2014/10/31
新潟県中越地震から10年(その2)
『日本災害情報学会・日本災害復興学会合同大会in長岡』は長岡市役所内にある『アオーレ長岡』というイベント会場で開催されました。この『アオーレ長岡』、2012年(平成24年)4月1日にオープンされた新しい施設なのですが、ここがなかなか面白い構造になっています。大きく分けて長岡市役所アオーレ長岡本庁舎等が入る東棟・西棟と、アリーナ棟の3棟から構成され、3棟に面して屋根付き広場「ナカドマ」が配されています。
施設の説明書によると、この『アオーレ長岡』は長岡市が①『新潟県中越地震』において耐震強度の不足が表面化した旧市庁舎の建て替え、②2006年(平成18年)に周辺4市町村を編入合併して市域が拡大し、加えて2007年(平成19年)には特例市へ移行されたことによる事務スペースの不足解消と市役所機能の中心市街地集約化、さらには③老朽化した旧厚生会館の後継施設整備の3つを柱に、「市民交流の拠点施設」として整備を進めたものらしいです。ここまでいろいろな施設が集約された市庁舎は、他に例を見ません(しかも、JR長岡駅前という抜群に便利なところに立地しています)。実によく考えられた素晴らしい施設だと思います。まさに『新潟県中越地震』からの復興のシンボルのような施設ですね。
さすがに日本災害情報学会と日本災害復興学会の合同大会です。『日本災害情報学会・日本災害復興学会合同大会in長岡』では例年以上に多くの発表がなされました。日本災害情報学会としての発表が98件(口頭発表69件、ポスターセッション29件)、日本災害復興学会としての発表が46件(口頭発表17件、ポスターセッション等29件)の合計144件という過去最大の大規模な学会発表になりました。
今年は2月に起きた関東甲信越地方の大雪に始まって、7月30日から8月26日にかけて台風12号、11号および前線と暖湿流により日本の広範囲で発生した「平成26年8月豪雨」(京都府福知山市に大規模な洪水被害をもたらしたほか、兵庫県丹波市や広島県広島市に大規模な土砂災害をもたらしました)、さらには9月27日に発生した木曽御嶽山の噴火…と、全国各地で激甚な自然災害に繰り返し襲われました。そうした中、自然の脅威の来襲による被害を出来る限り減らし、そして迅速な復旧・復興を進めるために、災害に関わる情報の重要性がこれまで以上にますます高まってきていると言えます。この144件と言う発表の件数もそのことを如実に物語っているように思います。私も2日間聴かせていただいたのですが、直接的、間接的に参考になるものが幾つかあったほか、大きな気付きも幾つかありました。
なかでも25日(土)に行われた大会記念の公開シンポジウムが良かったですね。この『新潟県中越地震から10年』を記念した大会記念公開シンポジウムは2部構成で、
第1部 『中越大震災と復興情報 ~震災時における情報電鉄の重要性~』
〔パネリスト〕
泉田 裕彦氏(新潟県知事)
長島 忠美氏(衆議院議員、復興副大臣、元・山古志村村長)
田中 淳氏(東京大学大学院教授/日本災害情報学会・副会長)
〔コーディネーター〕
山崎 登氏(NHK 解説主幹/日本災害情報学会・副会長)
と
第2部 『中越から東日本大震災へ ~持続可能な復興を目指して~』
〔パネリスト〕
森 民夫氏(長岡市長)
中林 一樹氏(明治大学大学院教授/日本災害復興学会・会長)
木村 拓郎氏(減災・復興支援機構/日本災害情報学会・理事)
〔コーディネーター〕
渡辺 隆氏(新潟日報社・専務取締役)
という2つのパネルディスカッションが開催されたのですが、これがどちらも実に素晴らしかったです。詳細は省かせていただきますが、実際に被災した時の被災地の首長さんを中心としたパネルディスカッションなので、実体験に基づいた生々しいご発言の数々で、マスコミの報道からではとても読み取れない“被災地の現実”というものがいろいろと見えてきて、この先、防災や復興を考える上で大いに参考になりました。
「このあたりは豪雪地帯で、冬は大雪に閉ざされて復興になにも手を付けられなかったことが、逆に一番よかったと思う。これからどのように復興していくかを真剣に考え、議論する時間がいっぱい取れたから…」なんて、実際にその現場を経験した人でないと言えることではありません。復興基金の使い方に関しても素晴らしく、さすがは“米百俵”の町・長岡らしいな…と思いました。
詰まるところ、防災も復興も、最後は“人(の思い)”しだいってことですね。繰り返しになりますが、さすがは幕末の風雲児・河井継之助と太平洋戦争時の聯合艦隊指令長官・山本五十六を生んだ“米百俵”の町、長岡です(^^)d
(“米百俵”については【追記1】で触れますね)
弊社ハレックスも今回、2つの発表を行いました。
口頭発表では
『気象防災アナリストによる自治体の防災活動支援(気象予報士にゆる防災専門人材の検討)』
と題して、全国各地に9,000名もいらっしゃる気象予報士有資格者の活用方法について論じさせていただきました。
日本災害情報学会2014年大会予稿集向け原稿案(気象防災アナリストによる自治体の防災活動支援)
また、ポスターセッションでは
『気象予報と連動した動的ジオフェンスとジオ・ナビゲーションの検討』
と題して、弊社のオリジナル気象情報サービス『HalexDream!』を活用した住民の安心・安全を実現するための先進的な仕組みの提案をさせていただきました。
2014災害情報学会原稿_気象予報と連動した動的ジオフェンスとジオ・ナビゲーション
どちらも聴いていただいた方からの反応も良く、多くの質問や意見を寄せていただきました。
防災に関しては「自助」「共助」「公助」という言葉があるように、防災は国や自治体と言った公的機関にすべてお任せすればいいってものではありません。産・官・学、すべてが手を取り合って、それぞれの立場での役割を結集させて取り組まないといけないことだと思っています。それくらい脅威としての自然が持つ破壊力は凄まじいものがりますから。
我々民間気象情報会社のミッション(存在意義)も、「人々の生命や財産を自然の脅威の来襲からお守りするための情報を提供することにある」と、私は思っています。弊社ハレックスもその産・官・学の枠組みの一翼を担わせていただくべく、今後も防災に向けての取り組みに積極的に関わっていきたいと思っています。
今回の『日本災害情報学会・日本災害復興学会合同大会in長岡』、とにかく大変有意義で素晴らしい大会でした。準備でご苦労をなさった学会及び大会事務局の皆さんに、感謝申し上げます。
【追記1】…『米百俵』とは
河井継之助が率いた北越戦争(戊辰戦争の一つ)で敗れた長岡藩は、7万4,000石から2万4,000石に減封され、実収入にして6割を失って財政が著しく窮乏。藩士達はその日の食にも苦慮する状態に陥りました。この窮状を見かねた長岡藩の支藩であった三根山藩から百俵の米が贈られることとなり、藩士達はこれで生活が少しは楽になるものと喜んだのですが、長岡藩の大参事・小林虎三郎は贈られた米を藩士にいっさい分け与えず、全て売却した上で学校設立の費用とすることを決定しました。
藩士達はこの通達に驚き反発して小林虎三郎のもとへと押しかけ大抗議をしたのですが、それに対して虎三郎は、毅然として「百俵の米も食えばたちまちなくなるが、教育にあてれば明日の一万、百万俵となる」と諭し、自らの政策を押しきりました。
この米百俵の売却金によって開校したのが「国漢学校」で、洋学局と医学局が設置されました。この学校は士族によって建てられた学校ではあるのですが、一定の学力に達した庶民の入学も許可されたことに大きな特徴があります。ここで学んだ1人がその後、聯合艦隊指令長官となった山本五十六でした。
この逸話は、現在の辛抱が将来利益となることを象徴する物語として、しばしば引用されています。最近では小泉純一郎元首相が、小泉内閣発足直後の国会での所信表明演説で引用して有名になりました。
企業経営においても同じことで、どんなに苦しくても将来を見越して堅実な投資を行っていかないといかないということですね。それと“人財”の育成。なんやかんや言っても、組織は“人”の集合体ですし、“人”をちゃんと育成していかないと、その組織の将来の発展はあり得ないということですね(^^)d
【追記2】
25日(土)の夕方から開催された懇親会にはこの日に行われたシンポジウムでパネリストでご登壇された長島忠美衆議院議員(現復興庁副大臣、元山古志村村長)や森民夫長岡市長のほか、サプライズゲストとして女優の大桃美代子さんがおみえになりました。
大桃美代子さんは『新潟県中越地震』の震源地に近い新潟県魚沼市の出身。たまたま実家に帰っている時に『新潟県中越地震』で被災しました。被災地にいたことから、急遽テレビの現地リポーターとして、被災直後の被災地各地の様子を伝えるということを行ったほか、復興フェーズにおいても頻繁に被災地各地を回り、各種支援活動をなさったそうです。現在は内閣府の「災害被害を軽減する国民運動サポーター」を務めていらっしゃいます。
復興を手伝ったこともあって、故郷新潟県への思いが強く、今も忙しい女優活動の合間を縫って毎週2回ほど故郷魚沼市に戻り、地元の人々に混じって農業(稲作)に精を出しておられるそうです。素晴らしい!
【追記3】
この日、長岡市役所(アオーレ長岡)前の屋根付き広場「ナカドマ」では、『新潟県中越地震』から10年ということで、復興を祝うイベントが賑やかに行われていました。また、『日本災害情報学会・日本災害復興学会合同大会in長岡』の懇親会場でも、地元長岡の若手農業従事者の皆さんが、自分達が栽培した地元の野菜を販売していました。
彼等の年齢から想像するに、彼等のほとんどは『新潟県中越地震』の後から農業を始めた(継いだ)であろう人達ばかりです。訊くと、復興支援のボランティアで東京からやってきて農業を手伝っているうちに、こちらに住み着いて、本格的に農業を始めたという若者もいらっしゃいました。
その若手農業従事者の若者達がやけに元気が(ノリが)いいので、自宅へのお土産にその自慢の野菜をいっぱい買って帰りました。どういうわけか芋類が多くなってしまい、さすがにちょっと重かったですけど(^^;
こういう元気な若者達が地場産業の柱である農業に携わってくれているということは、復興が順調に進んでいるという確かな証拠です。農業は蓄えの利く“持続可能型”の産業の代表ですから。復興も“持続可能型”であるべき…と、この日のシンポジウムでも、話に出ましたし(^^)d 弊社は防災だけでなく、農業向け気象情報提供にも力を入れているということもあり、こういう農業に従事する元気な若者達の姿を見ると、ついつい応援したくなります。「これは俺が作りました! これを作ったのは彼です!」…なぁ~んて言われちゃうと、ついつい買ってしまいます。「農作物は直接クチに入れるものだけに、生産者の顔が見えることが大事だ!」…とは、これからの農業を考えるにあたってよく言われることですが、まさにそうですね。それにしても、みんな商売が上手いは(笑)(^^;
私がそんな若者達と楽しそうに農業談義のようなことをやっていると、近くを通りかかった森民夫長岡市長が「お買い上げ、ありがとうございます。長岡の名産品をもっといっぱい買って帰ってください。ホレ、これも…」と声をかけてくださいました(笑)
そうそう、森市長によると、現在、長岡市内を歩くと、他の地方都市では見られないくらい多くの外国人(特に欧米人)の姿を見掛けるのですが、そのほとんどは山古志地区特産の錦鯉を買い付けに来ているバイヤーさんなんだとか。その地域のコアとなる絶対的な特産品を持っていることの意味って大きいですね。震災からの復興においても、この特産品の存在が、思っている以上に大きな意味を持ったようです。
【追記4】
日本災害情報学会では昨年度も弊社ハレックスは2件、発表をさせていただきました。
せっかくですので、その発表論文を以下に載せておきます。
頻発する気象災害に対して民間気象会社が担うべき役割と次世代防災気象情報サービスの在り方
地震発生直後の速やかな初動体制構築支援
気象庁降水短時間予報およびナウキャスト情報の鉄道等交通インフラ向け気象災害対策への活用事例(モノクロ)
この日本災害情報学会の学会大会、来年度は同時期に山梨県の甲府市で開催されるそうです。山梨県は今年の冬に記録的な大雪が降って、大変なことになっちゃいましたからねぇ~。震災の被災地で開催された今年度の大会とは、また違った感じの大会になるのではないかと、今から期待しています。
施設の説明書によると、この『アオーレ長岡』は長岡市が①『新潟県中越地震』において耐震強度の不足が表面化した旧市庁舎の建て替え、②2006年(平成18年)に周辺4市町村を編入合併して市域が拡大し、加えて2007年(平成19年)には特例市へ移行されたことによる事務スペースの不足解消と市役所機能の中心市街地集約化、さらには③老朽化した旧厚生会館の後継施設整備の3つを柱に、「市民交流の拠点施設」として整備を進めたものらしいです。ここまでいろいろな施設が集約された市庁舎は、他に例を見ません(しかも、JR長岡駅前という抜群に便利なところに立地しています)。実によく考えられた素晴らしい施設だと思います。まさに『新潟県中越地震』からの復興のシンボルのような施設ですね。
さすがに日本災害情報学会と日本災害復興学会の合同大会です。『日本災害情報学会・日本災害復興学会合同大会in長岡』では例年以上に多くの発表がなされました。日本災害情報学会としての発表が98件(口頭発表69件、ポスターセッション29件)、日本災害復興学会としての発表が46件(口頭発表17件、ポスターセッション等29件)の合計144件という過去最大の大規模な学会発表になりました。
今年は2月に起きた関東甲信越地方の大雪に始まって、7月30日から8月26日にかけて台風12号、11号および前線と暖湿流により日本の広範囲で発生した「平成26年8月豪雨」(京都府福知山市に大規模な洪水被害をもたらしたほか、兵庫県丹波市や広島県広島市に大規模な土砂災害をもたらしました)、さらには9月27日に発生した木曽御嶽山の噴火…と、全国各地で激甚な自然災害に繰り返し襲われました。そうした中、自然の脅威の来襲による被害を出来る限り減らし、そして迅速な復旧・復興を進めるために、災害に関わる情報の重要性がこれまで以上にますます高まってきていると言えます。この144件と言う発表の件数もそのことを如実に物語っているように思います。私も2日間聴かせていただいたのですが、直接的、間接的に参考になるものが幾つかあったほか、大きな気付きも幾つかありました。
なかでも25日(土)に行われた大会記念の公開シンポジウムが良かったですね。この『新潟県中越地震から10年』を記念した大会記念公開シンポジウムは2部構成で、
第1部 『中越大震災と復興情報 ~震災時における情報電鉄の重要性~』
〔パネリスト〕
泉田 裕彦氏(新潟県知事)
長島 忠美氏(衆議院議員、復興副大臣、元・山古志村村長)
田中 淳氏(東京大学大学院教授/日本災害情報学会・副会長)
〔コーディネーター〕
山崎 登氏(NHK 解説主幹/日本災害情報学会・副会長)
と
第2部 『中越から東日本大震災へ ~持続可能な復興を目指して~』
〔パネリスト〕
森 民夫氏(長岡市長)
中林 一樹氏(明治大学大学院教授/日本災害復興学会・会長)
木村 拓郎氏(減災・復興支援機構/日本災害情報学会・理事)
〔コーディネーター〕
渡辺 隆氏(新潟日報社・専務取締役)
という2つのパネルディスカッションが開催されたのですが、これがどちらも実に素晴らしかったです。詳細は省かせていただきますが、実際に被災した時の被災地の首長さんを中心としたパネルディスカッションなので、実体験に基づいた生々しいご発言の数々で、マスコミの報道からではとても読み取れない“被災地の現実”というものがいろいろと見えてきて、この先、防災や復興を考える上で大いに参考になりました。
「このあたりは豪雪地帯で、冬は大雪に閉ざされて復興になにも手を付けられなかったことが、逆に一番よかったと思う。これからどのように復興していくかを真剣に考え、議論する時間がいっぱい取れたから…」なんて、実際にその現場を経験した人でないと言えることではありません。復興基金の使い方に関しても素晴らしく、さすがは“米百俵”の町・長岡らしいな…と思いました。
詰まるところ、防災も復興も、最後は“人(の思い)”しだいってことですね。繰り返しになりますが、さすがは幕末の風雲児・河井継之助と太平洋戦争時の聯合艦隊指令長官・山本五十六を生んだ“米百俵”の町、長岡です(^^)d
(“米百俵”については【追記1】で触れますね)
弊社ハレックスも今回、2つの発表を行いました。
口頭発表では
『気象防災アナリストによる自治体の防災活動支援(気象予報士にゆる防災専門人材の検討)』
と題して、全国各地に9,000名もいらっしゃる気象予報士有資格者の活用方法について論じさせていただきました。
日本災害情報学会2014年大会予稿集向け原稿案(気象防災アナリストによる自治体の防災活動支援)
また、ポスターセッションでは
『気象予報と連動した動的ジオフェンスとジオ・ナビゲーションの検討』
と題して、弊社のオリジナル気象情報サービス『HalexDream!』を活用した住民の安心・安全を実現するための先進的な仕組みの提案をさせていただきました。
2014災害情報学会原稿_気象予報と連動した動的ジオフェンスとジオ・ナビゲーション
どちらも聴いていただいた方からの反応も良く、多くの質問や意見を寄せていただきました。
防災に関しては「自助」「共助」「公助」という言葉があるように、防災は国や自治体と言った公的機関にすべてお任せすればいいってものではありません。産・官・学、すべてが手を取り合って、それぞれの立場での役割を結集させて取り組まないといけないことだと思っています。それくらい脅威としての自然が持つ破壊力は凄まじいものがりますから。
我々民間気象情報会社のミッション(存在意義)も、「人々の生命や財産を自然の脅威の来襲からお守りするための情報を提供することにある」と、私は思っています。弊社ハレックスもその産・官・学の枠組みの一翼を担わせていただくべく、今後も防災に向けての取り組みに積極的に関わっていきたいと思っています。
今回の『日本災害情報学会・日本災害復興学会合同大会in長岡』、とにかく大変有意義で素晴らしい大会でした。準備でご苦労をなさった学会及び大会事務局の皆さんに、感謝申し上げます。
【追記1】…『米百俵』とは
河井継之助が率いた北越戦争(戊辰戦争の一つ)で敗れた長岡藩は、7万4,000石から2万4,000石に減封され、実収入にして6割を失って財政が著しく窮乏。藩士達はその日の食にも苦慮する状態に陥りました。この窮状を見かねた長岡藩の支藩であった三根山藩から百俵の米が贈られることとなり、藩士達はこれで生活が少しは楽になるものと喜んだのですが、長岡藩の大参事・小林虎三郎は贈られた米を藩士にいっさい分け与えず、全て売却した上で学校設立の費用とすることを決定しました。
藩士達はこの通達に驚き反発して小林虎三郎のもとへと押しかけ大抗議をしたのですが、それに対して虎三郎は、毅然として「百俵の米も食えばたちまちなくなるが、教育にあてれば明日の一万、百万俵となる」と諭し、自らの政策を押しきりました。
この米百俵の売却金によって開校したのが「国漢学校」で、洋学局と医学局が設置されました。この学校は士族によって建てられた学校ではあるのですが、一定の学力に達した庶民の入学も許可されたことに大きな特徴があります。ここで学んだ1人がその後、聯合艦隊指令長官となった山本五十六でした。
この逸話は、現在の辛抱が将来利益となることを象徴する物語として、しばしば引用されています。最近では小泉純一郎元首相が、小泉内閣発足直後の国会での所信表明演説で引用して有名になりました。
企業経営においても同じことで、どんなに苦しくても将来を見越して堅実な投資を行っていかないといかないということですね。それと“人財”の育成。なんやかんや言っても、組織は“人”の集合体ですし、“人”をちゃんと育成していかないと、その組織の将来の発展はあり得ないということですね(^^)d
【追記2】
25日(土)の夕方から開催された懇親会にはこの日に行われたシンポジウムでパネリストでご登壇された長島忠美衆議院議員(現復興庁副大臣、元山古志村村長)や森民夫長岡市長のほか、サプライズゲストとして女優の大桃美代子さんがおみえになりました。
大桃美代子さんは『新潟県中越地震』の震源地に近い新潟県魚沼市の出身。たまたま実家に帰っている時に『新潟県中越地震』で被災しました。被災地にいたことから、急遽テレビの現地リポーターとして、被災直後の被災地各地の様子を伝えるということを行ったほか、復興フェーズにおいても頻繁に被災地各地を回り、各種支援活動をなさったそうです。現在は内閣府の「災害被害を軽減する国民運動サポーター」を務めていらっしゃいます。
復興を手伝ったこともあって、故郷新潟県への思いが強く、今も忙しい女優活動の合間を縫って毎週2回ほど故郷魚沼市に戻り、地元の人々に混じって農業(稲作)に精を出しておられるそうです。素晴らしい!
【追記3】
この日、長岡市役所(アオーレ長岡)前の屋根付き広場「ナカドマ」では、『新潟県中越地震』から10年ということで、復興を祝うイベントが賑やかに行われていました。また、『日本災害情報学会・日本災害復興学会合同大会in長岡』の懇親会場でも、地元長岡の若手農業従事者の皆さんが、自分達が栽培した地元の野菜を販売していました。
彼等の年齢から想像するに、彼等のほとんどは『新潟県中越地震』の後から農業を始めた(継いだ)であろう人達ばかりです。訊くと、復興支援のボランティアで東京からやってきて農業を手伝っているうちに、こちらに住み着いて、本格的に農業を始めたという若者もいらっしゃいました。
その若手農業従事者の若者達がやけに元気が(ノリが)いいので、自宅へのお土産にその自慢の野菜をいっぱい買って帰りました。どういうわけか芋類が多くなってしまい、さすがにちょっと重かったですけど(^^;
こういう元気な若者達が地場産業の柱である農業に携わってくれているということは、復興が順調に進んでいるという確かな証拠です。農業は蓄えの利く“持続可能型”の産業の代表ですから。復興も“持続可能型”であるべき…と、この日のシンポジウムでも、話に出ましたし(^^)d 弊社は防災だけでなく、農業向け気象情報提供にも力を入れているということもあり、こういう農業に従事する元気な若者達の姿を見ると、ついつい応援したくなります。「これは俺が作りました! これを作ったのは彼です!」…なぁ~んて言われちゃうと、ついつい買ってしまいます。「農作物は直接クチに入れるものだけに、生産者の顔が見えることが大事だ!」…とは、これからの農業を考えるにあたってよく言われることですが、まさにそうですね。それにしても、みんな商売が上手いは(笑)(^^;
私がそんな若者達と楽しそうに農業談義のようなことをやっていると、近くを通りかかった森民夫長岡市長が「お買い上げ、ありがとうございます。長岡の名産品をもっといっぱい買って帰ってください。ホレ、これも…」と声をかけてくださいました(笑)
そうそう、森市長によると、現在、長岡市内を歩くと、他の地方都市では見られないくらい多くの外国人(特に欧米人)の姿を見掛けるのですが、そのほとんどは山古志地区特産の錦鯉を買い付けに来ているバイヤーさんなんだとか。その地域のコアとなる絶対的な特産品を持っていることの意味って大きいですね。震災からの復興においても、この特産品の存在が、思っている以上に大きな意味を持ったようです。
【追記4】
日本災害情報学会では昨年度も弊社ハレックスは2件、発表をさせていただきました。
せっかくですので、その発表論文を以下に載せておきます。
頻発する気象災害に対して民間気象会社が担うべき役割と次世代防災気象情報サービスの在り方
地震発生直後の速やかな初動体制構築支援
気象庁降水短時間予報およびナウキャスト情報の鉄道等交通インフラ向け気象災害対策への活用事例(モノクロ)
この日本災害情報学会の学会大会、来年度は同時期に山梨県の甲府市で開催されるそうです。山梨県は今年の冬に記録的な大雪が降って、大変なことになっちゃいましたからねぇ~。震災の被災地で開催された今年度の大会とは、また違った感じの大会になるのではないかと、今から期待しています。
執筆者
株式会社ハレックス
前代表取締役社長
越智正昭
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