2015/09/04
NASA分析「海面7センチ余り上昇」
8月29日(土)に以下のような報道が流れていました。
NASA分析「海面7センチ余り上昇」
世界の海水面は、この22年間で平均して7センチ余り上昇したことが、NASA(アメリカ航空宇宙局)などによる分析で分かり、専門家は、氷河がとけ出したことなどが要因だとして、温暖化の影響を指摘しています。
これは、NASAなどの専門家でつくる研究チームが、26日、1992年から去年までの人工衛星による観測データを分析した結果として発表したものです。それによりますと、世界の海水面は、この22年間で、平均して7センチ余り上昇し、場所によっては22センチ余り上昇したことが分かったということです。
NASAが公開した映像では、日本列島やフィリピンの東の太平洋で、海水面の上昇を示す、赤で表示された海域が広がっているのが確認できます。また、世界の海水面が1年間に上昇するペースは、1900年ごろは平均して1ミリほどだったのが、最近では3ミリほどと、加速しているということです。
これについて専門家は、水温が上昇して海水が膨張したことや、グリーンランドや南極大陸、それに山岳部の氷河がとけ出したことが要因だとして、温暖化の影響を指摘しています。そのうえで、早ければ100年後には、今より少なくとも90センチ以上海水面が上昇する可能性があると警告しています。
(NHKニュース&スポーツ 08/29 05:05)
青森県青森市の近郊にある三内丸山遺跡、この遺跡は今から約5,000年前の縄文時代の大きな集落の遺跡なのですが、冬は一面の雪に覆われる津軽の地に、まだ石油も石炭も使われていなかった約5,000年前の縄文時代に、都市文明が開けていた…なんて驚きだと思いませんか。
調べてみると、どうも当時は今よりも年平均気温が5℃ほども高かったようなのです。その気温の上昇に伴い海水が膨張して、海水面が今よりも5メートルほども高かったようなのです。
海水面が今より4~5メートルも高いということは、現在は広大な関東平野も低地の部分はすべて海面下にあったというわけです。海を埋め立てて造成した人工の陸地なんて、なおのことです。
これに関しては、私もこの『おちゃめ日記』にも既に「世界の年間平均気温観測史上最高の可能性」と題して書かせていただいていますので、改めてそちらをお読みください。
(世界の年間平均気温観測史上最高の可能性)
ここにも書きましたように、今から約2万年前に最終氷河期が終わって旧石器時代が終わりを告げてから6,000年前頃までは、地球の気温は徐々に温暖化していった時期で、この間に日本列島は100メートル以上もの海面上昇を経験したと言われています。そして、今から約6,000年前には海面が現在より4~5メートルも高く、これは“縄文海進”と呼ばれています。なので、この22年間で平均して7センチ余り海水面が上昇、早ければ100年後には今より少なくとも90センチ以上海水面が上昇する可能性があると言われても、私は少しも驚きません。5,000年や1万年という時間軸の単位で見たら、地球は温暖化と寒冷化と言う極めて大きな気候変動を繰り返し、何メートルという海水面の上昇あるいは下降があったわけですから。
こうした歴史的事実を念頭に置きながら、この避けがたい気候変動に人類はどう対処していくべきかを考えることが一番重要なことではないか…と私は思っています。
地球温暖化をはじめとした気候変動の対策を考えるにあたっては、年平均気温が100年間で○℃上昇した…というようなアバウトな話ではなく、もう少しその実態を詳しく分析してみる必要があります。下の図1は福岡市のここ120年間の年平均気温の変化です。グラフには単純な年平均気温に加えて、日毎の最高気温の年平均と、同じく日毎の最低気温の年平均のグラフも描いています(先日、宮崎で講演するにあたり、九州の気候の特性を説明するために用意したグラフです)。
このグラフから、福岡市ではこの120年間で2℃以上、年平均気温が上昇しており、確かに温暖化が進行していることが読み取れるのですが、注目すべきは日毎の最高気温の年平均と、日毎の最低気温の年平均のカーブの違いです。日毎の最低気温の年平均のほうが上昇の度合いが大きい(顕著である)ことが判ります。
別の見方をしてみます。図2は福岡市における真夏日(1日の最高気温が30℃以上の日)の日数の年毎の推移です。これを見ると、福岡市では真夏日の日数は年ごとの上下の変動はありますが、傾向としてはこの120年間、さほど大きくは変わっていないと言うことができようかと思います。
いっぽうで、熱帯夜(日の最低気温が25℃以上の日)のほうは、この120年間で20倍以上と極端に増加していることに気づきます(図3参照)。今から100年前、福岡市では熱帯夜はほとんどなかったのに、今では真夏日に近いくらいの日数、熱帯夜を観測しています。真夏日の日数はさほど変わらないのに、熱帯夜の日数は激増している…、これは1日の中での気温の差が、昔と比べ小さくなっている…ということを意味します。
この傾向は、1年という時間においても当てはまります。図4は冬日(日の最低気温が0℃未満になる日)の日数の年毎の推移を表したものです。この図をご覧になると一目瞭然ですが、冬日の日数は、ここ100年間で極端に減ってきていることに気づきます。100年ほど前は年間50日はあった冬日が、最近20年間ではほとんど10日以内。なかには0の年もあるくらいです。まさに激減という言葉が当てはまろうかと思います。
真夏日の日数の推移(図2)と、冬日の日数の推移(図4)の2つのグラフから読み取れることは、1年間を通しての気温の変化も、その変化の幅が徐々に小さくなってきているということです。
これが温暖化の実態で、その原因はいろいろと考えられるのですが、興味を引くのが日本近海の海面水温の上昇です。図5に九州・山口県周辺海域における100年間の海面水温の上昇率を示します。これを見ると、福岡市近海の東シナ海北部や玄界灘周辺の海域の海水温は、ここ100年間で1.21℃も上昇していることが分かります。これは世界全体の海面水温の100年あたりの上昇率である+0.51℃よりも遥かに大きな値です。
小学校の理科で習ったことですが、「液体は熱しにくく冷めにくい」、すなわち液体は内包する熱エネルギーが大きいものです。海面水温の上昇が1.21℃というと、たいしたことないと思いがちですが、海水の量というのは膨大なものがあり、たかだか1.21℃の上昇と言っても、その上昇により海水内に内包される熱エネルギーの量は膨大なものがあります。この海水に内包される膨大な量の熱エネルギーの放出により、1日の、そして1年の気温の変化の幅を小さく狭めているということも十分に考えられます。陸と海と空…、これら自然界は各々が別々に存在するわけではなく、互いに繋がって、相互に作用しあっているというわけです。
ちなみに、なぜ、海面の水温がこれほどまでに上がっているのか、そして、日本近海の海面水温の上昇率が世界の他の地域と比べて大きいのかについては、未だ明確な答えは見つかっておらず、多くの海洋研究者の間で研究途中のようです。
このように過去のデータを分析してみることで見えてくることって、いっぱいあります (^^)d
NASA分析「海面7センチ余り上昇」
世界の海水面は、この22年間で平均して7センチ余り上昇したことが、NASA(アメリカ航空宇宙局)などによる分析で分かり、専門家は、氷河がとけ出したことなどが要因だとして、温暖化の影響を指摘しています。
これは、NASAなどの専門家でつくる研究チームが、26日、1992年から去年までの人工衛星による観測データを分析した結果として発表したものです。それによりますと、世界の海水面は、この22年間で、平均して7センチ余り上昇し、場所によっては22センチ余り上昇したことが分かったということです。
NASAが公開した映像では、日本列島やフィリピンの東の太平洋で、海水面の上昇を示す、赤で表示された海域が広がっているのが確認できます。また、世界の海水面が1年間に上昇するペースは、1900年ごろは平均して1ミリほどだったのが、最近では3ミリほどと、加速しているということです。
これについて専門家は、水温が上昇して海水が膨張したことや、グリーンランドや南極大陸、それに山岳部の氷河がとけ出したことが要因だとして、温暖化の影響を指摘しています。そのうえで、早ければ100年後には、今より少なくとも90センチ以上海水面が上昇する可能性があると警告しています。
(NHKニュース&スポーツ 08/29 05:05)
青森県青森市の近郊にある三内丸山遺跡、この遺跡は今から約5,000年前の縄文時代の大きな集落の遺跡なのですが、冬は一面の雪に覆われる津軽の地に、まだ石油も石炭も使われていなかった約5,000年前の縄文時代に、都市文明が開けていた…なんて驚きだと思いませんか。
調べてみると、どうも当時は今よりも年平均気温が5℃ほども高かったようなのです。その気温の上昇に伴い海水が膨張して、海水面が今よりも5メートルほども高かったようなのです。
海水面が今より4~5メートルも高いということは、現在は広大な関東平野も低地の部分はすべて海面下にあったというわけです。海を埋め立てて造成した人工の陸地なんて、なおのことです。
これに関しては、私もこの『おちゃめ日記』にも既に「世界の年間平均気温観測史上最高の可能性」と題して書かせていただいていますので、改めてそちらをお読みください。
(世界の年間平均気温観測史上最高の可能性)
ここにも書きましたように、今から約2万年前に最終氷河期が終わって旧石器時代が終わりを告げてから6,000年前頃までは、地球の気温は徐々に温暖化していった時期で、この間に日本列島は100メートル以上もの海面上昇を経験したと言われています。そして、今から約6,000年前には海面が現在より4~5メートルも高く、これは“縄文海進”と呼ばれています。なので、この22年間で平均して7センチ余り海水面が上昇、早ければ100年後には今より少なくとも90センチ以上海水面が上昇する可能性があると言われても、私は少しも驚きません。5,000年や1万年という時間軸の単位で見たら、地球は温暖化と寒冷化と言う極めて大きな気候変動を繰り返し、何メートルという海水面の上昇あるいは下降があったわけですから。
こうした歴史的事実を念頭に置きながら、この避けがたい気候変動に人類はどう対処していくべきかを考えることが一番重要なことではないか…と私は思っています。
地球温暖化をはじめとした気候変動の対策を考えるにあたっては、年平均気温が100年間で○℃上昇した…というようなアバウトな話ではなく、もう少しその実態を詳しく分析してみる必要があります。下の図1は福岡市のここ120年間の年平均気温の変化です。グラフには単純な年平均気温に加えて、日毎の最高気温の年平均と、同じく日毎の最低気温の年平均のグラフも描いています(先日、宮崎で講演するにあたり、九州の気候の特性を説明するために用意したグラフです)。
このグラフから、福岡市ではこの120年間で2℃以上、年平均気温が上昇しており、確かに温暖化が進行していることが読み取れるのですが、注目すべきは日毎の最高気温の年平均と、日毎の最低気温の年平均のカーブの違いです。日毎の最低気温の年平均のほうが上昇の度合いが大きい(顕著である)ことが判ります。
別の見方をしてみます。図2は福岡市における真夏日(1日の最高気温が30℃以上の日)の日数の年毎の推移です。これを見ると、福岡市では真夏日の日数は年ごとの上下の変動はありますが、傾向としてはこの120年間、さほど大きくは変わっていないと言うことができようかと思います。
いっぽうで、熱帯夜(日の最低気温が25℃以上の日)のほうは、この120年間で20倍以上と極端に増加していることに気づきます(図3参照)。今から100年前、福岡市では熱帯夜はほとんどなかったのに、今では真夏日に近いくらいの日数、熱帯夜を観測しています。真夏日の日数はさほど変わらないのに、熱帯夜の日数は激増している…、これは1日の中での気温の差が、昔と比べ小さくなっている…ということを意味します。
この傾向は、1年という時間においても当てはまります。図4は冬日(日の最低気温が0℃未満になる日)の日数の年毎の推移を表したものです。この図をご覧になると一目瞭然ですが、冬日の日数は、ここ100年間で極端に減ってきていることに気づきます。100年ほど前は年間50日はあった冬日が、最近20年間ではほとんど10日以内。なかには0の年もあるくらいです。まさに激減という言葉が当てはまろうかと思います。
真夏日の日数の推移(図2)と、冬日の日数の推移(図4)の2つのグラフから読み取れることは、1年間を通しての気温の変化も、その変化の幅が徐々に小さくなってきているということです。
これが温暖化の実態で、その原因はいろいろと考えられるのですが、興味を引くのが日本近海の海面水温の上昇です。図5に九州・山口県周辺海域における100年間の海面水温の上昇率を示します。これを見ると、福岡市近海の東シナ海北部や玄界灘周辺の海域の海水温は、ここ100年間で1.21℃も上昇していることが分かります。これは世界全体の海面水温の100年あたりの上昇率である+0.51℃よりも遥かに大きな値です。
小学校の理科で習ったことですが、「液体は熱しにくく冷めにくい」、すなわち液体は内包する熱エネルギーが大きいものです。海面水温の上昇が1.21℃というと、たいしたことないと思いがちですが、海水の量というのは膨大なものがあり、たかだか1.21℃の上昇と言っても、その上昇により海水内に内包される熱エネルギーの量は膨大なものがあります。この海水に内包される膨大な量の熱エネルギーの放出により、1日の、そして1年の気温の変化の幅を小さく狭めているということも十分に考えられます。陸と海と空…、これら自然界は各々が別々に存在するわけではなく、互いに繋がって、相互に作用しあっているというわけです。
ちなみに、なぜ、海面の水温がこれほどまでに上がっているのか、そして、日本近海の海面水温の上昇率が世界の他の地域と比べて大きいのかについては、未だ明確な答えは見つかっておらず、多くの海洋研究者の間で研究途中のようです。
このように過去のデータを分析してみることで見えてくることって、いっぱいあります (^^)d
執筆者
株式会社ハレックス
前代表取締役社長
越智正昭
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