2015/11/27
印象派の巨匠モネ
11月23日(祝)、妻と娘と一緒に台東区上野公園の東京都美術館で開催中の『モネ展』を鑑賞に行ってきました。
私が説明するまでもなく、クロード・モネ(1840年~1926年)とは、印象派の巨匠として世界中で絶大な人気を誇るフランス人の画家です。パリのマルモッタン・モネ美術館には、モネが86歳で亡くなるまで手元に残した作品が所蔵されているのですが、そのマルモッタン・モネ美術館所蔵のモネの作品約90点が、9月19日(土)から12月13日(日)まで東京都美術館で展示されているのです。中学・高校時代、美術部で油絵を描いていたという妻がこのモネ展が開催されていることを新聞で見つけ、誘われたので(連れられて)行ってみたわけです。
妻は「あのモネの本物の絵を実際に見ることができるのよっ!」…と行く前から大興奮していたのですが、私はというと絵画のことはまるで素人で、さして絵画に興味を持っているわけでもないので、正直「ふ~~ん」って感じでした。ですが、そんな妻の興奮ぶりを見ていると、こりゃあ一度観てみる価値はありそうだ…と思ったわけです。還暦を目前にして、このところ努めて取り組んでいる『食わず嫌い克服シリーズ』の一環です。
絵画にほとんど興味のない私ですが、そんな私でも過去、主としてフランスを中心に“印象派”という画風で知られた画家の一団がいて、その中でも巨匠と呼ばれたモネという画家がいたということくらいは知っていました(まぁ~そのくらい有名な画家だということです)。
妻によると、このモネ展、あまりの人気で入場するのに長い行列ができている…ということでしたので、私達は朝早く自宅を出て、開場する午前9時30分の20分ほど前には東京都美術館に着いていたのですが、その時点で入場券売り場にも入場ゲートにも、既にかなり長い行列ができていました。列の最後には「最後尾。入場まで10分」という表示も。私達も10分ほど並んで入場券を購入し、さらに入場ゲートで長い行列に20分ほど並んで、やっと会場に入ることができました。後から後から人がやって来て、私達が入場できた頃には列がさらに長くなっていました。これには本当に驚きました。この『モネ展』は9月19日(土)に始まったので、既に公開から2ヶ月が経っているのですが、それでもこの人出です。絵画好きにはたまらない展示会ってことなんでしょうね、きっと。さすがは印象派の巨匠モネだな…って感じです。
今回の『モネ展』では、モネが10代で描いたカリカチュア(風刺画)から、生前に発表されることのなかった家族の肖像画、移りゆく光をも捉えた「睡蓮」の連作、白内障を患いながらも精力的に描き続けた「日本の橋」の連作、最晩年の色彩溢れる作品など約90点が飾られていました。特に、今回は滅多にマルモッタン美術館を離れることがないと言われている「ヨーロッパ橋、サン=ラザール駅」が特別出展されていました(10月18日までは「印象派」という呼称の由来となったことで知られる傑作「印象、日の出」が特別展示されていました)。
モネは生涯数多くの作品を描いたのですが、商売上手なところがあって、次々にパトロンに売却して金を稼いでいたようで、生活は当時の芸術家としては比較的安定していたようです。40歳を過ぎた1883年にはパリの西約80kmの郊外にあるジヴェルニーというところに移転し、そこに広い庭のある屋敷を構え、1926年に没するまでこの地で制作を続けました。モネはジヴェルニーの屋敷内に睡蓮(すいれん)の池を中心とした「水の庭」、様々な色彩の花を植えた「花の庭」などを造り、そこをモチーフに前述の「睡蓮」や「日本の橋」といった連作に取り組んだようです。現在、このモネの造った庭はパリ郊外の観光名所の1つとなっていて、多くの人が訪れているそうですが、生前、モネ自身は「この庭自体が自分の“最高傑作”だ」と言っていたそうです。
そうしたクロード・モネが86歳で亡くなるまで手元に残したとされる作品が所蔵されているパリのマルモッタン・モネ美術館の所蔵品です。素晴らしい作品の数々でした。と言っても、これは妻が述べた感想で、絵画に関してまったくと言っていいくらい造詣のない私にとっては、どこがどう素晴らしくて価値があるのかは、正直なところ、よく解らなかったのですが…(^_^;) このところ一連で取り組んでいる『食わず嫌い克服シリーズ』の中でも、絵画は私にとって最もハードルが高いジャンルなのかもしれません。
私はこの『モネ展』を俳優・田辺誠一さんがナレーションする音声ガイドを聴きながら、また、妻の解説を聴きながらゆっくりと観て回りました。(ちなみに、俳優の田辺誠一さんは、自身が描かれたlineのキャラクターが人気で、最近は“画伯”と呼ばれたりしています。今回の『モネ展』では、オフィシャルサポーターを務めていらっしゃいます。)
田辺誠一さんの音声ガイドと妻の解説によると、モネには「光の画家」という別称があり、時間や季節とともに移りゆく光と色彩の変化を生涯にわたり追求した画家なのだそうで、同じモチーフを異なった時間、異なった光線の下で描いた連作を数多く制作しました。もっとも作品数が多く、モネの代名詞ともなっているのが1890年代終わりから描きはじめた「睡蓮」の連作です。この「睡蓮」は前述のジヴェルニーの自宅の庭にある睡蓮の池をモチーフに、1899年から1926年に亡くなるまでの間に全部で200点以上の作品が制作されているのだそうです。特に1900年頃からの晩年にかけては他の絵はあまり描かなくなり、もっぱら「睡蓮」の制作に傾注したのだそうです。今回の『モネ展』でもその連作の中から幾つかが展示されていましたが、ほぼ同じ構図で描かれた「睡蓮」でも、描写した時間や季節の違いで微妙に色彩や光の具合が異なっていて、まったく違った味わいがありました。
1890年代に描かれた『睡蓮』には岸に生える柳の木や、池に架かる日本風の橋などのモチーフが描かれているのですが、1900年代になると、画面のすべてが水面で覆われるようになり、水面に浮かぶ睡蓮、水中の茎や水草、水面に映る空や樹木の反映が渾然一体となって描かれるようになります。また、晩年はモネが白内障を患い、失明寸前の状態にあったこともあり、画面は限りなく抽象画に近付いているような印象さえ受けます。
昔、油絵をやっていたという妻などは、絵を1枚1枚、右から左から様々な角度で眺めては、「筆のタッチが凄い! それだけでメチャメチャ感動ものよ!」と唸っていました。会場は絵の劣化を防ぐため照明がやや暗めに設定されていたため、私のような素人にはよく分からないのですが、重ね塗りされた絵の表面の絵の具の凹凸が光が当たる角度によって微妙な味わいを醸し出すのだそうで、モネの絵はそこが素晴らしいのだとか。なるほどぉ~。この感覚は油絵を一度も描いたことのない者にはまったく分からない感覚ですが…。また、鑑賞している人の中には、熱心にメモを書いている方もいらっしゃいました。そっと覗いてみると、絵1枚1枚の見たその場の感想を細かく書き留めているようでした。絵画が好きな人って、こういう楽しみ方をされるのですね。勉強になりました。
モネは“鉄ちゃん(撮り鉄)”のハシリのようなところがあり、若い頃のモネは鉄道をしばしば作品のモチーフにしています。その頃はちょうどパリに鉄道が通じた頃だったので、若いモネの興味を大いに引いたのでしょう。今回特別展示された「ヨーロッパ橋、サン=ラザール駅」は、まさにその中でも傑作と呼ぶに相応しい作品でした。黒い蒸気機関車とそれが吐き出す真っ白い蒸気、その黒と白に微妙な色のコントラストを付けて、立体感と躍動感を醸し出しています。まさに「光の画家」というに相応しい作品でした。
現在、我が家には『モネ展』の売店で買って帰った「ヨーロッパ橋、サン=ラザール駅」と「印象、日の出」、「睡蓮」、「オランダのチューリップ畑」の4作品の小さい複製画が飾られています。特にトイレに飾ってある「ヨーロッパ橋、サン=ラザール駅」、“鉄ちゃん”の私としては大のお気に入りです。
この『モネ展』、12月13日(日)まで上野の東京都美術館でやっています。絵画に興味ある方は、是非足をお運びになられてはいかがでしょう。
【追記】
『モネ展』の会場の出口のところには、田辺誠一“画伯”が描き下ろした『モネ展』オフィシャルキャラクター「かっこいいモネ。」の絵が飾られていました。私にとってはこの田辺誠一“画伯”の絵のほうが分かりやすいのですが…。繰り返しになりますが、絵画は私にとって最もハードルが高いジャンルなのかもしれません。
執筆者
株式会社ハレックス
前代表取締役社長
越智正昭
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