2015/08/19
ひまわり8号の高頻度観測画像
飛躍的に観測機能が向上したひまわり8号が運用を開始してから1か月を過ぎた。運用開始時には、高機能化の目玉であった可視カラー合成画像が気象庁HPに掲載され、宇宙から見る地球表面の色の分布に興味が湧いた。そして1か月遅れとなったが、ひまわり8号のもう一つ高機能化の目玉である高頻度観測の画像が気象庁HPで見られるようになった。
今回、気象庁が提供を始めた高頻度の画像資料は、日本付近を対象として2分30秒に一回観測するものである。この画像を見ると関東の南東部分と九州の北西部分でくびれた妙な形となっている。これは、日本列島を高頻度で観測するため、観測範囲を絞り込んだためである。日本列島全体が含まれるように、北半分と南半分を共に東西2000km、南北1000kmの矩形の範囲を観測したものを足し合わせており、北半分は北方4島までが含まれるよう東寄りの領域とし、南半分は小笠原諸島から与那国島までを含むよう西に広げた領域としている。北の部分が広がる形状は中の丸みのためで、衛星から見ると高緯度ほど小さく見えていることになる。
掲載されている画像は、「赤外」、「可視カラー合成」、「水蒸気」に加え、「雲頂強調」の4種類の画像である。「可視カラー合成」は可視光帯について3バンドの波長帯(青: 0.47µm, 緑: 0.51µm, 赤: 0.64µm)を観測してこれを合成したカラー画像が表示されている。「雲頂強調」の画像は、特殊な加工処理をした画像で、日中の領域は可視画像、夜間の領域は赤外画像を表示し、その上に雲頂高度が高い雲のある領域を色付けしたものである。詳細は省くが、背の高い雲を示すことは積乱雲の発達を検出することを目的としている。赤みを帯びた部分は雲頂高度の高い雲がある領域を示しており、その輪郭が明瞭なものほど積乱雲の最盛期の状態を示していると見て良い。一方、筋状に伸びる雲頂高度の高い部分は巻雲などの上層雲である。
太陽が高度を下げた夕方の画像例を示す。東シナ海西部は日中の領域にあるため、可視画像で表示されている。既に太陽高度が下がり画像は暗くなっている。この西側の日本付近はほとんどが赤外画像で表示されている。この画像で見ると、関東地方にかかる積乱雲は発達中であり、南西諸島周辺にも活発な積乱雲が見える。一方、東北地方に見られる青色で示されている部分は上層雲が主体の雲である。
ここでは、新たに提供が始まった高頻度の可視画像でどんな現象が見えるか追って見る。 8月14日17時から18時30分迄の1時間半を2分30秒間隔で観測した可視カラー合成画像である。先に示した雲頂強調画像はこの観測時間内の1枚である。
全体を見ると、太陽が次第に高度を下げていく時間帯であるため、東側部分から次第に暗くなっていく様子が見られ、特に、関東平野を見ると背の低い平坦な雲が先に見えなくなり、背の高い雲だけが捕えられている様子が見える。
画像の左上の中国東北区の部分(黄色四角内)を見て欲しい。白い雲が次第に東に広がっているが、この雲は巨大な積乱雲群で、雲域の東端には黒い部分が広がっている。これは背の高い雲の影が捕えられたもので、太陽の高度が下がって影が長くなっている様子も見られる。
次に、日本海中部(黄色楕円内)を見ていただきたい。ここは上空に寒気を持つ低気圧があり、この周辺で積乱雲が発達している。この低気圧はゆっくり東に移動しているが、低気圧を取り巻く大気の流れが反時計回りの循環をしていることがわかる。低気圧中心付近とその南西側では南東方向への雲の流れが見えるが、低気圧の北側では低い雲は東から西に向かい、高い雲は東から西に流れている様子が見られる。
沿海州(白色四角内)にある白く輝いた積乱雲は発達の最盛期を迎え、雲の頂上部分が西に広がる様子(カナトコ状の雲の広がり)が見られる。雲の底の部分の流れより、上層の大気の流れが速いため、雲の西への広がりは上層のみで、積乱雲に伴う強い降雨域はこんなに拡大はしていない。また、近傍には新たに発生した積乱雲が急速に発達している様子も見られる。
この日8月14日夕刻、関東平野は局所的に雷を伴った激しい雨が降ったところがあった。関東平野(赤色四角内)には、輪郭が明瞭で、雲域の西側が白く輝き、東側には雲の影が伸びている様子が見られ、背の高い活発な積乱雲があることを示している。 南西諸島方面に広がる雲の帯(青色四角内)のなかでは、積乱雲が発達衰弱を繰り返している様子が見られる。
高頻度の衛星画像で、関東平野に発達した積乱雲の盛衰を知ることができたが、この雲の下でどの様な現象が起こっていたかはわからない。衛星の観測にレーダー観測などを併用して現象がみえてくる。
関東地方の積乱雲の動向を衛星画像とレーダーエコー図を並べてみる。30分の変化を短冊状に切り出して示し、同時刻のレーダーエコー図を示した。衛星画像で見られる積乱雲の南西部の輪郭が明瞭な部分に対応して、降水強度が強い部分があり、北東方向に伸びる部分はあまり活発ではない。すなわち、衛星画像で見られる積乱雲の中で、激しい雨をもたらす部分は限られており、特に輪郭が明瞭な部分に着目する必要がある。この活発な積乱雲の西に粒状をした雲が伸びているが、今後発達の可能性もあるので、この部分についても留意する必要がある。
今回、気象庁が提供を始めた高頻度の画像資料は、日本付近を対象として2分30秒に一回観測するものである。この画像を見ると関東の南東部分と九州の北西部分でくびれた妙な形となっている。これは、日本列島を高頻度で観測するため、観測範囲を絞り込んだためである。日本列島全体が含まれるように、北半分と南半分を共に東西2000km、南北1000kmの矩形の範囲を観測したものを足し合わせており、北半分は北方4島までが含まれるよう東寄りの領域とし、南半分は小笠原諸島から与那国島までを含むよう西に広げた領域としている。北の部分が広がる形状は中の丸みのためで、衛星から見ると高緯度ほど小さく見えていることになる。
掲載されている画像は、「赤外」、「可視カラー合成」、「水蒸気」に加え、「雲頂強調」の4種類の画像である。「可視カラー合成」は可視光帯について3バンドの波長帯(青: 0.47µm, 緑: 0.51µm, 赤: 0.64µm)を観測してこれを合成したカラー画像が表示されている。「雲頂強調」の画像は、特殊な加工処理をした画像で、日中の領域は可視画像、夜間の領域は赤外画像を表示し、その上に雲頂高度が高い雲のある領域を色付けしたものである。詳細は省くが、背の高い雲を示すことは積乱雲の発達を検出することを目的としている。赤みを帯びた部分は雲頂高度の高い雲がある領域を示しており、その輪郭が明瞭なものほど積乱雲の最盛期の状態を示していると見て良い。一方、筋状に伸びる雲頂高度の高い部分は巻雲などの上層雲である。
太陽が高度を下げた夕方の画像例を示す。東シナ海西部は日中の領域にあるため、可視画像で表示されている。既に太陽高度が下がり画像は暗くなっている。この西側の日本付近はほとんどが赤外画像で表示されている。この画像で見ると、関東地方にかかる積乱雲は発達中であり、南西諸島周辺にも活発な積乱雲が見える。一方、東北地方に見られる青色で示されている部分は上層雲が主体の雲である。
ここでは、新たに提供が始まった高頻度の可視画像でどんな現象が見えるか追って見る。 8月14日17時から18時30分迄の1時間半を2分30秒間隔で観測した可視カラー合成画像である。先に示した雲頂強調画像はこの観測時間内の1枚である。
全体を見ると、太陽が次第に高度を下げていく時間帯であるため、東側部分から次第に暗くなっていく様子が見られ、特に、関東平野を見ると背の低い平坦な雲が先に見えなくなり、背の高い雲だけが捕えられている様子が見える。
画像の左上の中国東北区の部分(黄色四角内)を見て欲しい。白い雲が次第に東に広がっているが、この雲は巨大な積乱雲群で、雲域の東端には黒い部分が広がっている。これは背の高い雲の影が捕えられたもので、太陽の高度が下がって影が長くなっている様子も見られる。
次に、日本海中部(黄色楕円内)を見ていただきたい。ここは上空に寒気を持つ低気圧があり、この周辺で積乱雲が発達している。この低気圧はゆっくり東に移動しているが、低気圧を取り巻く大気の流れが反時計回りの循環をしていることがわかる。低気圧中心付近とその南西側では南東方向への雲の流れが見えるが、低気圧の北側では低い雲は東から西に向かい、高い雲は東から西に流れている様子が見られる。
沿海州(白色四角内)にある白く輝いた積乱雲は発達の最盛期を迎え、雲の頂上部分が西に広がる様子(カナトコ状の雲の広がり)が見られる。雲の底の部分の流れより、上層の大気の流れが速いため、雲の西への広がりは上層のみで、積乱雲に伴う強い降雨域はこんなに拡大はしていない。また、近傍には新たに発生した積乱雲が急速に発達している様子も見られる。
この日8月14日夕刻、関東平野は局所的に雷を伴った激しい雨が降ったところがあった。関東平野(赤色四角内)には、輪郭が明瞭で、雲域の西側が白く輝き、東側には雲の影が伸びている様子が見られ、背の高い活発な積乱雲があることを示している。 南西諸島方面に広がる雲の帯(青色四角内)のなかでは、積乱雲が発達衰弱を繰り返している様子が見られる。
高頻度の衛星画像で、関東平野に発達した積乱雲の盛衰を知ることができたが、この雲の下でどの様な現象が起こっていたかはわからない。衛星の観測にレーダー観測などを併用して現象がみえてくる。
関東地方の積乱雲の動向を衛星画像とレーダーエコー図を並べてみる。30分の変化を短冊状に切り出して示し、同時刻のレーダーエコー図を示した。衛星画像で見られる積乱雲の南西部の輪郭が明瞭な部分に対応して、降水強度が強い部分があり、北東方向に伸びる部分はあまり活発ではない。すなわち、衛星画像で見られる積乱雲の中で、激しい雨をもたらす部分は限られており、特に輪郭が明瞭な部分に着目する必要がある。この活発な積乱雲の西に粒状をした雲が伸びているが、今後発達の可能性もあるので、この部分についても留意する必要がある。
執筆者
気象庁OB
市澤成介