2015/08/14
陽光桜の物語
2年ほど前、愛媛県の「坂の上のクラウドコンソーシアム」を結成する前段として、事前の意見交換目的で愛媛県の幾つかの農業生産法人の方々を訪ねて、お話を伺ったことがあります。その中で、松山市に隣接する東温市で遠赤青汁株式会社を経営する高岡照海社長にもお会いしました。
遠赤青汁株式会社は健康食品青汁で、まさに第一(生産)+第二(加工)+第三(流通・販売)の第六次産業を実践されている農業生産法人です。商品名でもある遠赤青汁は本当の有機栽培を実践するため完全に自社農園で栽培したケール(菜っ葉)やニンニクだけを使い、それを自社工場で飲みやすい粉末や錠剤に加工し、ネット販売を含め自社で開拓した販路で販売しています。製品に絶対の自信をお持ちで、店頭販売では超有名百貨店にしか置かないのだそうです。
遠赤青汁HP
遠赤青汁株式会社HP…社長あいさつの写真は10年前の写真でしょう。あまりに若すぎます(笑)
遠赤青汁株式会社の製品は医療現場で薬として使われているほどの高品質な物で、日本国内はもとより海外からも政府関係者や農業関係者がその栽培方法(土の作り方から)や高い生産技術を学びに訪れるほどの会社です。完全に自社農園で有機栽培したケールだけを材料としているため、生産量が限られ、会社の規模はさほど大きくなく、販路もネット販売が中心なので知名度も高くないのですが、知る人ぞ知る…って感じでコアな固定客を完全に掴んでいて、利益率は相当に高い感じです。(海外では青汁の錠剤が1瓶5万円台でも、飛ぶように売れているのだとか(@_@))
資本金45百万円、従業員29名。規模としては地方の中小企業ですが、メチャメチャ元気な会社です。こんな会社が、四国愛媛の松山市近郊の“こんなところ”にあったとは(@_@) “こんなところ”とは、松山市から東へ、新居浜、高松に向かう国道11号線。それも道後(松山)平野が終わり、これから高縄半島を横断する桜三里と呼ばれる長い坂道にかかろうとするまさにそのあたりに遠赤青汁株式会社の本社はあります。周囲を山に囲まれたただの民家のような感じの建物で、看板も小さく出ているだけなので、うっかりすると見過ごしそうです。私は松山でレンタカーを借りて旧越智郡朝倉村の本家へ行く時はいつもこの道を走っているのですが、これまでまったくこの会社の存在に気づきませんでした(^^;
おまけにこの会社、IT活用に極めて積極的で、経済産業省の認定する「中小企業IT経営力大賞」に大賞が設立されて以来6年連続で選ばれているような会社で、「農家と市場を結ぶ情報の分析で、新分野の顧客獲得と事業の拡大を実践」と経済産業省のHPにも紹介されているほどです。これは農業分野では初のことです(@_@)
遠赤青汁スタッフブログより
実はこの遠赤青汁株式会社の創設者である高岡照海社長、実はあのテレビでも全国的に「は・かっ・た~の塩!」ってコマーシャルをやっている『伯方の塩』の初代社長の御子息です(高岡照海社長は現在も「伯方の塩」の社外取締役でもあります)。
で、その『伯方の塩』の初代社長の先代・高岡正明氏が30数年の長い歳月をかけて取り組まれたのが「陽光桜」というブランド名称で知られる桜の新品種の開発と、その植樹活動。先代正明氏が日本各地のみならず世界中に無償で寄贈した陽光桜の苗木は5万本を超えるとのことです。
その遺志は先代正明氏が亡くなられた後も長男である現・照海社長に受け継がれ、現在も年間約3千本の陽光桜の苗木を「平和のシンボル」として世界各国に無償で贈り続けているのだそうです。その活動は新聞やテレビで何度か取り上げられていて、2013年の4月にはNHK松山放送局でドキュメンタリー番組(再現映像部分はドラマ化)まで制作され、放映されました。
『心を照らす桜~陽光桜の物語~』NHK松山放送局HPより
遠赤青汁スタッフブログより
(この素晴らしい陽光桜の活動をほとんど自社の宣伝に直接結び付けていないところが、この社長(親子二代)の“人物”としての凄いところです。)
このようにビジネスの傍ら世界中を植樹に飛び歩かれていて超多忙な高岡照海社長です。新聞やテレビで陽光桜が取り上げられたことでさらに有名になり、取材も含め会いたいという方も大勢いらっしゃるので、なかなかお会いすることがかなわないという噂でした。私のほうから「IT活用により愛媛県における農業の競争力を強化するプロジェクトを近日立ち上げたいと思っているのですが、なにとぞお力をお貸しいただきたい。ついては、直接お会いしてお願いをしたいので、明日、会っていただけませんか」と不躾にもなんと前日に突然のアポイントメントのお申し入れをしたところ、「いいですよ。14時にお越しください」という快諾のお返事をすぐにいただき、意外なほどアッサリしたアポ取りの成功に、その時はこちらのほうが驚いてしまいました(@_@)
とは言え、あれほどの人物が大変お忙しい中、わざわざ私のためにお時間をとっていただいたと言うので、正直、ちょっと緊張して会社を訪れました(^^;
社長室に通されると、ほどなく高岡社長が外(おそらく本社農場?)から戻って来られました。作業着に長靴姿。お会いした高岡社長はお身体全体から太陽と土の匂いがする、まさに“農家のオッチャン”って感じの方でした。今年74歳(確か)ということでしたが、さすがに同社自慢の健康食品『遠赤青汁』を毎日お飲みの効果か、まったくそんなお歳には見えません。少なくとも10歳は若く見えます。もしかしたら59歳の私より肉体的には元気かも。農家の方らしく、筋肉質のガッチリした体形をなさっています。そしてとにかくエネルギッシュ!
おそらく愛媛県農業法人協会の牧会長から私に関しての話がいっていたのではないか…と思われるのですが、どういうわけか会話は冒頭から妙に盛り上がり、地元の農業の現状の話から、ITの話、政治・経済の話、企業経営の話、マーケット戦略の話、果ては世界観の話…と話題が次から次へと移り、大いに盛り上がってしまいました。(冒頭の話の切り出しをどうしようか…と、その日の松山に向かう飛行機の中では私はそのことばかりに頭をフル回転させていました。その“ツカミ”が少しは奏功したのかもしれません。その内容は私の営業ノウハウなので内緒にします。)
農業従事者らしくよく陽に焼けた少しいかつい顔をなさっていますが、にこやかに、穏やかに、少し東予弁(愛媛県東部の方言)の混じった中予弁(愛媛県中部松山市近郊の方言)で話されます。少しお話を伺っただけで、この“農家のオッチャン”、ただ者ではないぞ!…って感じがしましたね。まさに“企業経営者”って感じです。
話の内容と面白さに関しては、とても地方の中小企業の経営者のレベルではありません。東京の大企業の経営者でもここまで独自の確固たる経営哲学をお持ちで、しかもそれを分かりやすく端的なご自分自身の言葉で述べられる経営者はそうそういらっしゃいません(ドラッカーがどうのこうの…と、自分の知識の披露をされる社長さんは掃いて捨てるほど大勢いらっしゃいますが)。しかも、実績に裏打ちされているので、説得力があります。さらに小さな会社だけに、その経験も多岐に渡り、何サイクルも経験を繰り返しているので、経営哲学も洗練され、まさに極められつつあるって感じがします。
このところの私は著名な経営コンサルタントの方の話を聴いてもちっとも面白いと思ったことはないし(企業経営の真の苦労の経験がない人が理論ばかりを述べても、ちっとも心に響きません)、チャラチャラしたぽっと出の若いベンチャー企業の経営者の成功体験話も「あぁ、そうですか」レベルのものばかりで、参考になったというものにここしばらく出会ったことがないのですが、この高岡照海社長の話はまったく違いました。私も企業経営者の端くれとして大いに共感できましたし、メチャメチャ参考になりました。これはお金を払ってでももっと聴きたいと思えました。
逆に言うと、企業経営の経験がない方には、おそらく高岡社長の話は半分くらいしか分からないのではないか…とさえ思われました。ちょっと聴くと雲を掴むような話をされますが、そこにこそ物事の真髄を突いた本質的なことが隠されているんですね。同じ景色を眺めていても見ている視点が違うと言うか…。とにかく視点が高い。
社長室の壁面には陽光桜を植樹に行った時に撮影したと思われる各国の要人と並んで撮った写真が何枚も、額にも入れずにさりげなく貼られています。北米、欧州、中国、東南アジア、南米、アフリカ…民族衣装や風景の雰囲気で推察するしかありませんが、世界各国といった感じです。その写真について尋ねても「あぁ、これは◯◯(国名)」と言うくらいで特に何も説明していただけませんでした。そこが逆に凄い! ここには最近訪問した国の写真だけを貼っているだけで、他にもいっぱいあるんだとか。いったい何ヵ国、行かれているのだろう? そして、この日本の田舎の“農家のオッチャン”は、各国の要人達と何を話してきたんだろう?…って思ってしまいます。高岡社長の視点の高さと見識の深さの源泉を見つけた気がします。ホント“ただ者”ではありません。
で、この「陽光桜」を30年という歳月をかけて生み出した高岡照海社長の御父上、高岡正明氏の半生を描いた映画『陽光桜』が先月7月に完成し、今年の11月に全国で公開されることになりました。3月にクランクインし、地元愛媛県の松山市や東温市、今治市等でロケを行っていましたが、ついに完成して、松山市で試写会があったようです。
この映画『陽光桜』で主役の高岡正明氏の役を務めるのは、渋い名脇役として定評のあるベテラン俳優の笹野高史さん。共演は的場浩司さん(長男である高岡照海社長の役です)、宮本真希さん、野村宏伸さん、長谷直美さん、川上麻衣子さん、津川雅彦さん、風祭ゆきさん…という演技達者な俳優さんがズラリと脇を固めています。
監督は「CHARON」、「GOTH」、「ポチの告白」、「ゼウスの法廷」等を手掛けた高橋玄監督。ちなみに、高橋玄監督の祖父である藪下泰次氏は、あのアニメ界の巨匠・宮崎駿氏の師匠にあたります。
映画「陽光桜」のストーリーは以下の通りです。
大東亜戦争中、愛媛県川内町(現・東温市)で教員を務めていた高岡正明氏は、村の若者が出征する際に、校庭の桜の下で「日本は強い国だ。絶対負けない国だ。また、この桜の木の下で会おう」と言い聞かせて見送りました。しかし、その若者たちの戦死の報告が次々と届きます。高岡氏は、「私は何ということを生徒たちに話してきたのか…」と自責の念にさいなまれる日々が続きます。
敗戦後、高岡氏は亜熱帯のジャワや極寒のシベリアで散っていった生徒達への鎮魂と、世界の恒久平和への願いを託して、氷点下30℃の極寒地から気温30℃を越える高温地に至るまでのどんな過酷な環境でも耐えうる強い「桜」を作ろう…と、品種改良を決意します。
当時、桜は人工授粉で新種の桜をつくることは不可能だと言われていました。しかし、高岡氏は約30年の年月と私財のほとんどを費やし、独学独力で200種類の桜の交配を繰り返します。そうした“信念”というか“執念”を込めた壮絶な試行錯誤を経て、ようやく「陽光」という新種の桜の開発に成功します。そしてそして、なんと、高岡氏はその「陽光桜」を……。
あとは、秋に公開される映画を是非ご覧ください。これは実話、歴史上の事実を描いた実話です(^^)d
この映画はいわゆる東宝・松竹・東映など大手映画配給会社が製作したのではなく、高橋玄監督が主宰する「グランカフェピクチャーズ」が多くの法人・個人から一口10万円の協賛金を募り制作した、いわゆる「自主制作映画」です。映画の本場「ハリウッド」では脚本がすべてで、その脚本の内容いかんで賛同してくれる出資者を募り、映画を製作して配給会社に売り込むのが主流なのだそうですが、日本映画の場合は、前出のような配給会社が出演俳優も囲い込んで制作し、系列の映画館で公開するのが主流なので、自由な「映画ビジネス」が成り立ちにくいと聞いています。そういう中、前述のように豪華な出演陣による映画の“自主制作”に結びつけられたのには、よっぽど脚本の内容がいいものだと思い、私は大いに期待しています。
高橋玄監督は、戦後70年を迎えた2015年にこの映画を制作・公開することで、多くの人に「高岡正明」という隠れた偉人の生涯と、その“信念”の物語を感じてほしい…とおっしゃられています。
絶対にお薦めの映画です。11月に全国で公開された時には、皆さん、是非映画館に足をお運びください。“陽光”の名がピッタリの緋色が美しい「陽光桜」が咲き誇る光景は見事ですし、私の故郷・愛媛ののどかな風景も是非観ていただきたいと思っています。よろしくお願いいたしますm(__)m
映画『陽光桜』公式HP
日本さくら交流協会HP
遠赤青汁株式会社は健康食品青汁で、まさに第一(生産)+第二(加工)+第三(流通・販売)の第六次産業を実践されている農業生産法人です。商品名でもある遠赤青汁は本当の有機栽培を実践するため完全に自社農園で栽培したケール(菜っ葉)やニンニクだけを使い、それを自社工場で飲みやすい粉末や錠剤に加工し、ネット販売を含め自社で開拓した販路で販売しています。製品に絶対の自信をお持ちで、店頭販売では超有名百貨店にしか置かないのだそうです。
遠赤青汁HP
遠赤青汁株式会社HP…社長あいさつの写真は10年前の写真でしょう。あまりに若すぎます(笑)
遠赤青汁株式会社の製品は医療現場で薬として使われているほどの高品質な物で、日本国内はもとより海外からも政府関係者や農業関係者がその栽培方法(土の作り方から)や高い生産技術を学びに訪れるほどの会社です。完全に自社農園で有機栽培したケールだけを材料としているため、生産量が限られ、会社の規模はさほど大きくなく、販路もネット販売が中心なので知名度も高くないのですが、知る人ぞ知る…って感じでコアな固定客を完全に掴んでいて、利益率は相当に高い感じです。(海外では青汁の錠剤が1瓶5万円台でも、飛ぶように売れているのだとか(@_@))
資本金45百万円、従業員29名。規模としては地方の中小企業ですが、メチャメチャ元気な会社です。こんな会社が、四国愛媛の松山市近郊の“こんなところ”にあったとは(@_@) “こんなところ”とは、松山市から東へ、新居浜、高松に向かう国道11号線。それも道後(松山)平野が終わり、これから高縄半島を横断する桜三里と呼ばれる長い坂道にかかろうとするまさにそのあたりに遠赤青汁株式会社の本社はあります。周囲を山に囲まれたただの民家のような感じの建物で、看板も小さく出ているだけなので、うっかりすると見過ごしそうです。私は松山でレンタカーを借りて旧越智郡朝倉村の本家へ行く時はいつもこの道を走っているのですが、これまでまったくこの会社の存在に気づきませんでした(^^;
おまけにこの会社、IT活用に極めて積極的で、経済産業省の認定する「中小企業IT経営力大賞」に大賞が設立されて以来6年連続で選ばれているような会社で、「農家と市場を結ぶ情報の分析で、新分野の顧客獲得と事業の拡大を実践」と経済産業省のHPにも紹介されているほどです。これは農業分野では初のことです(@_@)
遠赤青汁スタッフブログより
実はこの遠赤青汁株式会社の創設者である高岡照海社長、実はあのテレビでも全国的に「は・かっ・た~の塩!」ってコマーシャルをやっている『伯方の塩』の初代社長の御子息です(高岡照海社長は現在も「伯方の塩」の社外取締役でもあります)。
で、その『伯方の塩』の初代社長の先代・高岡正明氏が30数年の長い歳月をかけて取り組まれたのが「陽光桜」というブランド名称で知られる桜の新品種の開発と、その植樹活動。先代正明氏が日本各地のみならず世界中に無償で寄贈した陽光桜の苗木は5万本を超えるとのことです。
その遺志は先代正明氏が亡くなられた後も長男である現・照海社長に受け継がれ、現在も年間約3千本の陽光桜の苗木を「平和のシンボル」として世界各国に無償で贈り続けているのだそうです。その活動は新聞やテレビで何度か取り上げられていて、2013年の4月にはNHK松山放送局でドキュメンタリー番組(再現映像部分はドラマ化)まで制作され、放映されました。
『心を照らす桜~陽光桜の物語~』NHK松山放送局HPより
遠赤青汁スタッフブログより
(この素晴らしい陽光桜の活動をほとんど自社の宣伝に直接結び付けていないところが、この社長(親子二代)の“人物”としての凄いところです。)
このようにビジネスの傍ら世界中を植樹に飛び歩かれていて超多忙な高岡照海社長です。新聞やテレビで陽光桜が取り上げられたことでさらに有名になり、取材も含め会いたいという方も大勢いらっしゃるので、なかなかお会いすることがかなわないという噂でした。私のほうから「IT活用により愛媛県における農業の競争力を強化するプロジェクトを近日立ち上げたいと思っているのですが、なにとぞお力をお貸しいただきたい。ついては、直接お会いしてお願いをしたいので、明日、会っていただけませんか」と不躾にもなんと前日に突然のアポイントメントのお申し入れをしたところ、「いいですよ。14時にお越しください」という快諾のお返事をすぐにいただき、意外なほどアッサリしたアポ取りの成功に、その時はこちらのほうが驚いてしまいました(@_@)
とは言え、あれほどの人物が大変お忙しい中、わざわざ私のためにお時間をとっていただいたと言うので、正直、ちょっと緊張して会社を訪れました(^^;
社長室に通されると、ほどなく高岡社長が外(おそらく本社農場?)から戻って来られました。作業着に長靴姿。お会いした高岡社長はお身体全体から太陽と土の匂いがする、まさに“農家のオッチャン”って感じの方でした。今年74歳(確か)ということでしたが、さすがに同社自慢の健康食品『遠赤青汁』を毎日お飲みの効果か、まったくそんなお歳には見えません。少なくとも10歳は若く見えます。もしかしたら59歳の私より肉体的には元気かも。農家の方らしく、筋肉質のガッチリした体形をなさっています。そしてとにかくエネルギッシュ!
おそらく愛媛県農業法人協会の牧会長から私に関しての話がいっていたのではないか…と思われるのですが、どういうわけか会話は冒頭から妙に盛り上がり、地元の農業の現状の話から、ITの話、政治・経済の話、企業経営の話、マーケット戦略の話、果ては世界観の話…と話題が次から次へと移り、大いに盛り上がってしまいました。(冒頭の話の切り出しをどうしようか…と、その日の松山に向かう飛行機の中では私はそのことばかりに頭をフル回転させていました。その“ツカミ”が少しは奏功したのかもしれません。その内容は私の営業ノウハウなので内緒にします。)
農業従事者らしくよく陽に焼けた少しいかつい顔をなさっていますが、にこやかに、穏やかに、少し東予弁(愛媛県東部の方言)の混じった中予弁(愛媛県中部松山市近郊の方言)で話されます。少しお話を伺っただけで、この“農家のオッチャン”、ただ者ではないぞ!…って感じがしましたね。まさに“企業経営者”って感じです。
話の内容と面白さに関しては、とても地方の中小企業の経営者のレベルではありません。東京の大企業の経営者でもここまで独自の確固たる経営哲学をお持ちで、しかもそれを分かりやすく端的なご自分自身の言葉で述べられる経営者はそうそういらっしゃいません(ドラッカーがどうのこうの…と、自分の知識の披露をされる社長さんは掃いて捨てるほど大勢いらっしゃいますが)。しかも、実績に裏打ちされているので、説得力があります。さらに小さな会社だけに、その経験も多岐に渡り、何サイクルも経験を繰り返しているので、経営哲学も洗練され、まさに極められつつあるって感じがします。
このところの私は著名な経営コンサルタントの方の話を聴いてもちっとも面白いと思ったことはないし(企業経営の真の苦労の経験がない人が理論ばかりを述べても、ちっとも心に響きません)、チャラチャラしたぽっと出の若いベンチャー企業の経営者の成功体験話も「あぁ、そうですか」レベルのものばかりで、参考になったというものにここしばらく出会ったことがないのですが、この高岡照海社長の話はまったく違いました。私も企業経営者の端くれとして大いに共感できましたし、メチャメチャ参考になりました。これはお金を払ってでももっと聴きたいと思えました。
逆に言うと、企業経営の経験がない方には、おそらく高岡社長の話は半分くらいしか分からないのではないか…とさえ思われました。ちょっと聴くと雲を掴むような話をされますが、そこにこそ物事の真髄を突いた本質的なことが隠されているんですね。同じ景色を眺めていても見ている視点が違うと言うか…。とにかく視点が高い。
社長室の壁面には陽光桜を植樹に行った時に撮影したと思われる各国の要人と並んで撮った写真が何枚も、額にも入れずにさりげなく貼られています。北米、欧州、中国、東南アジア、南米、アフリカ…民族衣装や風景の雰囲気で推察するしかありませんが、世界各国といった感じです。その写真について尋ねても「あぁ、これは◯◯(国名)」と言うくらいで特に何も説明していただけませんでした。そこが逆に凄い! ここには最近訪問した国の写真だけを貼っているだけで、他にもいっぱいあるんだとか。いったい何ヵ国、行かれているのだろう? そして、この日本の田舎の“農家のオッチャン”は、各国の要人達と何を話してきたんだろう?…って思ってしまいます。高岡社長の視点の高さと見識の深さの源泉を見つけた気がします。ホント“ただ者”ではありません。
で、この「陽光桜」を30年という歳月をかけて生み出した高岡照海社長の御父上、高岡正明氏の半生を描いた映画『陽光桜』が先月7月に完成し、今年の11月に全国で公開されることになりました。3月にクランクインし、地元愛媛県の松山市や東温市、今治市等でロケを行っていましたが、ついに完成して、松山市で試写会があったようです。
この映画『陽光桜』で主役の高岡正明氏の役を務めるのは、渋い名脇役として定評のあるベテラン俳優の笹野高史さん。共演は的場浩司さん(長男である高岡照海社長の役です)、宮本真希さん、野村宏伸さん、長谷直美さん、川上麻衣子さん、津川雅彦さん、風祭ゆきさん…という演技達者な俳優さんがズラリと脇を固めています。
監督は「CHARON」、「GOTH」、「ポチの告白」、「ゼウスの法廷」等を手掛けた高橋玄監督。ちなみに、高橋玄監督の祖父である藪下泰次氏は、あのアニメ界の巨匠・宮崎駿氏の師匠にあたります。
映画「陽光桜」のストーリーは以下の通りです。
大東亜戦争中、愛媛県川内町(現・東温市)で教員を務めていた高岡正明氏は、村の若者が出征する際に、校庭の桜の下で「日本は強い国だ。絶対負けない国だ。また、この桜の木の下で会おう」と言い聞かせて見送りました。しかし、その若者たちの戦死の報告が次々と届きます。高岡氏は、「私は何ということを生徒たちに話してきたのか…」と自責の念にさいなまれる日々が続きます。
敗戦後、高岡氏は亜熱帯のジャワや極寒のシベリアで散っていった生徒達への鎮魂と、世界の恒久平和への願いを託して、氷点下30℃の極寒地から気温30℃を越える高温地に至るまでのどんな過酷な環境でも耐えうる強い「桜」を作ろう…と、品種改良を決意します。
当時、桜は人工授粉で新種の桜をつくることは不可能だと言われていました。しかし、高岡氏は約30年の年月と私財のほとんどを費やし、独学独力で200種類の桜の交配を繰り返します。そうした“信念”というか“執念”を込めた壮絶な試行錯誤を経て、ようやく「陽光」という新種の桜の開発に成功します。そしてそして、なんと、高岡氏はその「陽光桜」を……。
あとは、秋に公開される映画を是非ご覧ください。これは実話、歴史上の事実を描いた実話です(^^)d
この映画はいわゆる東宝・松竹・東映など大手映画配給会社が製作したのではなく、高橋玄監督が主宰する「グランカフェピクチャーズ」が多くの法人・個人から一口10万円の協賛金を募り制作した、いわゆる「自主制作映画」です。映画の本場「ハリウッド」では脚本がすべてで、その脚本の内容いかんで賛同してくれる出資者を募り、映画を製作して配給会社に売り込むのが主流なのだそうですが、日本映画の場合は、前出のような配給会社が出演俳優も囲い込んで制作し、系列の映画館で公開するのが主流なので、自由な「映画ビジネス」が成り立ちにくいと聞いています。そういう中、前述のように豪華な出演陣による映画の“自主制作”に結びつけられたのには、よっぽど脚本の内容がいいものだと思い、私は大いに期待しています。
高橋玄監督は、戦後70年を迎えた2015年にこの映画を制作・公開することで、多くの人に「高岡正明」という隠れた偉人の生涯と、その“信念”の物語を感じてほしい…とおっしゃられています。
絶対にお薦めの映画です。11月に全国で公開された時には、皆さん、是非映画館に足をお運びください。“陽光”の名がピッタリの緋色が美しい「陽光桜」が咲き誇る光景は見事ですし、私の故郷・愛媛ののどかな風景も是非観ていただきたいと思っています。よろしくお願いいたしますm(__)m
映画『陽光桜』公式HP
日本さくら交流協会HP
執筆者
株式会社ハレックス
前代表取締役社長
越智正昭
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