2014/11/17
関東平野を覆った霧 (11月13日)
11月13日朝、埼玉県、茨城県、栃木県などの一部地域は霧に覆われ、交通機関の一部に支障がでた。この霧は前日の雨で地表付近の空気が湿っていたため、夜間の地表面の冷え込みにより地表付近の空気が冷やされ水蒸気が凝結したことで起こったもので、「放射霧」と呼ばれる。
この朝の気象台の観測記録を見ると、水戸、宇都宮、熊谷の地方気象台で霧を観測していた。その観測記録を下に示す。各地の気象台では、雨や雪などの降水現象、霧や地吹雪などの視程悪化現象、雷等が観測されると、大気現象の種別と観測された時刻を記号で記録している。その現象が終わった時刻も記録されているので、何時から何時までどのような現象があったかを読み取ることができる。下に示した記事の中に現れた記号は凡例として示す。また、霧の発生した時間を読み取ってそれも付加した。なお、霧やもや等の視程悪化現象を観測したときには、視程がどの程度であったかを VIS1 のように示す。下付き数字が視程をkmで示しており、これは視程1km未満であることを示している。
観測資料を見ると、もやのかかった状態から次第に見通しが悪くなって、1時前後から霧となった。3地点の中で熊谷の記録を見ると、視程が100m未満となる霧となったが、空が透視でき、月が見えていたと思う。宇都宮では、空が透視できないほど霧が厚みを増した時間が長かったが、4時10分には見通しが良くなっていた。しかし、水戸では9時過ぎまで霧を観測していた。3地点の観測からは、霧の発生時刻に大きな違いがなかったが、茨城県側でより厚い霧が長時間続いていたことがわかる。
気象台の観測だけでは、霧の発生域がどれほどの広がりを持っていたかわからない。そこで気象衛星で霧の出たところを探してみた。霧は可視画像では、滑らかな表面で濃淡の少ない広がりのある白や明灰色の雲域として見え、輪郭がぼんやりしている事が多いが、川筋に沿って細長く広がることもある。朝日が差し始めたころには埼玉南東部から茨城県にかけて霧が広がっていたが、次第に範囲を狭め、10時には全く見えなく、関東平野は雲一つない晴天域が広がった。
気象台の観測では深夜の1時頃から霧が出ていたので、その時間帯に霧がどのような分布をしていたか見たい。しかし、可視画像では夜間は観測できない。一方、赤外画像は昼夜を問わず観測できるが、右の図のように霧は判別できない。これは、霧の表面の温度と地表の温度との差がほとんどないため、識別できないためである。しかし、あきらめるのはまだ早い。
気象衛星ひまわり7号は「可視画像」と「赤外画像」の他に3つのセンサーを持っている。気象庁HPの気象衛星のページには、「可視画像」と「赤外画像」に加えて「水蒸気画像」の3つの画像を提供しているが、「近赤外画像」と「赤外画像2」については、提供していない。「赤外2画像」は赤外画像に近い波長帯の観測のため2つの画像を並べる必要がない。「近赤外画像」は、日中と夜間では特性が異なり扱いが難しいので提供していない。
しかし、この扱いの難しい近赤外画像と赤外画像の輝度温度の差分を取ると地表面付近に霧の識別が可能となる。このため、この差分を取った画像が夜間の霧の識別に有効なのだ。次に示す画像は、夜間の赤外画像(上段)と差分画像(下段)である。1時~6時までの画像で黄色楕円内を見て欲しい。赤外画像では、楕円内は1時~4時迄は一様な灰色であるが、4時~6時には明灰色の南西から北東走行に細長く伸びた雲が見られる。これは上層の薄い雲を捉えたものである。一方、下段の差分画像では楕円の北半分に白い部分が広がっている。この白い部分が霧の発生している領域である。4時以降の画像には、南西から北東走行に黒い線状のものが見られるが、これは赤外画像で明灰色に見えた上層雲である。
特殊な処理した画像ゆえ、何がどのように見えるかを習得しないと、なかなか判別することができないが、気象台が夜間に濃霧注意報を発表する場合、この画像を用いることがある。 ここでは、衛星画像の一つの見方として紹介した。気象衛星の観測資料は、普段見ている画像以外に様々処理をして、天気予報等に活用されていることを知ってほしい。
この朝の気象台の観測記録を見ると、水戸、宇都宮、熊谷の地方気象台で霧を観測していた。その観測記録を下に示す。各地の気象台では、雨や雪などの降水現象、霧や地吹雪などの視程悪化現象、雷等が観測されると、大気現象の種別と観測された時刻を記号で記録している。その現象が終わった時刻も記録されているので、何時から何時までどのような現象があったかを読み取ることができる。下に示した記事の中に現れた記号は凡例として示す。また、霧の発生した時間を読み取ってそれも付加した。なお、霧やもや等の視程悪化現象を観測したときには、視程がどの程度であったかを VIS1 のように示す。下付き数字が視程をkmで示しており、これは視程1km未満であることを示している。
観測資料を見ると、もやのかかった状態から次第に見通しが悪くなって、1時前後から霧となった。3地点の中で熊谷の記録を見ると、視程が100m未満となる霧となったが、空が透視でき、月が見えていたと思う。宇都宮では、空が透視できないほど霧が厚みを増した時間が長かったが、4時10分には見通しが良くなっていた。しかし、水戸では9時過ぎまで霧を観測していた。3地点の観測からは、霧の発生時刻に大きな違いがなかったが、茨城県側でより厚い霧が長時間続いていたことがわかる。
気象台の観測だけでは、霧の発生域がどれほどの広がりを持っていたかわからない。そこで気象衛星で霧の出たところを探してみた。霧は可視画像では、滑らかな表面で濃淡の少ない広がりのある白や明灰色の雲域として見え、輪郭がぼんやりしている事が多いが、川筋に沿って細長く広がることもある。朝日が差し始めたころには埼玉南東部から茨城県にかけて霧が広がっていたが、次第に範囲を狭め、10時には全く見えなく、関東平野は雲一つない晴天域が広がった。
気象台の観測では深夜の1時頃から霧が出ていたので、その時間帯に霧がどのような分布をしていたか見たい。しかし、可視画像では夜間は観測できない。一方、赤外画像は昼夜を問わず観測できるが、右の図のように霧は判別できない。これは、霧の表面の温度と地表の温度との差がほとんどないため、識別できないためである。しかし、あきらめるのはまだ早い。
気象衛星ひまわり7号は「可視画像」と「赤外画像」の他に3つのセンサーを持っている。気象庁HPの気象衛星のページには、「可視画像」と「赤外画像」に加えて「水蒸気画像」の3つの画像を提供しているが、「近赤外画像」と「赤外画像2」については、提供していない。「赤外2画像」は赤外画像に近い波長帯の観測のため2つの画像を並べる必要がない。「近赤外画像」は、日中と夜間では特性が異なり扱いが難しいので提供していない。
しかし、この扱いの難しい近赤外画像と赤外画像の輝度温度の差分を取ると地表面付近に霧の識別が可能となる。このため、この差分を取った画像が夜間の霧の識別に有効なのだ。次に示す画像は、夜間の赤外画像(上段)と差分画像(下段)である。1時~6時までの画像で黄色楕円内を見て欲しい。赤外画像では、楕円内は1時~4時迄は一様な灰色であるが、4時~6時には明灰色の南西から北東走行に細長く伸びた雲が見られる。これは上層の薄い雲を捉えたものである。一方、下段の差分画像では楕円の北半分に白い部分が広がっている。この白い部分が霧の発生している領域である。4時以降の画像には、南西から北東走行に黒い線状のものが見られるが、これは赤外画像で明灰色に見えた上層雲である。
特殊な処理した画像ゆえ、何がどのように見えるかを習得しないと、なかなか判別することができないが、気象台が夜間に濃霧注意報を発表する場合、この画像を用いることがある。 ここでは、衛星画像の一つの見方として紹介した。気象衛星の観測資料は、普段見ている画像以外に様々処理をして、天気予報等に活用されていることを知ってほしい。
執筆者
気象庁OB
市澤成介