2016/01/25

1月18日の関東地方の雪は重かった

1月17日~18日にかけて、九州、四国、本州の南岸を進んだ低気圧の影響で、関東地方は17日夜から18日昼頃にかけて、雪のところが多くなり一部で大雪となった。一方、低気圧が近くを通過した房総半島から茨城県にかけては、50~90㎜に達する大雨となったところがあった。この雨と雪の境界に近い東京都区部では17日夜から降り出した雨が未明から「みぞれ」に変わり4時間ほど続き、最大6㎝の積雪を記録した(東京(大手町)の気象変化図参照)。

1月18日の関東地方の雪は重かった_1



各地の最深積雪の分布を見ると関東地方西部を中心に30㎝を超える大雪となった所があった。東京都や神奈川県の西部には積雪の観測値がないが、気温と降水量から雪が降っていたか推定することができる。4時の関東地方の気温分布を用いて雪の降っていた領域をみることにした。この時刻の東京(大手町)の気温は0.3℃で「みぞれ」であった。一般に気温が1℃前後以下になると「雪やみぞれ」となることが多いので、1℃の等温線が雨と雪の境界とし、図中に1℃線を赤線で示した。千葉県や茨城県以外は1℃以下の領域に入っていた。そして、雪が降っていたとみられる地域では南部を中心に1時間3㎜程度の降水量を記録していた。東京(大手町)で3時~4時までの1時間に3㎝積雪が増えているので、神奈川県や東京都西部でも1時間に3㎝前後の雪が積もっていたと推定できる。加えて、西部は気温が1℃以下の状態が都心部より長く続いており、秩父地方と同じような大雪となったと推測される。

1月18日の関東地方の雪は重かった_2


関東平野の積雪の状況が、翌日19日9時のひまわり8号が捉えた可視画像で見られた。大雪をもたらした低気圧は北海道南東海上に進み、日本海にも別の低気圧があるが、日本海西部は強い寒気の南下に伴って筋状構造の雪雲が一面に広がっている。今年初めて見られた日本海の冬を代表する雲パターンである。ここで注目して欲しいのは日本海ではなく関東地方である。画像に黄色点線で囲んだ部分が白くなっている。この時間には関東平野は雲一つない晴天域に入っており、積雪が無ければ、関東地方東部と同じように黒く見える部分に当たるが、前日の積雪が残っていたため、白く見えているのである。南部の神奈川県も白い部分が広範囲に広がっており、沿岸部を除いて大雪となったことが判る。

1月18日の関東地方の雪は重かった_3


この大雪によって、雪の重みによるビニールハウスの損傷、倒木や電線の切断等による停電の被害が出た。積雪による交通障害も発生し、歩行中の転倒などで負傷者の多く出た。このように着雪等による被害が出たのは湿った重たい雪が原因である。これを確認することにした。
関東地方の大雪被害と言えば、平成26年2月8日と14~15 日の2回の大雪が挙げられる。今回はこの2回の大雪と比較すると、積雪量は少なかったが、それでも倒木等の被害が出た。そこで、今回の大雪と平成26年2月の2回の大雪ではどのような違いがあったかを雪の重さで比較した。

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比較の方法は、降水量に対して積雪がどれだけあったかを見る方法(雪水比)を使った。1㎜の降水があった時、何㎝の積雪になったかを見るもので、数値が小さいほど重たく湿った雪と言える。対象とした観測点は東京(東京管区気象台)と埼玉県秩父(秩父特別地域気象観測所)の2点である。下表に、積雪があった時間帯全体の平均雪水比と、その時間帯内で時間当たりの最大の雪水比とその時の気温を表に示した。秩父も東京も対象の3回の中では、今回の雪が最も湿った重たい雪であったと言える。秩父で平成26年2月8日と今回を比べると、雪水比が0.6も違っていた。今回の秩父での最深積雪は34㎝であった。この今回の降雪が2年前の2月8日のような雪質であったとすると、なんと63㎝の積雪となる勘定で30㎝もの開きがでる。また、2月14日~15日の雪質であったとすると44㎝の積雪になる勘定である。それほどに今回の雪は重かったと言える。

ところで秩父特別地域気象観測所では自動観測装置により降水形態(雨粒か雪片かなど)を観測している。この記録を見ると、平成26年2月8日は降水のあった時間のほとんどを「雪」として観測しており、2月14~15日については、前半は「雪」として、後半については「みぞれ」として観測しており、全体としては「雪」の期間の方が長かった。そして今回は全期間「みぞれ」として観測していた。ただ、積雪が増加していた時間帯の秩父の気温は、0℃~0.2℃の範囲で、「みぞれ」というより「雪」が降っていたと見た方が良い。自動観測ゆえ後から確認することはできないが、かなり水分が多い雪であったことの結果と見ればよいだろう。

東京の状況を見ると、今回の雪水比は0.3と他の2例と比べかなり小さい値を示していた。東京管区気象台の観測記録(こちらは観測者の記録)を見ると、終始「みぞれ」であった。湿った雪というより、水分たっぷりの雨混じりの雪であったと言える。
以上から、今回は低気圧が房総半島をかすめるように通過したため、雨になってもいいような状況での大雪であったため、まれに見る重たい雪であったことがわかる。