四国に記録的豪雨をもたらした台風第12号は変わった形状
台風第12号は四国地方に記録的な雨をもたらした。場所によっては総雨量が1000㎜を超える豪雨となっており、被害の拡大がないよう祈るばかりである。
気象庁のアメダス観測点での日雨量の記録の多い方から20位以内に、高知県の観測点が5地点あり、四国全体では9地点が入っている。記録一位の高知県魚梁瀬の851.5㎜は台風1106号によるもので、4位の香川県内海の790㎜は台風7617号による。このようにこの地方の豪雨の多くが台風によって起こっている。気象庁の観測点以外の記録では、日雨量が1000㎜を超えた例もある豪雨の常習地帯だから、大雨特別警報の発表がなかったが、他の地域でこのような豪雨となれば、大雨特別警報の対象となるような異常な豪雨である。
台風12号は中心から500㎞以上も離れた四国に豪雨の中心が現れたが、このことを衛星画像で見ることにする。前回「相次ぐ台風の発生」で12号台風の形状について触れたが、発生期の雲の特徴がその後の台風の発達と降雨域に特徴的な形状を作ったといえる。
台風12号を衛星画像で追跡してみると普通の台風とは異なる形状をしていた。過去にもこのような形状の台風はいくつかあったが、発生初期から大きな雲域の中心部分に活発な雨雲が見られず、中心を大きく取り巻く形でところどころ活発な雨雲の集団が見られたが、沖縄付近を通過した際にもこの中心部分には複数の渦が見られ、その周りに活発な雨雲が取り巻く構造をしていた。ここでは8月1日の東シナ海をゆっくり北上する台風の様子を動画にしたものを示す。厚い雲域の内側の部分に見られる2つの渦が反時計回りに回っている様子を見てほしい。発達する台風は、中心部分には小さな眼ができるが、この台風はドーナッツ状をした雲域の中心部分に複数の渦が存在するちょっと変わった形をしていた。
7月30日から8月2日までの台風の様子を並べる。各日の昼12時の可視画像を選んだが、30日は雲域の南の部分が入っていないので、少し見え始めた夕方16時の画像とした。31日の画像を見ると、直径700kmほどある薄緑の点線円の部分に発達した雨雲(白く輝いている部分は積乱雲が発達した様子)が見られるが、その内側にはあまり発達した雲がない。ここの内側の部分を詳細に見ると いくつかの低気圧性循環の中心が見られる。
30日には、北東象限と南側の雲が一つにまとまっているようには見えなかったが、31日には外側を取り巻く雲が一周する形となって一つの雲組織としてまとまりを持ち始めている。 8月1日になると、外側を取り巻く雲域が厚みと幅をましたことが判る。この厚みを持った雲の下で激しい雨が降っている。中心部分は少し範囲が狭まったが引き続き複数の雲渦が見られた。これは、台風の中心部分の深まりは見られないが、台風全体の雲域が大きくまとまったことを示しており、台風の中心から離れた東から南東象限に帯状の激しい降雨帯が形成されたことを示している。 この降雨帯のさらに東側にも台風に巻き込むようにさほど発達していない雲列が九州四国方面に流れ込んでいる。この雲列は九州・四国に接近すると湿った気流は山地を滑昇し、雨雲を発達させ、大雨を降らせ始めた。
2日になると、台風12号は九州の西海上をゆっくり北上し、その南東側の降雨帯は九州にかかっている。一方四国の南海上はあまり活発な雲が見られないが、四国の山地にへばり付くように白く輝く雲が見られる。南からの暖湿な気流の流入と四国山地が、この地域で雨雲を発達し続けた。この様子をレーダー画像で見てほしい。四国の南海上には特に活発な雨雲がないのに、沿岸部で雨雲が急発達し、次々と内陸に向かって流れ込んでいる。衛星画像で南海上に活発な雨雲が見えなくても台風の周りを南からたっぷりと水蒸気を含んだ気流の流入が続いているためである。
台風が北上してくると、台風中心にばかり目を奪われがちであるが、台風の東側は南から湿った気流が送り込まれるので、離れた場所にいると思わないで、お住まいの地方の気象情報をしっかりと聞いて対策を講じていただきたい。
気象庁のアメダス観測点での日雨量の記録の多い方から20位以内に、高知県の観測点が5地点あり、四国全体では9地点が入っている。記録一位の高知県魚梁瀬の851.5㎜は台風1106号によるもので、4位の香川県内海の790㎜は台風7617号による。このようにこの地方の豪雨の多くが台風によって起こっている。気象庁の観測点以外の記録では、日雨量が1000㎜を超えた例もある豪雨の常習地帯だから、大雨特別警報の発表がなかったが、他の地域でこのような豪雨となれば、大雨特別警報の対象となるような異常な豪雨である。
台風12号は中心から500㎞以上も離れた四国に豪雨の中心が現れたが、このことを衛星画像で見ることにする。前回「相次ぐ台風の発生」で12号台風の形状について触れたが、発生期の雲の特徴がその後の台風の発達と降雨域に特徴的な形状を作ったといえる。
台風12号を衛星画像で追跡してみると普通の台風とは異なる形状をしていた。過去にもこのような形状の台風はいくつかあったが、発生初期から大きな雲域の中心部分に活発な雨雲が見られず、中心を大きく取り巻く形でところどころ活発な雨雲の集団が見られたが、沖縄付近を通過した際にもこの中心部分には複数の渦が見られ、その周りに活発な雨雲が取り巻く構造をしていた。ここでは8月1日の東シナ海をゆっくり北上する台風の様子を動画にしたものを示す。厚い雲域の内側の部分に見られる2つの渦が反時計回りに回っている様子を見てほしい。発達する台風は、中心部分には小さな眼ができるが、この台風はドーナッツ状をした雲域の中心部分に複数の渦が存在するちょっと変わった形をしていた。
7月30日から8月2日までの台風の様子を並べる。各日の昼12時の可視画像を選んだが、30日は雲域の南の部分が入っていないので、少し見え始めた夕方16時の画像とした。31日の画像を見ると、直径700kmほどある薄緑の点線円の部分に発達した雨雲(白く輝いている部分は積乱雲が発達した様子)が見られるが、その内側にはあまり発達した雲がない。ここの内側の部分を詳細に見ると いくつかの低気圧性循環の中心が見られる。
30日には、北東象限と南側の雲が一つにまとまっているようには見えなかったが、31日には外側を取り巻く雲が一周する形となって一つの雲組織としてまとまりを持ち始めている。 8月1日になると、外側を取り巻く雲域が厚みと幅をましたことが判る。この厚みを持った雲の下で激しい雨が降っている。中心部分は少し範囲が狭まったが引き続き複数の雲渦が見られた。これは、台風の中心部分の深まりは見られないが、台風全体の雲域が大きくまとまったことを示しており、台風の中心から離れた東から南東象限に帯状の激しい降雨帯が形成されたことを示している。 この降雨帯のさらに東側にも台風に巻き込むようにさほど発達していない雲列が九州四国方面に流れ込んでいる。この雲列は九州・四国に接近すると湿った気流は山地を滑昇し、雨雲を発達させ、大雨を降らせ始めた。
2日になると、台風12号は九州の西海上をゆっくり北上し、その南東側の降雨帯は九州にかかっている。一方四国の南海上はあまり活発な雲が見られないが、四国の山地にへばり付くように白く輝く雲が見られる。南からの暖湿な気流の流入と四国山地が、この地域で雨雲を発達し続けた。この様子をレーダー画像で見てほしい。四国の南海上には特に活発な雨雲がないのに、沿岸部で雨雲が急発達し、次々と内陸に向かって流れ込んでいる。衛星画像で南海上に活発な雨雲が見えなくても台風の周りを南からたっぷりと水蒸気を含んだ気流の流入が続いているためである。
台風が北上してくると、台風中心にばかり目を奪われがちであるが、台風の東側は南から湿った気流が送り込まれるので、離れた場所にいると思わないで、お住まいの地方の気象情報をしっかりと聞いて対策を講じていただきたい。
執筆者
気象庁OB
市澤成介