2018/09/04
災害対策本部の「情報革命」運動の旗揚げ
⒈はじめに
先般、東京都大田区で情報業務についてのワークショップを開催した。
対象は、災害対策本部事務局の職員である。ハレックスにとって、地方自治体職員を対象とする防災教育の企画・実行は、初めての経験である。
今回のワークショップの狙いは、事務局職員の情報業務処理に関する能力開発である。
インテリジェンスプロセスの実行態勢の確立と業務の標準化を主要テーマとして2時間単位のワークショップ(講義とグループ単位の課題研究)を5回に亘って実施した。
今回実施したワークショップの特色は、二つある。
一つ目の特色は、ワークショップで取り上げたテーマにある。
今回のワークショップでは、災害対策本部で取り扱う情報の意味や目的を問う課題を取り上げた。地方自治体の防災訓練でこの種のテーマを取り上げること自体、画期的な試みであると認識している。
各ワークショップでは、災害対策本部の意思決定の仕事と情報との関連付けを行い、意思決定者の情報要求に応じて、必要情報(インフォメーション)を収集し、収集情報を処理し、処理された情報(インテリジェンス)を体系化して、そこから危機事態の全体像を想定し、その背後に見え隠れする問題を洞察することにより、意思決定者の情報要求に適うインテリジェンス成果物を作成するという、事務局情報班が行う一連の情報業務のプロセス及び各プロセス作業の実施方法の検討を行った。
二つ目の特色は、ワークショップの実施要領にある。
ハレックスと大田区は、このワークショップの企画・実行を共同作業で行った。
委託する側と委託される側が、職員教育の企画と実行を共同で行うということは、大変、珍しいことである。双方の担当者が、災害対策本部の情報業務についての問題意識と目指すべき目標を共有していたから実現できたことであると確信している。
約3か月を掛けて、課題認識を調整し、取り上げるべき課目と順序、各科目の教育内容と担当を決定した。
第1回目の導入教育は大田区(計画担当課長)が担当した。第2回目のインテリジェンヌプロセス(全般)の講義とグループ研究はハレックスが担当した。第3回目のインテリジェンスプロセスの各プロセス作業に関する講義とグループ研究は大田区が担当した。
第4回目のグループ研究の成果発表及び全般講評はハレックスが担当した。
第5回目のマニュアル整備に向けての検討会は大田区が担当した。
前に実施したワークショップの成果を踏まえて、次のワークショップを一貫した考え方でプランニングし実行するためには、双方の間で周到な意見調整が必要であった。
大田区で実施したワークショップは、取り上げた内容と云い、そのやり方と云い、画期的な教育演習であったと認識している。
⒉ワークショップの成果
ハレックスが大田区に提出した成果報告の中から、成果があった点に限定して紹介する。
(1)災害対策本部運営に必要な情報の提供と活用に関し、以下の点について理解を深めたこと
○災対本部の意思決定者と情報班の「情報」を媒体とした仕事の関係性情報班は、意思決定者(本部長室)から要求された情報を提供し、意思決定者は、提供された情報を活用して、状況判断(将来時点の状況を予測し、将来に行う行動を、今決断すること)を行うという仕事上の関係性
○災対本部が仕事をする上で、最も重要な情報は、内部情報ではなく、外の世界の情報(外部情報)であること
○外部情報の代表格は、住民の生命財産の安全を脅かす災害に関する情報であること
○外部情報は内部情報と違って、最も体系化の遅れている情報であること体系化の遅れにより、有効な情報システムの開発が遅れていること
○外部情報を体系化するための基本パターンは、「兆候表」と「地図情報」の作成であること
○兆候表は、これから収集する情報を体系化するための手段であり、地図情報は、収集した断片情報を体系化するための手段であるということ
○首都直下地震発生時、大田区では住民の生命財産の安全を脅かす災害について、いくつかのパターンが想定されるということ
○人的災害が時間的・空間的に発生拡大するパターンを解明することは、外部情報の体系化に役立ち、そのことにより、断片情報しかない場合でも、外部情報の推測が可能になり、全体像のイメージアップが容易になるとともに、情報収集の眼の付け所が、自ずと明らかになるということ
○インフォメーションとインテリジェンスの違いを認識できたこと
○組織が仕事を行う上で必要なものは、インテリジェンスであるということ
○意思決定者が情報組織に対し、明確な任務を付与する必要があるということ
何のために(目的)、何を(情報要求)、いつまでに、という任務を明示しなければ、情報組織の仕事は始まらないということ
(2)意思決定者が要求する情報を提供するための情報業務手順に関し、以下の点について理解を深めたこと
○意思決定者が求める情報(インテリジェンス)を作成し提供するための手順(インテリジェンスプロセス)は、情報班が仕事をするための道具であるということ
○インテリジェンスプロセスの業務処理手順を標準化し、マニュアルとして整備することの必要性
○マニュアルの使用に熟達する事が意思決定者の組織上の期待に応えるということ
(3)災害対策本部の情報組織の在り方に関し、以下の点について理解を深めたこと
○災害対策本部の情報の仕事は、事務局情報班単独でやれることではなく、多くの組織の協力で成り立っているということ
○本部の情報組織には、事務局情報班、各災対部の情報担当、特別出張所情報班、防災 区民組織情報班、現場の情報収集組織・要員、各関係機関の情報組織等があり、夫々の情報組織との間に協力関係を確立し、情報業務に関する指揮(指示)系統を確立することにより、災害対策本部の情報活動が組織的に実施できるということ
(4)情報収集活動に関し、以下の点について理解を深めたこと
○情報収集は、意図を持って集めるものであり、主体的な活動であり、待っているだけでは、必要な情報資料(インフォメーション)は入手できないこと
○情報組織の情報活動能力(インテリジェンスプロセスに関わる作業能力)には限りがあり期限内に必要な情報を完璧に収集することは不可能に近いこと
○このため、意思決定者は、重点を決めて情報収集させるため、自分が現在最も必要としている情報(EEI=essential element of information)を明示する必要があること
○EEIを分析し、収集項目、収集すべき事項というように、情報を噛み砕き、体系化することの必要性
○EEIに基づき、抜け・漏れ・重複を避け、効率的に収集活動を実施するために、情報収集計画を作成することの必要性
○情報収集計画の出来上がりイメージを認識したこと
○必要な情報を必要な時期に間に合うように入手するためには、収集組織に対し、情報収集任務を明示する必要があること
○情報収取任務は、EEI、収集項目、具体的に収集すべ事項、注意すべき場所と時期、報告のための統制事項等の中から、収集組織の地位に応じて、必要事項を選択して指示すること
(5)現場から本部事務局への情報の報告要領に関し、以下の点について理解を深めたこと
○現場で収集した断片情報を、クロノロジーを使って各組織を経由して本部へ報告する情報の流れは2本(緊急情報の流れと一般情報の流れ)あること
○夫々の流れについての各組織の取り扱い方法を、予め定めておく必要があること
○緊急情報の定義は事務局が行い、定義に基づき、入手した生情報が緊急情報に該当するか否かの判断の第一義的責任は、現場情報を収集した組織(防災区民組織等)にあること
○緊急と判断された情報は、入手の都度、個別に報告すること
○緊急情報以外の一般情報は、まとめて報告すること
各レベルの情報組織が断片情報を集約し、状況の診断に関する意見を添えて、定められた時期までに報告
○報告の手段としてクロノロジーを有効活用するため、使用ルールを確立する必要があること
(6)情報資料の処理に関し、以下の点について理解を深めたこと
○生情報に跳びついてはいけないということ
○現場から報告された生情報は、処理する必要があること
○情報処理は、分析者が適切な診断を行うために活用する情報を、事前に下処理するプロセスであること
○情報処理の基本的な流れは、以下の手順で行うこと
➊選別、➋記録、❸信頼性評価、❹正確性評価、❺情報としての意義の判定
○選別のためには、体系化した情報(エ項参照)を参考に、現場で発見すべき兆候として、予め、基準を明示する必要があること
(7)処理した断片情報(インテリジェンス)の活用に関し、以下の点について理解を深めたこと
○状況図の意義
状況図は、関係者が全体状況を俯瞰して一目で状況を把握できる手段であること
状況図は、関係者の状況認識を統一するために有効な手段であること
○分かり易い状況図を軽易に作成するためには、文字を使わない表現方法をルール化すること
○状況図の作成は職人技である。作成技能に熟達した要員を育成する必要があること
○状況を正しく診断する方法に熟達することの重要性処理という関門を通過した正しい情報(すべて断片情報)を集めて、推理力を働かせながら、状況を予想し、そこに潜む真の問題を洞察
⒊情報ワークショップの今後の展開方向
大田区で実施した情報業務ワークショップの手応えから、今後、地方自治体相手に、災害対策本部の情報革命運動を広げていきたいという構想を抱いている。
その趣意書は、以下の通りである。
Ⅰ 自治体・災害対策本部に共通する問題状況
●将来の災害危機を予測し、その対応行動を今決定するという習慣がない。このため、災対本部として「何を意志決定すべきか」について、前もって検討していない。
●情報の助けを借りて仕事(意思決定)をするという認識が希薄である。このため、本部内に、意思決定に必要な情報についての概念が形成されていない。
●組織の仕事に必要な情報を、自ら、主体的・能動的に収集するという習慣がない。
Ⅱ 情報革命の趣旨
情報革命は、組織トップが引き起こし、牽引する運動である。
情報革命が目指す目標は、災害時に組織トップが行う意思決定項目を明確にし、そのために必要な情報をタイムリーに提供できる組織能力を構築することである。
Ⅲ 情報革命運動が推進する4大改革
(1)意識改革
以下についての機会教育を徹底し、情報活動に関する意識改革に努める。
●意思決定は、組織がミッションを達成するための重要な仕事であり、情報は、意思決定を行うための必須の手段であることについての認識を深化することの重要性
●個々の意思決定について、必要な情報の概念形成を行い、組織内に周知徹底することの重要性
●形成された情報概念に適うデータを主体的・能動的に入手する態度と能力を強化することの重要性
●入手した様々なデータを概念化した情報レベルまでに高めるやり方を確立することの重要性
(2)情報業務改革
意思決定に必要な情報概念を提供するために、必要なデータを収集・処理・分析して、要求された情報概念を作成する情報業務のやり方を標準化する。
(3)組織改革
標準化した業務を効率的に遂行しうる情報組織を構築し、定期的に組織訓練を実施して、組織能力を不断に向上させる。
(4)情報システム改革
災害による不意打ちを防止できる早期警戒システム、或いは、データベースを使いこなして豊富なデータを情報概念に高めることができる情報処理システム等を開発導入する。
⒋終わりに
ハレックスができることは、情報革命運動の手助けである。
具体的には、以下の5項目に整理できる。
➊意識改革のための職員教育プログラムの作成及び実行の支援
➋主体的な情報業務を実施するためのSOP作成支援
❸情報組織の改編を支援
❹SOPに基づく本部訓練プログラムの作成及び実行の支援
❺早期警戒システム、情報処理システムの開発導入に関わる助言
今回大田区で実施した活動は、➋項のSOP作成支援がメインであった。
革命運動が、所期の目標に到達するためには、今後、機会を捉えて、支援活動の幅を広げて、その他のテーマに、逐次展開していかなくてはならないと認識している。
しかし、足元を見ると、我々の支援力は十分ではないことに気付かされる。
今後、情報革命運動を大きなうねりに成長させていくためには、我々自身も更なる努力を継続していかなければならないと深く認識している。
このためには、次のような中間目標があると考えている。
➊更に経験を重ね、経験則を蓄積すること
➋情報システム及び情報処理システムのモデルを完成すること
❸情報革命に賛同するシンパを増やすこと
❹我々自身の活動基盤を強化すること
以上
先般、東京都大田区で情報業務についてのワークショップを開催した。
対象は、災害対策本部事務局の職員である。ハレックスにとって、地方自治体職員を対象とする防災教育の企画・実行は、初めての経験である。
今回のワークショップの狙いは、事務局職員の情報業務処理に関する能力開発である。
インテリジェンスプロセスの実行態勢の確立と業務の標準化を主要テーマとして2時間単位のワークショップ(講義とグループ単位の課題研究)を5回に亘って実施した。
今回実施したワークショップの特色は、二つある。
一つ目の特色は、ワークショップで取り上げたテーマにある。
今回のワークショップでは、災害対策本部で取り扱う情報の意味や目的を問う課題を取り上げた。地方自治体の防災訓練でこの種のテーマを取り上げること自体、画期的な試みであると認識している。
各ワークショップでは、災害対策本部の意思決定の仕事と情報との関連付けを行い、意思決定者の情報要求に応じて、必要情報(インフォメーション)を収集し、収集情報を処理し、処理された情報(インテリジェンス)を体系化して、そこから危機事態の全体像を想定し、その背後に見え隠れする問題を洞察することにより、意思決定者の情報要求に適うインテリジェンス成果物を作成するという、事務局情報班が行う一連の情報業務のプロセス及び各プロセス作業の実施方法の検討を行った。
二つ目の特色は、ワークショップの実施要領にある。
ハレックスと大田区は、このワークショップの企画・実行を共同作業で行った。
委託する側と委託される側が、職員教育の企画と実行を共同で行うということは、大変、珍しいことである。双方の担当者が、災害対策本部の情報業務についての問題意識と目指すべき目標を共有していたから実現できたことであると確信している。
約3か月を掛けて、課題認識を調整し、取り上げるべき課目と順序、各科目の教育内容と担当を決定した。
第1回目の導入教育は大田区(計画担当課長)が担当した。第2回目のインテリジェンヌプロセス(全般)の講義とグループ研究はハレックスが担当した。第3回目のインテリジェンスプロセスの各プロセス作業に関する講義とグループ研究は大田区が担当した。
第4回目のグループ研究の成果発表及び全般講評はハレックスが担当した。
第5回目のマニュアル整備に向けての検討会は大田区が担当した。
前に実施したワークショップの成果を踏まえて、次のワークショップを一貫した考え方でプランニングし実行するためには、双方の間で周到な意見調整が必要であった。
大田区で実施したワークショップは、取り上げた内容と云い、そのやり方と云い、画期的な教育演習であったと認識している。
⒉ワークショップの成果
ハレックスが大田区に提出した成果報告の中から、成果があった点に限定して紹介する。
(1)災害対策本部運営に必要な情報の提供と活用に関し、以下の点について理解を深めたこと
○災対本部の意思決定者と情報班の「情報」を媒体とした仕事の関係性情報班は、意思決定者(本部長室)から要求された情報を提供し、意思決定者は、提供された情報を活用して、状況判断(将来時点の状況を予測し、将来に行う行動を、今決断すること)を行うという仕事上の関係性
○災対本部が仕事をする上で、最も重要な情報は、内部情報ではなく、外の世界の情報(外部情報)であること
○外部情報の代表格は、住民の生命財産の安全を脅かす災害に関する情報であること
○外部情報は内部情報と違って、最も体系化の遅れている情報であること体系化の遅れにより、有効な情報システムの開発が遅れていること
○外部情報を体系化するための基本パターンは、「兆候表」と「地図情報」の作成であること
○兆候表は、これから収集する情報を体系化するための手段であり、地図情報は、収集した断片情報を体系化するための手段であるということ
○首都直下地震発生時、大田区では住民の生命財産の安全を脅かす災害について、いくつかのパターンが想定されるということ
○人的災害が時間的・空間的に発生拡大するパターンを解明することは、外部情報の体系化に役立ち、そのことにより、断片情報しかない場合でも、外部情報の推測が可能になり、全体像のイメージアップが容易になるとともに、情報収集の眼の付け所が、自ずと明らかになるということ
○インフォメーションとインテリジェンスの違いを認識できたこと
○組織が仕事を行う上で必要なものは、インテリジェンスであるということ
○意思決定者が情報組織に対し、明確な任務を付与する必要があるということ
何のために(目的)、何を(情報要求)、いつまでに、という任務を明示しなければ、情報組織の仕事は始まらないということ
(2)意思決定者が要求する情報を提供するための情報業務手順に関し、以下の点について理解を深めたこと
○意思決定者が求める情報(インテリジェンス)を作成し提供するための手順(インテリジェンスプロセス)は、情報班が仕事をするための道具であるということ
○インテリジェンスプロセスの業務処理手順を標準化し、マニュアルとして整備することの必要性
○マニュアルの使用に熟達する事が意思決定者の組織上の期待に応えるということ
(3)災害対策本部の情報組織の在り方に関し、以下の点について理解を深めたこと
○災害対策本部の情報の仕事は、事務局情報班単独でやれることではなく、多くの組織の協力で成り立っているということ
○本部の情報組織には、事務局情報班、各災対部の情報担当、特別出張所情報班、防災 区民組織情報班、現場の情報収集組織・要員、各関係機関の情報組織等があり、夫々の情報組織との間に協力関係を確立し、情報業務に関する指揮(指示)系統を確立することにより、災害対策本部の情報活動が組織的に実施できるということ
(4)情報収集活動に関し、以下の点について理解を深めたこと
○情報収集は、意図を持って集めるものであり、主体的な活動であり、待っているだけでは、必要な情報資料(インフォメーション)は入手できないこと
○情報組織の情報活動能力(インテリジェンスプロセスに関わる作業能力)には限りがあり期限内に必要な情報を完璧に収集することは不可能に近いこと
○このため、意思決定者は、重点を決めて情報収集させるため、自分が現在最も必要としている情報(EEI=essential element of information)を明示する必要があること
○EEIを分析し、収集項目、収集すべき事項というように、情報を噛み砕き、体系化することの必要性
○EEIに基づき、抜け・漏れ・重複を避け、効率的に収集活動を実施するために、情報収集計画を作成することの必要性
○情報収集計画の出来上がりイメージを認識したこと
○必要な情報を必要な時期に間に合うように入手するためには、収集組織に対し、情報収集任務を明示する必要があること
○情報収取任務は、EEI、収集項目、具体的に収集すべ事項、注意すべき場所と時期、報告のための統制事項等の中から、収集組織の地位に応じて、必要事項を選択して指示すること
(5)現場から本部事務局への情報の報告要領に関し、以下の点について理解を深めたこと
○現場で収集した断片情報を、クロノロジーを使って各組織を経由して本部へ報告する情報の流れは2本(緊急情報の流れと一般情報の流れ)あること
○夫々の流れについての各組織の取り扱い方法を、予め定めておく必要があること
○緊急情報の定義は事務局が行い、定義に基づき、入手した生情報が緊急情報に該当するか否かの判断の第一義的責任は、現場情報を収集した組織(防災区民組織等)にあること
○緊急と判断された情報は、入手の都度、個別に報告すること
○緊急情報以外の一般情報は、まとめて報告すること
各レベルの情報組織が断片情報を集約し、状況の診断に関する意見を添えて、定められた時期までに報告
○報告の手段としてクロノロジーを有効活用するため、使用ルールを確立する必要があること
(6)情報資料の処理に関し、以下の点について理解を深めたこと
○生情報に跳びついてはいけないということ
○現場から報告された生情報は、処理する必要があること
○情報処理は、分析者が適切な診断を行うために活用する情報を、事前に下処理するプロセスであること
○情報処理の基本的な流れは、以下の手順で行うこと
➊選別、➋記録、❸信頼性評価、❹正確性評価、❺情報としての意義の判定
○選別のためには、体系化した情報(エ項参照)を参考に、現場で発見すべき兆候として、予め、基準を明示する必要があること
(7)処理した断片情報(インテリジェンス)の活用に関し、以下の点について理解を深めたこと
○状況図の意義
状況図は、関係者が全体状況を俯瞰して一目で状況を把握できる手段であること
状況図は、関係者の状況認識を統一するために有効な手段であること
○分かり易い状況図を軽易に作成するためには、文字を使わない表現方法をルール化すること
○状況図の作成は職人技である。作成技能に熟達した要員を育成する必要があること
○状況を正しく診断する方法に熟達することの重要性処理という関門を通過した正しい情報(すべて断片情報)を集めて、推理力を働かせながら、状況を予想し、そこに潜む真の問題を洞察
⒊情報ワークショップの今後の展開方向
大田区で実施した情報業務ワークショップの手応えから、今後、地方自治体相手に、災害対策本部の情報革命運動を広げていきたいという構想を抱いている。
その趣意書は、以下の通りである。
【情報革命運動趣意書】
Ⅰ 自治体・災害対策本部に共通する問題状況
●将来の災害危機を予測し、その対応行動を今決定するという習慣がない。このため、災対本部として「何を意志決定すべきか」について、前もって検討していない。
●情報の助けを借りて仕事(意思決定)をするという認識が希薄である。このため、本部内に、意思決定に必要な情報についての概念が形成されていない。
●組織の仕事に必要な情報を、自ら、主体的・能動的に収集するという習慣がない。
Ⅱ 情報革命の趣旨
情報革命は、組織トップが引き起こし、牽引する運動である。
情報革命が目指す目標は、災害時に組織トップが行う意思決定項目を明確にし、そのために必要な情報をタイムリーに提供できる組織能力を構築することである。
Ⅲ 情報革命運動が推進する4大改革
(1)意識改革
以下についての機会教育を徹底し、情報活動に関する意識改革に努める。
●意思決定は、組織がミッションを達成するための重要な仕事であり、情報は、意思決定を行うための必須の手段であることについての認識を深化することの重要性
●個々の意思決定について、必要な情報の概念形成を行い、組織内に周知徹底することの重要性
●形成された情報概念に適うデータを主体的・能動的に入手する態度と能力を強化することの重要性
●入手した様々なデータを概念化した情報レベルまでに高めるやり方を確立することの重要性
(2)情報業務改革
意思決定に必要な情報概念を提供するために、必要なデータを収集・処理・分析して、要求された情報概念を作成する情報業務のやり方を標準化する。
(3)組織改革
標準化した業務を効率的に遂行しうる情報組織を構築し、定期的に組織訓練を実施して、組織能力を不断に向上させる。
(4)情報システム改革
災害による不意打ちを防止できる早期警戒システム、或いは、データベースを使いこなして豊富なデータを情報概念に高めることができる情報処理システム等を開発導入する。
⒋終わりに
ハレックスができることは、情報革命運動の手助けである。
具体的には、以下の5項目に整理できる。
➊意識改革のための職員教育プログラムの作成及び実行の支援
➋主体的な情報業務を実施するためのSOP作成支援
❸情報組織の改編を支援
❹SOPに基づく本部訓練プログラムの作成及び実行の支援
❺早期警戒システム、情報処理システムの開発導入に関わる助言
今回大田区で実施した活動は、➋項のSOP作成支援がメインであった。
革命運動が、所期の目標に到達するためには、今後、機会を捉えて、支援活動の幅を広げて、その他のテーマに、逐次展開していかなくてはならないと認識している。
しかし、足元を見ると、我々の支援力は十分ではないことに気付かされる。
今後、情報革命運動を大きなうねりに成長させていくためには、我々自身も更なる努力を継続していかなければならないと深く認識している。
このためには、次のような中間目標があると考えている。
➊更に経験を重ね、経験則を蓄積すること
➋情報システム及び情報処理システムのモデルを完成すること
❸情報革命に賛同するシンパを増やすこと
❹我々自身の活動基盤を強化すること
以上
執筆者
株式会社ハレックス
顧問
清水明徳