2014/12/03
東京の最低気温が下がる??
平成26年12月2日に「東京」の気象観測地点が千代田区大手町から北の丸公園へ移転した(右図は東京管区気象台HPから引用)。今回の移転では、降水量、気温、蒸気圧、露点温度、相対湿度、雪(降雪・積雪)、気圧の各観測要素が移された。これに先だって、風(風向・風速)、日射量、日照時間は平成19年11月より北の丸公園で観測を行っており、これですべての観測が北の丸公園に移る。ただし、大気現象等の目視観測は、観測員によるため、引き続き気象庁庁舎で行う。
今回、「東京」の観測点を移設したところは緑の多い北の丸公園内の一角で、気象庁から900mほど西側に位置している。観測点の移動距離は大きなものではないが、気象庁庁舎のある大手町は周囲に高い建物が増え、気象の観測環境としては条件の良い場所ではなかった。
このため、北の丸公園に新しい観測のための露場を整備し、平成23年8月から比較観測を行ってきた。3年ほどの比較観測が得られ、その結果を整理したところ、気温と湿度において両観測点の間に眼に見える差が見られた。気温については、最高気温はわずかに低めであったが、最低気温について北の丸公園の新観測点の方が年平均で1.4℃ほど低かった。また、相対湿度については新観測点の方が3%程高めであった。これは、明らかに観測点周辺の環境の違いが現れたものと言える。下表は比較観測によって得た月平均の値を比較したものである。冬期の最低気温は12月1月の最低気温は1.6℃低くなっている。
観測点の移設は、今回の事例のように気象統計にも影響が現れるため、新しい観測点では統計上は観測資料をつなげて扱うことはしないことがある。しかし、「東京」観測点は日々の天気予報で東京地方の代表地点として最高・最低気温を予報しており、寒暖の指標として平年比を用いて説明することがある。このため、これまでの地点による平年値を使って新しい観測値を比較すると、気温が低くなったと誤解が生ずるため、これまでの比較観測の結果を加味した新しい平年値を作成し、日々の天気予報などで利用することにした。
週間天気予報の表示例を気象庁HPのものでみる。東京都は島嶼部を除く東京地方と伊豆諸島北部、伊豆諸島南部、小笠原諸島に分けて週間予報が出されており、それぞれの予報区に、最高・最低気温の予想が発表されている。この気温予想が東京地方の場合は「東京」観測点を対象としたものです。
東京地方から順に小笠原諸島までの予報が表示され、その後に平年値の欄があります。ここに示される平年値は、予報4日目(例では6日)の最高・最低気温の平年値となっている。1週間で平年値が大きく変動することはないので、4日目の平年値を代表する形で示しており、これを使って、日々の気温予報を平年と比較して問題はない。
参考ながら、週間天気予報の最高気温と最低気温は予報値に加え、括弧付きで最高気温・最低気温の予測幅を示しています。この予測幅は、その日の天気の状況によって予測幅が変動し、かつ予報値がこの予測幅の中心になるとは限らない。この情報も活用して、上手に予報を活用して欲しい。
なお、予報された気温は「東京」観測点の予想であって、自分の住む地域の気温を示したものではない。多くの方は、「都心でこの程度の冷え込みだったら、自分の所ではこの程度になる」と考えて気温予報を使っていると思う。しかし、今回の移転によって基準としていた予報値が少し低めに変わってしまうので、それを修正するために、平年値の差を見るなどして活用していただきたい。
ところで、最低気温が低い傾向が表れたことは、熱帯夜や冬日の統計にも変化が現れる。平成25年4月から平成26年3月までの1年間で見ると、熱帯夜は大手町で39日に対して北の丸公園で22日であった。また、冬日については大手町で6日しかなかったが、北の丸公園では21日に増えている。
実際の比較観測結果を使って昨年12月1ヶ月の気温を見る。上段には日々の最高気温、最低気温、平均気温を示しており、点線が大手町の観測(旧と表記)で、実線が北の丸公園(新と表記)での観測である。最高気温は若干低めに経過しているが大差はないが、最低気温では明らかに低い日が多く、その差も大きいことがわかる。北の丸公園では29日と30日の最低気温は氷点下となり、冬日を記録しているが、大手町では下回っていない。
日々の最低気温の差を下段の図に示したが、最大で3.5℃もの開きが出ていた。差が大きかった時と小さかった時の気圧配置を見ると、最も大きな差が出たのは日本海を進んだ低気圧の通過後に冬型気圧配置となり、寒気が南下した時であった。一方、低気圧が通過する際には、日本海低気圧でも南岸低気圧でもその差が小さい傾向が見られた。冷え込みの厳しいとき程、これまでに比べ低い気温が出る傾向があると見られるかも。
東京の天気予報で東京の最低気温が低くなったと感ずることがあろうと思うが、これまで、東京都心の最低気温が周囲に比べ高めに出ていたが、これからはその差が少し小さくなると考えると良い。
最後になってしまったが、気象庁発表の週間天気予報は1日遅れて、3日発表から新しい観測点を対象とした気温予報に変更になった。前日との比較に2日と3日の東京地方の週間天気予報を並べて示す。最高気温はほぼ同じ数値を示しているが、最低気温は最大3℃低い予報となっている。予報が若干変わった効果も加わっているが、2℃程度の違いがあることをわかっておいて欲しい。なお、平年値も新しくなり、前日の4日目の平年値に比べ1.7℃低い数値になっている。これまでより2℃程度低い予報になると見て使う必要がある。
今回、「東京」の観測点を移設したところは緑の多い北の丸公園内の一角で、気象庁から900mほど西側に位置している。観測点の移動距離は大きなものではないが、気象庁庁舎のある大手町は周囲に高い建物が増え、気象の観測環境としては条件の良い場所ではなかった。
このため、北の丸公園に新しい観測のための露場を整備し、平成23年8月から比較観測を行ってきた。3年ほどの比較観測が得られ、その結果を整理したところ、気温と湿度において両観測点の間に眼に見える差が見られた。気温については、最高気温はわずかに低めであったが、最低気温について北の丸公園の新観測点の方が年平均で1.4℃ほど低かった。また、相対湿度については新観測点の方が3%程高めであった。これは、明らかに観測点周辺の環境の違いが現れたものと言える。下表は比較観測によって得た月平均の値を比較したものである。冬期の最低気温は12月1月の最低気温は1.6℃低くなっている。
観測点の移設は、今回の事例のように気象統計にも影響が現れるため、新しい観測点では統計上は観測資料をつなげて扱うことはしないことがある。しかし、「東京」観測点は日々の天気予報で東京地方の代表地点として最高・最低気温を予報しており、寒暖の指標として平年比を用いて説明することがある。このため、これまでの地点による平年値を使って新しい観測値を比較すると、気温が低くなったと誤解が生ずるため、これまでの比較観測の結果を加味した新しい平年値を作成し、日々の天気予報などで利用することにした。
週間天気予報の表示例を気象庁HPのものでみる。東京都は島嶼部を除く東京地方と伊豆諸島北部、伊豆諸島南部、小笠原諸島に分けて週間予報が出されており、それぞれの予報区に、最高・最低気温の予想が発表されている。この気温予想が東京地方の場合は「東京」観測点を対象としたものです。
東京地方から順に小笠原諸島までの予報が表示され、その後に平年値の欄があります。ここに示される平年値は、予報4日目(例では6日)の最高・最低気温の平年値となっている。1週間で平年値が大きく変動することはないので、4日目の平年値を代表する形で示しており、これを使って、日々の気温予報を平年と比較して問題はない。
参考ながら、週間天気予報の最高気温と最低気温は予報値に加え、括弧付きで最高気温・最低気温の予測幅を示しています。この予測幅は、その日の天気の状況によって予測幅が変動し、かつ予報値がこの予測幅の中心になるとは限らない。この情報も活用して、上手に予報を活用して欲しい。
なお、予報された気温は「東京」観測点の予想であって、自分の住む地域の気温を示したものではない。多くの方は、「都心でこの程度の冷え込みだったら、自分の所ではこの程度になる」と考えて気温予報を使っていると思う。しかし、今回の移転によって基準としていた予報値が少し低めに変わってしまうので、それを修正するために、平年値の差を見るなどして活用していただきたい。
ところで、最低気温が低い傾向が表れたことは、熱帯夜や冬日の統計にも変化が現れる。平成25年4月から平成26年3月までの1年間で見ると、熱帯夜は大手町で39日に対して北の丸公園で22日であった。また、冬日については大手町で6日しかなかったが、北の丸公園では21日に増えている。
実際の比較観測結果を使って昨年12月1ヶ月の気温を見る。上段には日々の最高気温、最低気温、平均気温を示しており、点線が大手町の観測(旧と表記)で、実線が北の丸公園(新と表記)での観測である。最高気温は若干低めに経過しているが大差はないが、最低気温では明らかに低い日が多く、その差も大きいことがわかる。北の丸公園では29日と30日の最低気温は氷点下となり、冬日を記録しているが、大手町では下回っていない。
日々の最低気温の差を下段の図に示したが、最大で3.5℃もの開きが出ていた。差が大きかった時と小さかった時の気圧配置を見ると、最も大きな差が出たのは日本海を進んだ低気圧の通過後に冬型気圧配置となり、寒気が南下した時であった。一方、低気圧が通過する際には、日本海低気圧でも南岸低気圧でもその差が小さい傾向が見られた。冷え込みの厳しいとき程、これまでに比べ低い気温が出る傾向があると見られるかも。
東京の天気予報で東京の最低気温が低くなったと感ずることがあろうと思うが、これまで、東京都心の最低気温が周囲に比べ高めに出ていたが、これからはその差が少し小さくなると考えると良い。
最後になってしまったが、気象庁発表の週間天気予報は1日遅れて、3日発表から新しい観測点を対象とした気温予報に変更になった。前日との比較に2日と3日の東京地方の週間天気予報を並べて示す。最高気温はほぼ同じ数値を示しているが、最低気温は最大3℃低い予報となっている。予報が若干変わった効果も加わっているが、2℃程度の違いがあることをわかっておいて欲しい。なお、平年値も新しくなり、前日の4日目の平年値に比べ1.7℃低い数値になっている。これまでより2℃程度低い予報になると見て使う必要がある。
執筆者
気象庁OB
市澤成介