2014/08/13

栃木県に発生した竜巻(台風11号の東側で発生)

強い台風11号は南西諸島の東海上をゆっくり北上し、10日朝6時過ぎ高知県安芸市付近に上陸し、四国、近畿地方を通過し、日本海へ進んだ。上陸時は965㍱で、最大風速35m/sと強い勢力を維持していた。この台風の特徴をあげるとしたら、四国と紀伊半島の大雨であるが、ここでは、遠く離れた関東地方で起こった竜巻について紹介する。

台風が近畿地方を進んでいる頃、栃木県で竜巻が発生した。実は、昨年も台風18号が紀伊半島の南東海上を北北東に進んでいる頃、埼玉、群馬、栃木3県で5個の竜巻が発生した。

この二つの事例についてレーダーエコー図で比較して見る。台風中心は共にこのエコー図の範囲外にあり、台風に伴う雨域が近畿から東海地方にかかっている。関東地方には、南北に延びるライン状の活発なエコーがあって、一部で激しい雨を降らせている。この雨雲は、台風の東側を廻り、高温で湿った気流が流れ込んでできたもので、台風の外側に軽鎖性れることから、アウターバンドと呼ばれている。

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関東地方のエコー分布をみると東部ではエコーのない領域が広がっており西部でもライン状のエコーの西には、雨もなく晴れているところもあった。今回の事例の方が、このエコーラインの活動が活発に見えるが、これは日中であったため、日差しがあり大気の不安定な状況がより強まったと考えられる。

また、特に栃木県で雨雲が強まっているのは、栃木県西部に南北に延びる日光連山の影響でその東側で気流の収束が強まって雨雲の発達に寄与したと見られる。

衛星画像と合わせてみると、台風中心は兵庫県付近にあり、その周りを厚い雨雲が覆っている。一方、東北地方には前線が停滞しており、この方面では強い雨の降っているところもある。関東地方は千葉県下から茨城県にかけては晴れているが、南海上からライン状に対流雲列が並んでおり、関東平野に入ってより活発な積乱雲が見られる。台風の東側は広い範囲で南寄りの風となっており、この南風に運ばれる高温で多湿な気流が流入しやすい場所となっている。上のレーダーエコー図では静岡県の内陸で強いエコーが点在しているが、これは南からの湿った気流が中部山地で強制上昇して、雨雲を発達させ強い雨を降らせている様子を示している。

一方、関東地方は西部に南北に延びる山地があり、この東側で収束が強化され、ライン状の降雨域を作っている。一つ雨雲が通るたびに雷と突風を伴って激しい雨が降る。時間はそう長くないが、このような状況となると、竜巻等の突風が発生する。こうした条件を作るのは台風以外にもあるが、台風時はより高温多湿な気塊が流入するため、竜巻等の発生しやすい状況となる。

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竜巻等の突風について、気象庁は竜巻発生確度ナウキャストを10分毎に提供しており、その発生確度が2の状況になったか、今後予想される場合に、その発生確率が高くなった地域を含む府県を対象に「竜巻注意情報」を発表している。この情報は、気象台から発表される情報の中では異質で、情報の有効時間(発表から1時間)が明記されており、解除の処置はしない。危険な状態が続く場合は、改めて発表する形を取っている。

この時のレーダーエコーの変化と、竜巻発生確度ナウキャストの画像を並べて動画で示すので、これを見ていただきたい。
関東地方を南北に連なる強いエコー域に対応して竜巻発生確度が2の領域が現れており、竜巻の発生はこの極一部である。しかし、この神奈川県から栃木県に延びる、発生確度の高かった地域の方の中には、竜巻の発生はなかったものの、巻き上げるような強い風や突然の激しい雨に遭遇した方が多いと思う。
竜巻に遭遇するのは極めてまれであるが、台風がまだ遠い位置にあっても、雨雲がライン状となって次々侵入するようなときは、竜巻発生確度ナウキャストを見て、危険度が迫ったら外出しないなどの対策をしてほしい。

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