2015/03/16
Supper Cyclone Pam バヌアツに甚大な被害
前回、前々回、台風第3号と対となる形で発生した南半球の「Cyclone PAM」を取り上げたが、このCycloneがバヌアツ共和国(Republic of Vanuatu)を襲って、甚大な被害が発生した。最大級のCycloneまで発達して、バヌアツ共和国の島々に沿って北から南に移動したため、各島に大きな被害が出たと推測される。テレビ等で得られたCycloneの被害の様子は断片的なものでしかないが、「Cyclone PAM」の勢力と被害の状況から見て、単に暴風による住宅被害ではなく、高潮による被害も加わって被害が甚大となったと思われる。
エファテ島(首都ポートビラが所在)に「Cyclone PAM」が最接近した13日12UTC(21日本時)の赤外画像を示す。中心には小さいはっきりした眼があって、勢力の強さを示している。
フィジー気象局が現地時刻14日午後4時発表の報道資料によると、「Cyclone PAMは14日午後2時(フィジー時)には南緯20.9度、東経169.4度にあって中心気圧896㍱、最大風速250km/h(69m/s)、最大瞬間風速335km/h(93m/s)で南へ時速22kmで移動している。」とあった。これは極めてまれにしかない強い勢力であることを示している。
この資料には、この2時間前の14日12時(09日本時)の天気図も示しているので、これを引用させていただく。 カテゴリー5の最強クラスで、中心気圧896㍱を解析している。南半球の天気図は、日本など北半球の天気図と違って、風を表す矢羽根は風の吹いてくる方向に向かって右側に羽根を付ける(北半球では左側に付ける)。これは、南半球では低気圧に向かって吹き込む風は北半球と逆に時計回れであるためである。図中の大きな矢羽根は最大風速を示すものである。
中心気圧から見ると、一昨年のヒィリピンレイテ島を襲った平成25年台風第30号(HAIYAN)の895㍱に匹敵するものであり、このCycloneが最強のものであったことがわかる。
このため、暴風もさることながら高潮も相当の規模になったと想像される。単純に最低気圧が896㍱であったので、気圧による吸い上げ効果だけで1m以上の海面上昇があり、加えて最大風速が極めて強かったことから数mの上昇があったと思う(これは、各島の地形に左右されるので、あくまでも推測にすぎませんが)。波浪も10数mに達していた。
この「Cyclone PAM」についてはこの程度の情報しかない得ていないが、最後にバヌアツの島々をなめるように南下した頃の衛星画像でその発達度合いと移動を見て欲しい。3月12日21時~14日21時(日本時)までの動きを示したが、最初は眼が見えていないが、次第に円形の雲域の中心部の厚みがまし、13日9時頃からは雲域の中心に眼が見え始めている。この時期が熱帯低気圧の発達期を示している。その後、15時頃から雲域が次第に南北に延び始め、特に南側への伸びが顕著になっている。これは、この雲域の伸びている方向に向かってCycloneが加速を始めていることの表れである。
温暖化によって台風の勢力の強まりが懸念されている。今回のバヌアツを襲ったCyclone PAMやヒィリピンレイテ島を襲った平成25年台風第30号(HAIYAN)のような最大級の勢力を保ったまま、小さな島嶼部を直撃すれば、島が壊滅するような被害が発生する恐れも出てくる。
近年、台風の進路予報は次第に向上しており、台風の進路予報を使って1、2日前の段階で、暴風の吹き荒れる前に、島を離れることも含めより安全な場所へ退避することも考えておく必要があろう。
エファテ島(首都ポートビラが所在)に「Cyclone PAM」が最接近した13日12UTC(21日本時)の赤外画像を示す。中心には小さいはっきりした眼があって、勢力の強さを示している。
フィジー気象局が現地時刻14日午後4時発表の報道資料によると、「Cyclone PAMは14日午後2時(フィジー時)には南緯20.9度、東経169.4度にあって中心気圧896㍱、最大風速250km/h(69m/s)、最大瞬間風速335km/h(93m/s)で南へ時速22kmで移動している。」とあった。これは極めてまれにしかない強い勢力であることを示している。
この資料には、この2時間前の14日12時(09日本時)の天気図も示しているので、これを引用させていただく。 カテゴリー5の最強クラスで、中心気圧896㍱を解析している。南半球の天気図は、日本など北半球の天気図と違って、風を表す矢羽根は風の吹いてくる方向に向かって右側に羽根を付ける(北半球では左側に付ける)。これは、南半球では低気圧に向かって吹き込む風は北半球と逆に時計回れであるためである。図中の大きな矢羽根は最大風速を示すものである。
中心気圧から見ると、一昨年のヒィリピンレイテ島を襲った平成25年台風第30号(HAIYAN)の895㍱に匹敵するものであり、このCycloneが最強のものであったことがわかる。
このため、暴風もさることながら高潮も相当の規模になったと想像される。単純に最低気圧が896㍱であったので、気圧による吸い上げ効果だけで1m以上の海面上昇があり、加えて最大風速が極めて強かったことから数mの上昇があったと思う(これは、各島の地形に左右されるので、あくまでも推測にすぎませんが)。波浪も10数mに達していた。
この「Cyclone PAM」についてはこの程度の情報しかない得ていないが、最後にバヌアツの島々をなめるように南下した頃の衛星画像でその発達度合いと移動を見て欲しい。3月12日21時~14日21時(日本時)までの動きを示したが、最初は眼が見えていないが、次第に円形の雲域の中心部の厚みがまし、13日9時頃からは雲域の中心に眼が見え始めている。この時期が熱帯低気圧の発達期を示している。その後、15時頃から雲域が次第に南北に延び始め、特に南側への伸びが顕著になっている。これは、この雲域の伸びている方向に向かってCycloneが加速を始めていることの表れである。
温暖化によって台風の勢力の強まりが懸念されている。今回のバヌアツを襲ったCyclone PAMやヒィリピンレイテ島を襲った平成25年台風第30号(HAIYAN)のような最大級の勢力を保ったまま、小さな島嶼部を直撃すれば、島が壊滅するような被害が発生する恐れも出てくる。
近年、台風の進路予報は次第に向上しており、台風の進路予報を使って1、2日前の段階で、暴風の吹き荒れる前に、島を離れることも含めより安全な場所へ退避することも考えておく必要があろう。
執筆者
気象庁OB
市澤成介