2015/04/22
今年も既に時間100㎜を超える雨があった
この4月は異常な雨の降り方をする例が多い。記録的な雨が降った事例を見ることにする。
4月12日には四国の南海上を通過した低気圧により、高知県土佐清水で4月としてはこの地点の観測史上最大(全年で見ても5位以内)の大雨となった。レーダーの観測によると、土佐清水市の南東側に時間80mm以上の猛烈な雨を含む細長い降水雲があり、その極一部が陸地に掛かっていた。これがもう少し内陸部まで入っていれば、大雨の影響は大きかったのではと思う。
この降水域の時間変化の様子も見ていただきたい。2時から10時迄の10分刻みの降水域の変化を示す。九州東岸付近に現れた、何本かの強雨バンドが盛衰を繰り返しながら四国の南西端に接近し、一部の降雨バンドが短時間で強化されている様子が見られる。細長く延びた降雨帯の動きが細長く延びた方向と異なっていたことから、猛烈な雨の時間が短かったことも幸いしたと思える。
さらに4月19日には与那国島で時間130㎜を超える猛烈な雨が観測された。与那国島にある2つの観測点の時間雨量の経過を図にしたが、与那国空港の観測所では130.5㎜、与那国島特別地域気象観測所では101.5㎜の最大1時間雨量を観測した。空港の観測所は観測期間が短いこともあって、観測開始以来の記録となった。それでも1時間雨量が130㎜を超えるのは極めてまれにしか現れないことである。一方の与那国島特別地域気象観測所は1956年に観測開始で60年近い記録が残っているが、それでも1時間雨量が観測開始以来の3位の記録となり、4月としては日雨量が2位、1時間雨量が2位、10分間雨量が3位の記録的なものであった。
この日の天気図を見ると、東シナ海北部に前線があり、与那国島方面は関東の南東海上に中心を持つ高気圧の西への張り出しの縁にあたっている。大雨の降るようなパターンとは思えないメリハリのない気圧配置だが、熱帯域からの湿潤な気流がこの高気圧の縁に沿って流入し、大気の状態が不安定となって、積乱雲が次々発達する形となったもので、衛星画像では、東シナ海に活発な積乱雲群が見られる。与那国島付近に掛かる活発な積乱雲は西端部分が明瞭である。これはこの付近で積乱雲が発達していることを示している。一方の東端部分がぼけて見えるのは、積乱雲の上部の雲が流され拡散している様子を示しており、この東の部分では強い降水はない。
この時のレーダー観測による雨雲の変化も見ていただきたい。午前1時から6時までの10分刻みのエコーの動きを示した。個々の雨雲は東南東に流されているが、衛星で見たように雨雲の西端の輪郭が明瞭であり、一連の雨雲は与那国島の西から北北西走向に伸びて散在しており、この西端部分に強いエコーが次々と発生しているように見える。この中で、与那国島付近でエコーが一段と強化されたことが読み取れる。
この翌日20日には鹿児島県徳之島で記録的な大雨が降った。この事例では、1時間100㎜を超えるような観測記録はなかったが伊仙では、1時間雨量が76㎜と第2位の記録となった。激しい降り方は2時間も続いていないが、20日の日中にかけて雨が降り続いている。
レーダーエコー図は伊仙で激しい雨となっている時の様子であるが、活発な積乱雲群が徳之島を覆っている。この積乱雲群とは別に西海上には東西に延びる対流雲列があるが、この後この雨雲はこのまま東に進み奄美大島南部に掛かって、徳之島の雨は弱まった。しかし、この東西に延びる雨雲の西にも次々に雨雲が発生し、日中にかけて、奄美大島と徳之島付近に掛かり続けた。県の観測所の記録では、総雨量が250㎜を超えた所もあった。
3つの局地的な短時間強雨の事例を見てきたが、3事例ともレーダーエコー分布で明らかなように、時間50㎜を超える範囲はかなり狭く、猛烈に強い降り方をした降水エコーの寿命が短かったことがわかる。激しい雨をもたらす積乱雲が一つ通過するだけであれば、雨は10分か20分程度で弱まるものであるが、発達した積乱雲が同じ場所に次々と侵入するような場合は、1時間を超えて数時間も激しい雨が続くこともある。今回の3事例は、単一の発達した積乱雲による強雨ではなく、次々と発達した積乱雲の侵入によって起こったものであるが、降水域全体がゆっくり移動していたこともあって、1時間を少し超える程度の時間で収まっていた。
激しい雨が降ってきたとき、孤立した雨雲であれば、せいぜい30分もすれば収まるが、線状の強い降水帯が形成され同じ位置に留まるような場合は、記録的な雨になりかねないので特に警戒する必要がある。
今年の4月はまだ終わっていないが、既にこれほどの激しい雨が頻発している。出水期を前にしてこのような局地的に激しい雨が発生していることは、今年の梅雨期にも局地的な激しい雨が頻発するかも知れないと警鐘を鳴らしているようにも思える。
都道府県の水防計画が確認される時期である。この計画の中には、注意・警戒を要すべき地域等が示されているのでこうした資料や洪水ハザードマップなどを点検してもらいたい。そして、今年は大雨による人的な被害を最小限に留めることができるよう、それぞれが万全の備えをしてほしいと願う。
この降水域の時間変化の様子も見ていただきたい。2時から10時迄の10分刻みの降水域の変化を示す。九州東岸付近に現れた、何本かの強雨バンドが盛衰を繰り返しながら四国の南西端に接近し、一部の降雨バンドが短時間で強化されている様子が見られる。細長く延びた降雨帯の動きが細長く延びた方向と異なっていたことから、猛烈な雨の時間が短かったことも幸いしたと思える。
さらに4月19日には与那国島で時間130㎜を超える猛烈な雨が観測された。与那国島にある2つの観測点の時間雨量の経過を図にしたが、与那国空港の観測所では130.5㎜、与那国島特別地域気象観測所では101.5㎜の最大1時間雨量を観測した。空港の観測所は観測期間が短いこともあって、観測開始以来の記録となった。それでも1時間雨量が130㎜を超えるのは極めてまれにしか現れないことである。一方の与那国島特別地域気象観測所は1956年に観測開始で60年近い記録が残っているが、それでも1時間雨量が観測開始以来の3位の記録となり、4月としては日雨量が2位、1時間雨量が2位、10分間雨量が3位の記録的なものであった。
この日の天気図を見ると、東シナ海北部に前線があり、与那国島方面は関東の南東海上に中心を持つ高気圧の西への張り出しの縁にあたっている。大雨の降るようなパターンとは思えないメリハリのない気圧配置だが、熱帯域からの湿潤な気流がこの高気圧の縁に沿って流入し、大気の状態が不安定となって、積乱雲が次々発達する形となったもので、衛星画像では、東シナ海に活発な積乱雲群が見られる。与那国島付近に掛かる活発な積乱雲は西端部分が明瞭である。これはこの付近で積乱雲が発達していることを示している。一方の東端部分がぼけて見えるのは、積乱雲の上部の雲が流され拡散している様子を示しており、この東の部分では強い降水はない。
この時のレーダー観測による雨雲の変化も見ていただきたい。午前1時から6時までの10分刻みのエコーの動きを示した。個々の雨雲は東南東に流されているが、衛星で見たように雨雲の西端の輪郭が明瞭であり、一連の雨雲は与那国島の西から北北西走向に伸びて散在しており、この西端部分に強いエコーが次々と発生しているように見える。この中で、与那国島付近でエコーが一段と強化されたことが読み取れる。
この翌日20日には鹿児島県徳之島で記録的な大雨が降った。この事例では、1時間100㎜を超えるような観測記録はなかったが伊仙では、1時間雨量が76㎜と第2位の記録となった。激しい降り方は2時間も続いていないが、20日の日中にかけて雨が降り続いている。
レーダーエコー図は伊仙で激しい雨となっている時の様子であるが、活発な積乱雲群が徳之島を覆っている。この積乱雲群とは別に西海上には東西に延びる対流雲列があるが、この後この雨雲はこのまま東に進み奄美大島南部に掛かって、徳之島の雨は弱まった。しかし、この東西に延びる雨雲の西にも次々に雨雲が発生し、日中にかけて、奄美大島と徳之島付近に掛かり続けた。県の観測所の記録では、総雨量が250㎜を超えた所もあった。
3つの局地的な短時間強雨の事例を見てきたが、3事例ともレーダーエコー分布で明らかなように、時間50㎜を超える範囲はかなり狭く、猛烈に強い降り方をした降水エコーの寿命が短かったことがわかる。激しい雨をもたらす積乱雲が一つ通過するだけであれば、雨は10分か20分程度で弱まるものであるが、発達した積乱雲が同じ場所に次々と侵入するような場合は、1時間を超えて数時間も激しい雨が続くこともある。今回の3事例は、単一の発達した積乱雲による強雨ではなく、次々と発達した積乱雲の侵入によって起こったものであるが、降水域全体がゆっくり移動していたこともあって、1時間を少し超える程度の時間で収まっていた。
激しい雨が降ってきたとき、孤立した雨雲であれば、せいぜい30分もすれば収まるが、線状の強い降水帯が形成され同じ位置に留まるような場合は、記録的な雨になりかねないので特に警戒する必要がある。
今年の4月はまだ終わっていないが、既にこれほどの激しい雨が頻発している。出水期を前にしてこのような局地的に激しい雨が発生していることは、今年の梅雨期にも局地的な激しい雨が頻発するかも知れないと警鐘を鳴らしているようにも思える。
都道府県の水防計画が確認される時期である。この計画の中には、注意・警戒を要すべき地域等が示されているのでこうした資料や洪水ハザードマップなどを点検してもらいたい。そして、今年は大雨による人的な被害を最小限に留めることができるよう、それぞれが万全の備えをしてほしいと願う。
執筆者
気象庁OB
市澤成介