾濫による洪水を警戒しないといけないし、またあるところは内水氾濫による道路や住宅の浸水を警戒しないといけない…と、それぞれです。これは“工学”の世界です。“工学”は目的志向で、常に“利用者のニーズ”が出発点になります。ここが同じ理系といっても“理学”と“工学”が大きく、いや、根本的に異なるところです。「理学と工学では、根底にある宗教が違う」と言う人もいるくらいです。
防災に関して言うと、“災害”とは、“災い”が“害”になる…と書きます。自然災害に関して言うと、“災い”とは雨や風や地震、火山噴火といった自然現象のことです。これは“理学”の世界です。
しかしながら、雨が降ったら必ず災害が起きるかと言えば、決してそんなことはありません。地震だってそうです。地震が起きたら必ず災害が起きるかと言えば、決してそんなことはありません。“災い”を“害”にさえしなければいいわけで、ここは“工学”の世界です。気象情報に関して言えば、情報の受け手(利用者)それぞれのニーズに合ったように付加価値を付けて提供することがそれにあたり、これは“工学”の世界です。
気象情報提供において、この“工学”の部分を担うのが、我々民間気象情報会社の役割であるとの認識で私は(弊社ハレックスは)います。
総務省様からの改善勧告書は、この“理学”と“工学”の連携が上手くいっていないので、なんとかしろ!…という指摘だと私は思います。もっと言うと、我々民間気象情報会社が本来の役割を十分に果たせていないという指摘なのかもしれません。いや、そういう厳しい指摘であると、私は読み解きました。
私は6年前にこのことに気付き、また、4年前の東日本大震災でそれが確信に変わり、今に到っています。このことに気付いて前の会社を卒業させていただいた以降、民間気象情報会社として本来“あるべき姿”を実現しようと様々な会社の変革に取り組んできました。民間気象情報会社としての本来“あるべき姿”とは、気象に関する日本の“理学”の総本山である気象庁さんを補完する“工学”の役割をしっかりと果たせる機関になることだと私は思っています(ちなみに、“工学”は“理学”がベースにないとまったく成り立たないので、“工学者”は“理学者”を常にリスペクトしています)。ただ、それがまだまだだ不十分である、もっと急げ!…ということなのかもしれません。
民間気象情報会社としての本来“あるべき姿”を実現するためには、今のままでは全然ダメで、やるべきこと、やりたいことがまだまだ山のように山積しています。社員1人1人の意識を根底から変えていくこともしないといけません。社会から求められていることがこれまでとは違ってきているということですから。今回の総務省様からの改善勧告書はそういうことも意味していると私は捉えています。
また、あわせて、気象情報会社の役割は、気象予報士がお天気の予報をすることだけではないということ、私達の仕事はこんなに広いんだということを、広く世の中の方々にアピールして、もっともっと期待していただけるようにしていかないといけない…と思っています。
頑張りますo(^o^)o
【追記】
このハレックス社HPのオフィシャルブログ『志事人ブログ(燃えさかれ志事人!)』では、私の『おちゃめ日記』のほかに、日本気象の生き字引である元気象庁予報課長の市澤成介担当部長の『成介日記』と、元陸上自衛隊陸将補で荒川区の危機管理監も務められた災害対応のエキスパートである清水明徳顧問の『老兵日記』の2つを掲載しています。これも弊社ハレックスの“思い”、そして目指している世界です。
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「気象予測の検証を」 総務省が気象庁に勧告
総務省は27日、大雨警報などの情報が住民の避難や防災にどのくらい役立ったかを検証し、公表するよう気象庁に勧告した。「利用者の立場に立った検証や情報提供が不十分」だと指摘し、気象庁の方針について半年後に回答を求める。
大雨警報の発令後、実際に一定の雨量に達するまでにかかった時間や、事業者向けの緊急地震速報がどのくらい正確だったかといった点について検証を求めた。大雪警報や津波警報のように予測が難しいものについては、どのような技術的な課題があるかを国民に分かりやすく情報提供するよう求めた。
(日本経済新聞:2015/2/27 13:24 )
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また、総務省様のHPにも本件に関わる報道発表内容、及び資料等が掲載されています。
気象予測の精度向上等の取組に関する行政評価・監視 <調査結果に基づく勧告>
リンク:http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/93237.html
この総務省様からの改善勧告書を読ませていただきましたが、これは単に気象庁さんだけに向けたものではなく、我々民間気象情報会社を含む気象業界全体に対して発せられた改善勧告であると、私は受け取っています。
ご指摘事項はごもっとも…というものが多く(一部、誤認されているのではないか…と思えるものもありはするのですが)、我々民間気象情報会社もこれを真摯に受け止めなければならない…と思っています。
今回の勧告、突き詰めて言わせていただくと、気象は理学、防災は工学…これに尽きるのではないか…と私は思っています。
気象庁さんは気象庁さんなりに精一杯頑張っておられます。誤解を恐れずに言わせていただくと、その頑張りは、大変申し訳ない言い方にはなりますが、“理学屋さん”としての頑張りが主体なんです。“理(ことわり)”の学問と書くように理学の目的は、真理の探求にあります。気象で言うならば、気象・地象・海象という自然現象がなぜ起こるか…ということの探求というわけです。その目的は、未来を予測するためです。原因が突き止められ、理論化されないと、未来の予測などできません。これはこれで全てのベースになることで極めて重要なことです。
一方で、情報はそれ自体なんの価値も持たないもので、情報を活用して“しっかり守りたい”、“無駄を省きたい”、“もっと守りたい”という情報の受け手(利用者)の問題や課題を解決して初めて価値を産むものである…と私は思っています。情報の受け手(利用者)はそれぞれ異なった問題や課題を抱えているわけで、同じではありません。そこには、それぞれの情報の受け手(利用者)の抱える問題や課題に合ったように情報に付加価値を持たせることが求められます。地域防災だって同じことです。地域ごとに地形や土壌や都市開発の形がまったく異なるわけで、一律ではありません。同じ量の雨が降ったとしても、地域ごとの地形や土壌や都市開発の形の違いにより、現れてくる災害リスクは異なります。あるところは土砂災害を警戒しないといけないし、あるところは河川氾濫による洪水を警戒しないといけないし、またあるところは内水氾濫による道路や住宅の浸水を警戒しないといけない…と、それぞれです。これは“工学”の世界です。“工学”は目的志向で、常に“利用者のニーズ”が出発点になります。ここが同じ理系といっても“理学”と“工学”が大きく、いや、根本的に異なるところです。「理学と工学では、根底にある宗教が違う」と言う人もいるくらいです。
防災に関して言うと、“災害”とは、“災い”が“害”になる…と書きます。自然災害に関して言うと、“災い”とは雨や風や地震、火山噴火といった自然現象のことです。これは“理学”の世界です。
しかしながら、雨が降ったら必ず災害が起きるかと言えば、決してそんなことはありません。地震だってそうです。地震が起きたら必ず災害が起きるかと言えば、決してそんなことはありません。“災い”を“害”にさえしなければいいわけで、ここは“工学”の世界です。気象情報に関して言えば、情報の受け手(利用者)それぞれのニーズに合ったように付加価値を付けて提供することがそれにあたり、これは“工学”の世界です。
気象情報提供において、この“工学”の部分を担うのが、我々民間気象情報会社の役割であるとの認識で私は(弊社ハレックスは)います。
総務省様からの改善勧告書は、この“理学”と“工学”の連携が上手くいっていないので、なんとかしろ!…という指摘だと私は思います。もっと言うと、我々民間気象情報会社が本来の役割を十分に果たせていないという指摘なのかもしれません。いや、そういう厳しい指摘であると、私は読み解きました。
私は6年前にこのことに気付き、また、4年前の東日本大震災でそれが確信に変わり、今に到っています。このことに気付いて前の会社を卒業させていただいた以降、民間気象情報会社として本来“あるべき姿”を実現しようと様々な会社の変革に取り組んできました。民間気象情報会社としての本来“あるべき姿”とは、気象に関する日本の“理学”の総本山である気象庁さんを補完する“工学”の役割をしっかりと果たせる機関になることだと私は思っています(ちなみに、“工学”は“理学”がベースにないとまったく成り立たないので、“工学者”は“理学者”を常にリスペクトしています)。ただ、それがまだまだだ不十分である、もっと急げ!…ということなのかもしれません。
民間気象情報会社としての本来“あるべき姿”を実現するためには、今のままでは全然ダメで、やるべきこと、やりたいことがまだまだ山のように山積しています。社員1人1人の意識を根底から変えていくこともしないといけません。社会から求められていることがこれまでとは違ってきているということですから。今回の総務省様からの改善勧告書はそういうことも意味していると私は捉えています。
また、あわせて、気象情報会社の役割は、気象予報士がお天気の予報をすることだけではないということ、私達の仕事はこんなに広いんだということを、広く世の中の方々にアピールして、もっともっと期待していただけるようにしていかないといけない…と思っています。
頑張りますo(^o^)o
【追記】
このハレックス社HPのオフィシャルブログ『志事人ブログ(燃えさかれ志事人!)』では、私の『おちゃめ日記』のほかに、日本気象の生き字引である元気象庁予報課長の市澤成介担当部長の『成介日記』と、元陸上自衛隊陸将補で荒川区の危機管理監も務められた災害対応のエキスパートである清水明徳顧問の『老兵日記』の2つを掲載しています。これも弊社ハレックスの“思い”、そして目指している世界です。
執筆者
株式会社ハレックス
前代表取締役社長
越智正昭
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