2016/03/09
インドネシアで不穏な地殻変動
先週の3月2日(水)、次のようなニュースが流れていました。
『インドネシアのスマトラ島沖でマグニチュード7.8の地震』
アメリカの地質調査所(USGS)によりますと、インドネシアで2日午後7時49分、日本時間の午後9時49分にスマトラ島パダンの西南西およそ800kmの沖合いを震源とするマグニチュード7.8の地震がありました。震源の深さは24kmと推定されています。
インドネシアの国家災害対策庁によりますと、これまでのところ、この地震による大きな被害の情報は入っていないということです。インドネシアの国家災害対策庁は、西スマトラ、北スマトラそして、アチェに津波のおそれがあるとして警戒を呼びかけています。 (NHKニュース&スポーツ 03/02 23:59)
マグニチュード7.8と規模の大きな地震であったにも関わらず、震源がスマトラ島パダンの西南西およそ800kmの沖合いの海底と人々が暮らす陸地から離れていたため、地震による被害は今のところ報告されていないようです。また、日本の気象庁によるこれまでの解析によると、今回の地震は、海底の岩盤が横方向にずれる「横ずれ」といわれるタイプの地震と推定されるということです。「横ずれ」の地震は、岩盤が上下にずれ動くタイプの地震よりも大きな津波が起きにくいとされていることから、津波による大きな被害も起きていないようです。インドネシアの国家災害対策庁も、地震発生からおよそ3時間後に、津波に対する警戒を解除しました。
ちなみに、インドネシアのスマトラ島周辺では、4年前の2012年4月に今回の震源地より北側のスマトラ島西方沖のインド洋でマグニチュード8.6の巨大地震が発生したのですが、この時も「横ずれ」タイプの地震だったことから、スマトラ島北部の一部の沿岸で観測された津波は高さ1メートル余りでした。
このほかスマトラ島の周辺海域の海底では過去にも多くの地震が起きています。2000年以降に限ってもマグニチュード7.0以上の巨大地震が計12回も発生しています。
2004年12月には、スマトラ島北部のアチェ特別州の西側、およそ200kmの沖合で、マグニチュード9.1の地震が起き、地震とその後の津波などで、東日本大震災を遥かに上回る20万人を超える人達が犠牲になったことは記憶に新しいところです。
また、2007年9月にもスマトラ島南部のブンクルの沖合およそ130kmの地点でマグニチュード7から8の地震が相次ぎ、インドネシアで最大1メートル20センチの津波を観測したほか、アラビア半島でも70センチの津波を観測しました。このほか2008年2月にはスマトラ島の中心都市、パダンから南南西およそ160kmの沖合を震源とするマグニチュード7.3の地震が起きました。
10年なんて長い地球の歴史から見るとほんの一瞬のことで、このスマトラ島の周辺海域の海底は活発な活動期にあると考えていいようです。
インドネシアを形作る島々のすぐ南側の海底には、その島々に沿うようにユーラシアプレートとオーストラリアプレートという地球の表面を覆う十数枚の厚さ100kmほどの巨大な岩盤(大陸プレート)のうちの2個の接合面があり、加えて、近くには太平洋プレートとフィリピン海プレートも位置して、周辺にはそれらのプレートとユーラシアプレートとオーストラリアプレートとの接合面もあります。このほか、バンダ海プレートをはじめとして巨大な大陸プレートから切り離されたものと思われる小規模なプレートもあり、複雑な構造をしています。
このため、地震活動が活発なだけでなく、多くの活火山も点在して、活発な活動(噴火)を繰り返しています。インドネシアの火山噴火の特徴は、地球規模で急激な気候変動を引き起こすほどの巨大噴火を起こすことで、有史以降に限っても、次のような巨大な火山噴火が記録されています。
・西暦535年……ジャワ島とスマトラ島の中間のスンダ海峡にある火山島、クラカタウ火山が噴火。地球全体が火山灰に覆われ、地球規模で急激な気候変動(寒冷化)が起こり、世界各地に異常気象による大混乱が発生。
・1257年……ロンボク島にあるサマラス火山が噴火。火山灰や硫酸塩が南極やグリーンランドにも降下。このサマラス火山の噴火は、過去3700年間で最大の火山噴火と言われ、この巨大噴火で北極から南極に至る地球全体が火山灰に覆われ地球規模で急激な気候変動(寒冷化)が発生。
・1586年……ジャワ島にあるケルート火山が噴火。泥流により死者約10,000人(推定)。
・1638年……ジャワ島のムラピ火山が噴火。死者約1,000人(推定)。
・1672年……同じくジャワ島のムラピ火山が噴火。火砕流などで死者約3,000人(推定)。
・1711年……サンギへ島のアウ火山が噴火。火砕流により死者約3,000人(推定)。
・1760年……バンダ海に浮かぶモルッカ諸島の火山が噴火。泥流により死者約2,000人(推定)。
・1772年……ジャワ島のムラピ火山が噴火。死者約3,000人(推定)。
・1815年……スンバワ島のタンボラ火山が大噴火。広範囲を火山灰が覆い、飢饉、疫病などで死者9万人以上(推定)。
・1883年……クラカタウ火山が噴火。津波と火砕流により死者36,000人以上(推定)。
・1919年……ジャワ島のケルート火山が噴火。死者約5,100人(推定)。
・1930年……ジャワ島のムラピ火山が噴火。火砕流により死者約1,300人(推定)。
・2010年……スマトラ島のシナブン火山とジャワ島のムラピ火山が相次いで噴火。
この『おちゃめ日記』にも書かせていただきましたが、昨年(2015年)の11月にもバリ島の東に位置するロンボク島のリンジャニ火山が噴火を起こし、噴煙により国際的な観光地であるバリ島の国際空港がしばらく閉鎖されるということがありました。
インドネシアの火山がまたまた噴火(@_@)
遠く離れたインドネシアでの出来事なのか、このニュース、日本ではあまり注目されておりませんが、私は不気味さをもって受け取りました。地面も、海も、大気も世界中繋がっていますので、自然環境に関しては、日本列島の周辺だけの狭い視点ではなく、常に地球規模の“グローバルな視点”で捉える必要があると私は考えています。
グローバルの視点
【追記】
不穏な地殻変動はインドネシアだけではありません。同じく3月2日(水)には次のようはニュースも流れています。日本列島付近も、インドネシア同様、ユーラシアプレートや太平洋プレート、北米プレート、フィリピン海プレートという4つの大きな大陸プレートが複雑に接合しあう地域だけに、今後も地震や火山噴火には十分な注意が必要なようです。
『新潟焼山 山頂半径1kmを立ち入り規制』
新潟県と長野県の境にある新潟焼山について、去年から噴気の量が多くなっていることなどから、麓の自治体は、登山者の安全を確保するため火口として想定される山頂から半径1kmの範囲を警戒区域に指定し、2日から立ち入り禁止とする規制を始めました。
気象庁によりますと、標高2,400メートルの「新潟焼山」は、去年夏頃から山頂の東側斜面からの噴気がやや高く上がる傾向が見られ、去年12月下旬からは噴気の量も多くなっているということです。また、今年1月の上空からの観測では、噴気が山頂の火口からおよそ100メートルの高さに達し、火口付近では周囲より温度が高い場所も確認されていました。
このため、麓にある新潟県糸魚川市と妙高市、それに長野県の小谷村は、2日、それぞれの市長と村長が出席して、新潟焼山の防災対策などについて話し合う協議会を開きました。この中で、現状が報告されたあと、登山者の安全を確保するため災害対策基本法に基づき火口として想定される山頂から半径1kmの範囲を警戒区域に指定することを決め、2日午前10時半から立ち入り禁止とする規制を始めました。各自治体では麓の住民に対しても新潟焼山の今後の火山活動に注意するよう呼びかけています。
標高2,400メートルの活火山「新潟焼山」は、活動の開始時期がおよそ3000年前と国内でも新しい火山の1つとされ、新潟県内で唯一、気象庁が24時間監視しています。登山をするには上級者向けの山とされ、登山客は年間400人程度ですが、新潟県と長野県側からは登山道が設けられています。
この「新潟焼山」について、気象庁は、去年の夏頃から山頂の東側斜面からの噴気がやや高く上がる傾向が見られ、去年12月下旬からは噴気の量も多くなっているとしていました。さらに、火山性地震も複数回観測されたということです。また、1か月ほど前の上空からの観測では、噴気が山頂の火口からおよそ100メートルの高さに達し、火口付近では周囲より温度が高い所も確認されました。一方で、火口周辺に噴出物は確認されず、地殻変動などの観測データにも特段の変化はなかったということです。
(NHKニュース&スポーツ 03/02 13:18)
『インドネシアのスマトラ島沖でマグニチュード7.8の地震』
アメリカの地質調査所(USGS)によりますと、インドネシアで2日午後7時49分、日本時間の午後9時49分にスマトラ島パダンの西南西およそ800kmの沖合いを震源とするマグニチュード7.8の地震がありました。震源の深さは24kmと推定されています。
インドネシアの国家災害対策庁によりますと、これまでのところ、この地震による大きな被害の情報は入っていないということです。インドネシアの国家災害対策庁は、西スマトラ、北スマトラそして、アチェに津波のおそれがあるとして警戒を呼びかけています。 (NHKニュース&スポーツ 03/02 23:59)
マグニチュード7.8と規模の大きな地震であったにも関わらず、震源がスマトラ島パダンの西南西およそ800kmの沖合いの海底と人々が暮らす陸地から離れていたため、地震による被害は今のところ報告されていないようです。また、日本の気象庁によるこれまでの解析によると、今回の地震は、海底の岩盤が横方向にずれる「横ずれ」といわれるタイプの地震と推定されるということです。「横ずれ」の地震は、岩盤が上下にずれ動くタイプの地震よりも大きな津波が起きにくいとされていることから、津波による大きな被害も起きていないようです。インドネシアの国家災害対策庁も、地震発生からおよそ3時間後に、津波に対する警戒を解除しました。
ちなみに、インドネシアのスマトラ島周辺では、4年前の2012年4月に今回の震源地より北側のスマトラ島西方沖のインド洋でマグニチュード8.6の巨大地震が発生したのですが、この時も「横ずれ」タイプの地震だったことから、スマトラ島北部の一部の沿岸で観測された津波は高さ1メートル余りでした。
このほかスマトラ島の周辺海域の海底では過去にも多くの地震が起きています。2000年以降に限ってもマグニチュード7.0以上の巨大地震が計12回も発生しています。
2004年12月には、スマトラ島北部のアチェ特別州の西側、およそ200kmの沖合で、マグニチュード9.1の地震が起き、地震とその後の津波などで、東日本大震災を遥かに上回る20万人を超える人達が犠牲になったことは記憶に新しいところです。
また、2007年9月にもスマトラ島南部のブンクルの沖合およそ130kmの地点でマグニチュード7から8の地震が相次ぎ、インドネシアで最大1メートル20センチの津波を観測したほか、アラビア半島でも70センチの津波を観測しました。このほか2008年2月にはスマトラ島の中心都市、パダンから南南西およそ160kmの沖合を震源とするマグニチュード7.3の地震が起きました。
10年なんて長い地球の歴史から見るとほんの一瞬のことで、このスマトラ島の周辺海域の海底は活発な活動期にあると考えていいようです。
インドネシアを形作る島々のすぐ南側の海底には、その島々に沿うようにユーラシアプレートとオーストラリアプレートという地球の表面を覆う十数枚の厚さ100kmほどの巨大な岩盤(大陸プレート)のうちの2個の接合面があり、加えて、近くには太平洋プレートとフィリピン海プレートも位置して、周辺にはそれらのプレートとユーラシアプレートとオーストラリアプレートとの接合面もあります。このほか、バンダ海プレートをはじめとして巨大な大陸プレートから切り離されたものと思われる小規模なプレートもあり、複雑な構造をしています。
このため、地震活動が活発なだけでなく、多くの活火山も点在して、活発な活動(噴火)を繰り返しています。インドネシアの火山噴火の特徴は、地球規模で急激な気候変動を引き起こすほどの巨大噴火を起こすことで、有史以降に限っても、次のような巨大な火山噴火が記録されています。
・西暦535年……ジャワ島とスマトラ島の中間のスンダ海峡にある火山島、クラカタウ火山が噴火。地球全体が火山灰に覆われ、地球規模で急激な気候変動(寒冷化)が起こり、世界各地に異常気象による大混乱が発生。
・1257年……ロンボク島にあるサマラス火山が噴火。火山灰や硫酸塩が南極やグリーンランドにも降下。このサマラス火山の噴火は、過去3700年間で最大の火山噴火と言われ、この巨大噴火で北極から南極に至る地球全体が火山灰に覆われ地球規模で急激な気候変動(寒冷化)が発生。
・1586年……ジャワ島にあるケルート火山が噴火。泥流により死者約10,000人(推定)。
・1638年……ジャワ島のムラピ火山が噴火。死者約1,000人(推定)。
・1672年……同じくジャワ島のムラピ火山が噴火。火砕流などで死者約3,000人(推定)。
・1711年……サンギへ島のアウ火山が噴火。火砕流により死者約3,000人(推定)。
・1760年……バンダ海に浮かぶモルッカ諸島の火山が噴火。泥流により死者約2,000人(推定)。
・1772年……ジャワ島のムラピ火山が噴火。死者約3,000人(推定)。
・1815年……スンバワ島のタンボラ火山が大噴火。広範囲を火山灰が覆い、飢饉、疫病などで死者9万人以上(推定)。
・1883年……クラカタウ火山が噴火。津波と火砕流により死者36,000人以上(推定)。
・1919年……ジャワ島のケルート火山が噴火。死者約5,100人(推定)。
・1930年……ジャワ島のムラピ火山が噴火。火砕流により死者約1,300人(推定)。
・2010年……スマトラ島のシナブン火山とジャワ島のムラピ火山が相次いで噴火。
この『おちゃめ日記』にも書かせていただきましたが、昨年(2015年)の11月にもバリ島の東に位置するロンボク島のリンジャニ火山が噴火を起こし、噴煙により国際的な観光地であるバリ島の国際空港がしばらく閉鎖されるということがありました。
インドネシアの火山がまたまた噴火(@_@)
遠く離れたインドネシアでの出来事なのか、このニュース、日本ではあまり注目されておりませんが、私は不気味さをもって受け取りました。地面も、海も、大気も世界中繋がっていますので、自然環境に関しては、日本列島の周辺だけの狭い視点ではなく、常に地球規模の“グローバルな視点”で捉える必要があると私は考えています。
グローバルの視点
【追記】
不穏な地殻変動はインドネシアだけではありません。同じく3月2日(水)には次のようはニュースも流れています。日本列島付近も、インドネシア同様、ユーラシアプレートや太平洋プレート、北米プレート、フィリピン海プレートという4つの大きな大陸プレートが複雑に接合しあう地域だけに、今後も地震や火山噴火には十分な注意が必要なようです。
『新潟焼山 山頂半径1kmを立ち入り規制』
新潟県と長野県の境にある新潟焼山について、去年から噴気の量が多くなっていることなどから、麓の自治体は、登山者の安全を確保するため火口として想定される山頂から半径1kmの範囲を警戒区域に指定し、2日から立ち入り禁止とする規制を始めました。
気象庁によりますと、標高2,400メートルの「新潟焼山」は、去年夏頃から山頂の東側斜面からの噴気がやや高く上がる傾向が見られ、去年12月下旬からは噴気の量も多くなっているということです。また、今年1月の上空からの観測では、噴気が山頂の火口からおよそ100メートルの高さに達し、火口付近では周囲より温度が高い場所も確認されていました。
このため、麓にある新潟県糸魚川市と妙高市、それに長野県の小谷村は、2日、それぞれの市長と村長が出席して、新潟焼山の防災対策などについて話し合う協議会を開きました。この中で、現状が報告されたあと、登山者の安全を確保するため災害対策基本法に基づき火口として想定される山頂から半径1kmの範囲を警戒区域に指定することを決め、2日午前10時半から立ち入り禁止とする規制を始めました。各自治体では麓の住民に対しても新潟焼山の今後の火山活動に注意するよう呼びかけています。
標高2,400メートルの活火山「新潟焼山」は、活動の開始時期がおよそ3000年前と国内でも新しい火山の1つとされ、新潟県内で唯一、気象庁が24時間監視しています。登山をするには上級者向けの山とされ、登山客は年間400人程度ですが、新潟県と長野県側からは登山道が設けられています。
この「新潟焼山」について、気象庁は、去年の夏頃から山頂の東側斜面からの噴気がやや高く上がる傾向が見られ、去年12月下旬からは噴気の量も多くなっているとしていました。さらに、火山性地震も複数回観測されたということです。また、1か月ほど前の上空からの観測では、噴気が山頂の火口からおよそ100メートルの高さに達し、火口付近では周囲より温度が高い所も確認されました。一方で、火口周辺に噴出物は確認されず、地殻変動などの観測データにも特段の変化はなかったということです。
(NHKニュース&スポーツ 03/02 13:18)
執筆者
株式会社ハレックス
前代表取締役社長
越智正昭
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