2016/09/16

ニーズと問題意識の違い

一般的に、多くの人は“ニーズ”と“問題意識”の違いが、さほど明確になっているとは言い難いのではないかと思います。

ニーズとは「○○が必要だ」とか「××があったらいいな」というような、顕在化された必要性と言い表わすことができます。たまたまある明確なニーズを有しているお客様に出会えて、自社が扱っている商品やサービスがそのお客様のニーズにピッタリ合えば、営業は実にスムーズにいきます。

また、ご自身は自覚されていなくても、潜在的なニーズをお持ちのお客様っていうのもいらっしゃいます。お客様との接触、特にプレゼンテーションの中でこの潜在的なニーズを顕在化することに成功すれば、やはり営業は成功にグッと近づきます。ですから、世の中の営業に関する多くの書物や研修の中で「ニーズを探せ」とか「ニーズを聞き出せ」と説いているのです。

しかし、高度化・複雑化された現在の経営環境において、明確にご自分のニーズはこれだ!と言い切ることができるお客様なんて、ほんの一握りのお客様です。そうした明確なニーズをお持ちのお客様にしか我々は売れないのだとしたら、マーケットは非常に限定されたものになってしまいます。

特に、我々のように目に見えない情報の価値そのものを販売している営業にとっては、今の時代、ある明確なニーズを口にしていただけるお客様なんてほとんどないと考えておいたほうがよく、もし仮にいたとしても、そこには間違いなく競合相手が群がって激戦区の様相を呈していることでしょう。

これでは自社に優位なマーケットや可能性なんて限られたものになってしまいます。それを打ち破るために、ニーズに代わるキーワードとして登場するのが「問題意識」です。

問題意識とは、認識された現象が未来に及ぼす影響を的確に捉えることを意味します。たとえば、「最近太ってきた」という現象を認識したとしましょう。そして、「このままいくとどうなるのか?」と考えた時、「今のズボンが履けなくなるかも」とか「成人病になるかも」といった未来に及ぼす影響にまで考えがおよんだりします。その結果、「このまま太り続けたらヤバいぞ!」という問題意識が芽生えるのです。

問題意識を抱くと、次に「それを解決したい」という欲求が生まれます。すると、今まで「このままでもいい」と楽観的か考え方を持ち、顕在的なニーズのみならず、潜在的なニーズさえもほとんど持ち合わせてはいなかった相手が、「このままじゃあいけない」という気持ち(危機感)を持ちはじめます。

そして次には、「どうしたらこの問題が解決できるだろうか?」とか、「何かいい手段はないものか?」と、問題を解決するための具体的な手段を求めるようになります。そして、さらには、今までならまったく関心を示さなかった情報やサービスに対して聞く耳を持つようになります。

ここまで来ると、“ニーズ”と“問題意識”の違いがなんとなくお分りいただけたでしょうか?

もはや、お客様のところへ出掛けて行って、ニーズを聞き出している場合ではありません。ニーズを聞き出すのではなく、お客様の問題意識を引き出すようにしないといけません。それが「御用聞き営業」から「コンサルティング営業」への脱皮の第一歩です。


【追記】
上記で大切なポイントは、「問題意識」はあくまでも「引き出す」ものであって、「与える」ものではない!ということです。「問題意識を与える」と「問題意識を引き出す」とは決定的に異なります。単にお客様に「問題意識を抱かせることが大切だ」と覚えてしまうと、ほとんどの営業担当者はお客様に問題意識を与えがちになります。ところが、問題意識というものは相手に与えてしまうと、逆効果になってしまいがちです。

そりゃあそうですよね。

先程の例で言うと、もし、太っている人に「もっと痩せないと病気になりますよ」なぁ~んて下手にアドバイスでもしてみたら、「そんなこと貴方から言われなくても分かっているよ!」(-_-メ)と逆に怒らせてしまったりします。

人は、問題意識を与えられるとカチン!と来るものなのです。私の経験でも、言われたことが正しければ正しいほど、当たっていれば当たっているほど、なぜか頭に来るものです。中には「お客様のためを思って……」などと余計なことを言う人も見掛けますが、この台詞は相手によっては火に油を注ぎかねません。

ではどうすればいいのでしょう。

それは相手の心の中に問題意識を気付かせて、それを引き出すことです。言うは易し、行なうは難しのことですが、それに尽きると思いますね。そのポイントは、常にお客様の立場に立って考えること。お客様の心を開かせる安心感を与えるようにすることだと思います。