2014/11/05
北日本の東海上に見える複雑な模様は
日本列島周辺の海上は、低気圧が通過するたびに筋状構造の雲が広がり易くなる。冬に向かって、太陽高度が次第次第に下がるに従って、陸地表面の冷え込みが速まっている。しかし、陸に比べ海上の水温の低下はゆっくりであるため、大陸で冷やされた冷気が、海上に出ると温かい海面から水蒸気をたっぷり吸収して雲を作ることにある。
このため、晩秋に向かって北日本の海上で雲がない衛星画像を見ることが少なくなってきた。
半月ほど前の10月19日朝、日本付近は大きな移動性高気圧に覆われており、衛星画像で見ると、伊豆諸島近海に気圧の谷の雲が見られる他は、広く雲の無い状況が見られた。しかし、それ以後、高気圧に覆われても、このように広い範囲に雲の無い状態は現れていない。ここに示した衛星画像は左に可視画像、右に赤外画像である。地上天気図を含め朝9時の状況である。
気象を専門とすると、雲の無い画像にはあまり興味を示さないのであるが、雲の無い状況を待ち望む衛星利用者も多い。地表面や海面の温度分布を使う分野の方々である。
雲がない場合に衛星が観測するのは、地表面や海面である。可視画像では雲の無い画像は黒っぽい世界しか見えない。しかし、表面温度を観測する赤外画像では、海上に面白い模様を見せる。北海道の東海上から関東北部の東海上にかけて黒から灰色の模様がぼんやりと見える。これは、海面水温に高低があることを示したものである。もう少しこの部分の濃淡をはっきりさせた画像を示そう。同日の7時30分の画像を使って強調表示してみる。
北海道南東海上に黒い歪な円形の部分が見える。また、福島県沖にも北海道南東海上のものより小さいが、円形の黒い部分があり、三陸沖にもあまり明瞭ではないが2つほど黒い海面が横に並んでいる。この黒く見える部分は周囲に比べて海面水温が高い部分に当たる。
一方、茨城県沖には東北東方向に伸びる灰色と黒色の境界がはっきりした部分がある。この付近では海面水温が急激に変化していることを示している。
この模様を海面水温図と比べてみよう。図は10月19日の海面水温分布図である。暖色系の色の部分ほど海面水温が高いことを示している。北海道南東海上に12℃以上の周囲より暖かい楕円状の領域がある。衛星画像で見られた福島県沖や三陸沖の周囲より黒い部分に対応する名利用な高音域は見られないが、東経145度から150度付近が高温で、沿岸部には低温の領域が広がっている。茨城県沖から東北東方向に伸びる灰色と黒色の境界付近は等温線が込み入っており、温度差の大きい海面を表している。実は、ここが暖流と寒流の接点の潮目に当たる。
北日本から東日本の東海上には親潮と呼ばれる寒流がある。一方本州四国の南海上には黒潮と呼ばれる暖流があり、関東の東海上に流込んでおり、この2つの海流の接点が関東地方の東海上にあるため、このような温度差がある潮目ができるのである。
ここで海流についても見ておこう。やはり同日の海流分布図を示す。矢印が潮の流れの方向を示し、暖色系の色の部分ほど流れが速いことを示している。四国沖から東に向いていた黒潮は伊豆諸島付近で北東に向きを変えて、関東の東海上で寒流に遭遇し、東に向きを変えている。また、海面水温図で見られた北海道南東海上の温かい領域を取り巻くように時計回りの潮の流れが見える。福島県沖には、逆向きの流れの渦中心が見られる。潮の流れが、海面水温分布に様々な模様を作り出していることが判る。
雲の無い日の衛星画像も色々なものが見えてくる。
「おや、面白い画像だな」と思ったら色々な資料を並べて、それが何を表しているかを調べてみるのも面白い。
このため、晩秋に向かって北日本の海上で雲がない衛星画像を見ることが少なくなってきた。
半月ほど前の10月19日朝、日本付近は大きな移動性高気圧に覆われており、衛星画像で見ると、伊豆諸島近海に気圧の谷の雲が見られる他は、広く雲の無い状況が見られた。しかし、それ以後、高気圧に覆われても、このように広い範囲に雲の無い状態は現れていない。ここに示した衛星画像は左に可視画像、右に赤外画像である。地上天気図を含め朝9時の状況である。
気象を専門とすると、雲の無い画像にはあまり興味を示さないのであるが、雲の無い状況を待ち望む衛星利用者も多い。地表面や海面の温度分布を使う分野の方々である。
雲がない場合に衛星が観測するのは、地表面や海面である。可視画像では雲の無い画像は黒っぽい世界しか見えない。しかし、表面温度を観測する赤外画像では、海上に面白い模様を見せる。北海道の東海上から関東北部の東海上にかけて黒から灰色の模様がぼんやりと見える。これは、海面水温に高低があることを示したものである。もう少しこの部分の濃淡をはっきりさせた画像を示そう。同日の7時30分の画像を使って強調表示してみる。
北海道南東海上に黒い歪な円形の部分が見える。また、福島県沖にも北海道南東海上のものより小さいが、円形の黒い部分があり、三陸沖にもあまり明瞭ではないが2つほど黒い海面が横に並んでいる。この黒く見える部分は周囲に比べて海面水温が高い部分に当たる。
一方、茨城県沖には東北東方向に伸びる灰色と黒色の境界がはっきりした部分がある。この付近では海面水温が急激に変化していることを示している。
この模様を海面水温図と比べてみよう。図は10月19日の海面水温分布図である。暖色系の色の部分ほど海面水温が高いことを示している。北海道南東海上に12℃以上の周囲より暖かい楕円状の領域がある。衛星画像で見られた福島県沖や三陸沖の周囲より黒い部分に対応する名利用な高音域は見られないが、東経145度から150度付近が高温で、沿岸部には低温の領域が広がっている。茨城県沖から東北東方向に伸びる灰色と黒色の境界付近は等温線が込み入っており、温度差の大きい海面を表している。実は、ここが暖流と寒流の接点の潮目に当たる。
北日本から東日本の東海上には親潮と呼ばれる寒流がある。一方本州四国の南海上には黒潮と呼ばれる暖流があり、関東の東海上に流込んでおり、この2つの海流の接点が関東地方の東海上にあるため、このような温度差がある潮目ができるのである。
ここで海流についても見ておこう。やはり同日の海流分布図を示す。矢印が潮の流れの方向を示し、暖色系の色の部分ほど流れが速いことを示している。四国沖から東に向いていた黒潮は伊豆諸島付近で北東に向きを変えて、関東の東海上で寒流に遭遇し、東に向きを変えている。また、海面水温図で見られた北海道南東海上の温かい領域を取り巻くように時計回りの潮の流れが見える。福島県沖には、逆向きの流れの渦中心が見られる。潮の流れが、海面水温分布に様々な模様を作り出していることが判る。
雲の無い日の衛星画像も色々なものが見えてくる。
「おや、面白い画像だな」と思ったら色々な資料を並べて、それが何を表しているかを調べてみるのも面白い。
執筆者
気象庁OB
市澤成介