2015/09/30

最大瞬間風速81.1メートル/秒!!(@_@)

与那国島近辺の風


一昨日(28日)は接近中だった台風21号が沖縄県の八重山諸島で猛威を奮いました。気象庁の発表によりますと、台風21号は猛烈な勢力となり、28日の午後5時には、与那国島の西南西70キロの海上を1時間に25キロの速さで北西へ進みました。

その時の中心気圧は925ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は55メートル/秒、最大瞬間風速は80メートル/秒で、中心から半径150キロ以内では風速25メートル/秒以上の暴風が吹き荒れました。上の図はちょうどそのあたりの時間帯における数値予報データ(LFM)の地上風の様子を弊社の気象ビッグデータリアルタイム可視化システム『Weatherview2』で可視化したものです。画面右上の凡例からもお分かりいただけるように、図では紫色をした風速50メートル/秒~60メートル/秒の猛烈な風が与那国島を巻き込むように流れている様子が読み取れます。

与那国島地方に最も近づいていた午後3時半すぎには、与那国島で昭和32年に統計を取り始めてから最も強い81.1メートル/秒の最大瞬間風速を観測しました。沖縄県で80メートル/秒を超える最大瞬間風速が観測されたのは、49年前の昭和41年(1966年)9月5日に宮古島で85.3メートル/秒の最大瞬間風速を記録して以来2回目で、およそ半世紀ぶりのことです。
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最大瞬間風速が81.1メートル/秒ですか…。気象庁の風力階級によれば、風速17.2メートル/秒~20.7メートル/秒(風力8)で人は風に向かって歩けなくなり、24.5メートル/秒~28.4メートル/秒(風力10)では根こそぎ倒れる木が出はじめるとされています。なので、それを遥かに上回る秒速80メートルというとどれほどのものか、想像もつきません。

ちなみに、我が国で観測された国内最大の最大瞬間風速は、先ほどの昭和41年(1966年)9月5日に沖縄県の宮古島で観測された85.3メートル/秒です。第2宮古島台風(昭和41年台風第18号)によってもたらされたこの記録は、日本の観測史上最も強い最大瞬間風速となっています。その次が昭和36年(1961年)9月16日に高知県の室戸岬で観測された84.5メートル/秒(第2室戸台風上陸時)で、今回、与那国島で観測された81.1メートル/秒は堂々の歴代最大瞬間風速の第3位にランキングされました(標高3,700メートルを越える富士山山頂で記録された91.0メートル(1966年9月25日)を除く)。

気象庁HP歴代全国ランキング

ランキング1位を記録した第2宮古島台風も、1966年9月5日に宮古島付近を通過する頃に最盛期を迎え、中心気圧918ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は65メートル/秒に達しました。今回の台風21号は、規模、風の強さ、移動コース、移動速度とも、この第2宮古島台風(昭和41年台風第18号)と非常によく似ている感じがします。

第2宮古島台風では、台風の進行速度が毎時10km前後と遅かったため、宮古島では4日早朝から6日早朝までの約30時間もの長時間にわたり暴風に見舞われました。この第2宮古島台風はこれだけの強風を記録しながらも、幸いなことに死者を1人も出しませんでした(負傷者は41人)。今回の台風21号でも、さすがに電柱が倒れたり公民館の窓ガラスが割れたり、住宅のトタン屋根が飛ばされたりするなどの被害は出ているようですが、幸いなことに、現時点では死者や怪我人といった人命に関わる被害の報告はないようです(ただ、与那国島では、台風の影響で通信ケーブルが損傷して電話が通じにくくなっているため、被害の詳しい状況はつかめていないということなので、まだ心配ですが…)。

それにしてもこれだけの凄まじい暴風が吹き荒れながら、ほとんど人的被害が出ていないのは、よほど八重山諸島に住む人々の暴風に対する事前の備えが万全だということなのでしょう。ここには防災に関して学ぶべきことがいっぱいあるように思えます。

強風を伴う自然災害といえば、台風のほかに竜巻が連想されます。竜巻は台風に比べて極めて小規模で気象観測施設の上を通過することがまれなため、実際の風速が観測される例はほとんどありませんが、この宮古島で記録された秒速85.3メートルという風速は、竜巻の強さを計るスケールに当てはめても相当に強い部類に属します。

日本の気象庁では風の強さ(速さ)を0から12の13段階の階級に分けて表現しています。

気象庁HP風に関する用語

日本の気象庁が採用している気象庁風力階級は世界気象機関(WMO)でも風力の標準的な表現法として採択されている『ビューフォート風力階級』を翻訳したもので、内容もほぼ同一のものとなっています。

ビューフォート風力階級はイギリス海軍のフランシス・ボーフォート提督が1806年に提唱した風の強さを表す階級表です。ボーフォート提督は風力を0から12までの13段階で表し、それに対応した海上の様相についての表を作成しました。その後、より客観的な風速と風力階級の対応が付けられました。

このビューフォート風力階級表は1964年に世界気象機関(WMO)の風力の標準的な表現法として採択され、現在ではビューフォート風力階級といえば通常はこの世界気象機関で採択された風力階級表のことを指す国際的な指標となっています。前述のように、日本の気象庁の採用している気象庁風力階級もこのビューフォート風力階級を翻訳したもので、内容もほぼ同一のものとなっています。

ただ、日本では風力は「風力5」のようにレベル化された数字で表し、「疾風」のような名称は公式には使用しません。また、風速には相当風速(開けた平らな土地で、地上10メートルの高さでの10分間の平均風速)を用います。なので、瞬間風速は相当風速の1.5~2倍、またはそれ以上になることもあります。

参考にしてください。

ビューフォート風力階級表



【追記】
八重山諸島近海を通過した台風21号は28日夜から29日未明にかけて台湾を通過し、北部の宜蘭県では68.4メートル/秒の最大瞬間風速を観測しました。報道によりますと、猛烈な風で街路樹が倒れたり、車が横転したりする被害が各地で相次いだほか、およそ190万世帯が一時、停電したのだそうです。また、北部の新北市では風で転倒した男性が死亡するなど、台湾当局によりますと、これまでに2人の死亡が確認され324人が怪我をしたということです。

台風は通過したものの、台湾北部の山沿いでは27日の降り始めからの雨量が700ミリを超えたところもあるということで、気象当局は引き続き土砂災害に警戒を呼びかけているようです。