2014/11/19
巨大災害 ~MEGA DISASTER~ 地球大変動の衝撃(日本に迫る脅威: 激化する豪雨)
地球規模の視点から自然災害に迫るNHKの特集番組NHKスペシャル『巨大災害 ~MEGA DISASTER~地球大変動の衝撃』。8月30日から4回にわたって放送された「第1集 異常気象(“暴走”する大気と海の大循環)」、「第2集 スーパー台風(“海の異変”の最悪シナリオ)」、「第3集 巨大地震(見えてきた脅威のメカニズム)」、「第4集 火山大噴火(迫りくる地球規模の異変)」に引き続いて、11月15日(土)の午後9時00分から9時58分にその続きの新しいシリーズの開始ともとれる番組が放送されました。
題名が『巨大災害 ~MEGA DISASTER~ 地球大変動の衝撃(日本に迫る脅威: 激化する豪雨)』(^^)d
今年、西日本の太平洋側ではところによっては平年直の3倍以上と観測史上最多の雨が降ったのをはじめ、全国的にも記録的な大雨によって、土砂災害や河川の氾濫による洪水、都市部の内水氾濫等の自然災害が相次いで発生しました。
特に、今も記憶に新しいのが、今年8月20日に広島市で発生して74人もの尊い命を奪った局地的な集中豪雨による大規模な土砂災害。この災害は大都市の市内中心部から程近い住宅地で起きた災害だけに、全国に大きな衝撃を与えました。もともと面積の狭い島国である日本においては都市部に平地が決定的に少なく、都市部に流入する人口を受け入れるため無理に山を切り開いて宅地を造成したわけで、被災地広島市に似た場所は、日本全国各地で幾つも存在しますからね。
8月から9月というNHKスペシャル『巨大災害 ~MEGA DISASTER~ 地球大変動の衝撃』の第1集から第4集が放送されたその時期にこうした集中豪雨による河川の氾濫や土砂災害といった自然災害が多発したことから、その続編として「日本に迫る脅威: 激 化する豪雨」が制作されたのは、必然のことのように思われます。
今回の番組も前の4回のシリーズと同様、非常によく出来た番組でした。最新の研究から明らかになってきた、日本列島に流れ込んだ大量の水蒸気(暖湿気)が、いかにして災害をもたらすような局地的な集中豪雨を降らせることに結び付くのか…といったメカニズムをCG(コンピュータグラフィックス)を駆使した説明で分かりやすく解説していました。
私が言うまでもないことですが、私達が住む日本という国は世界中見回してみても極めて特殊なところであると言うことができます。
まず、特徴的なのが“地形”です。日本は北回帰線の直近の北緯25度から北緯45度という亜熱帯から温帯、さらには亜寒帯と呼ばれる中緯度地帯に位置していて、周囲をグルッと海に囲まれた南北に細長い島々から成る列島国です。日本列島の近海では暖流である黒潮(日本海流)と対馬海流、寒流である親潮(千島海流)、リマン海流がぶつかり合っています。
陸地の7割は山岳地帯で、平野の面積は僅か1割に過ぎません。その平野はいずれも沖積平野で、水捌けが悪く、雨が少しでも降れば水浸しになるような土地ばかりです。国土の7割が山岳地帯ということで、河川の勾配は急で、山に降った雨は一気に洪水となって海に流れ去り、日照りが少しでも続けば今度は水不足に悩まされます。
アジア・モンスーン気候帯に位置し、季節風(モンスーン)の影響を受け四季の変化がはっきりしているものの、全般的には(熱しにくく冷めにくい液体の海に囲まれた)海洋性気候のため、大陸の同緯度のところと比較しても冬の寒さはそれほど厳しくなく、総じて温和な気候と言えます。
冬季はシベリア高気圧が優勢となり北西からの季節風が吹き、その季節風の通り道である日本海では、暖流である対馬海流から大量の水蒸気が蒸発するため、その水蒸気に大陸からの冷たく乾いた寒気がぶつかり大量の雪を降らせます。そのため、日本海側を中心に国土の約52%が世界でも有数の豪雪地帯になっています。一方、太平洋側では空気が乾燥した晴天の日が多いのが特徴です。
夏季は、北太平洋高気圧の勢力が優勢となり、高温多湿の南東からの季節風が吹き、全国的に非常に蒸し暑い日が続きます。また、この時期は日本列島上空が偏西風の通り道になることから、台風の来襲が非常に多いという特徴があります。
また、日本海側での冬季の降雪、6・7月(沖縄奄美地方は5・6月)に前線が停滞して起こる梅雨、夏季から秋季にかけて南方の太平洋上から接近・上陸してくる台風等々により、年間降水量は各地で約1,700mmにものぼり、世界の中でも比較的降水量の多い地域となっています。
さらに、アジア・モンスーン気候帯の北限に位置する日本列島は、大陸のシベリア高気圧と南からの太平洋高気圧の影響で、北からの寒気と南からの暖気が列島付近の上空でぶつかりあうことから、大気の状態が不安定となり前線が発生しやすく、このため、日本列島の気象は一年中休むことなく、日々絶えず激しく変化をし続けていると言えます。
しかも、日本列島付近では地球の表面を覆う大きな大陸プレートが幾つも境界面を接しています。このため世界で発生する大地震の約20%はこの日本列島付近で発生し、活火山の約10%が日本列島とその周辺に位置しています。
歴史を振り返ってみると、梅雨の大雨や台風の来襲等により、日本では毎年のように多くの犠牲者を出すなどの大きな被害を受けていて、また、ほぼ1世紀の間に5回~10回は1,000人以上の死者を出すような大規模な地震に襲われています。このように日本列島に住む我々日本人は、太古の昔からこの激変する気象と、突然襲ってくる理不尽な地震や台風、大雨等という自然環境を受け入れて暮らしてきました。
日本列島の気象は一年中休むことなく、日々絶えず激しく変化をし続けている…と書きましたが、その変化がここのところこれまで以上に極端になってきているのは確かなようだ…と思っています。
その極端に激しくなった気象の変化ことを、一般に“異常気象”などと呼んでいますが、私はそもそも“異常気象”という言葉自体がおかしいのではないか…と、常々思っています。“異常”の定義をどう設定するかにかかってくるとは思いますが、そもそも“気象は異常なもの”なのです。“異常”の定義を“これまでの自分達の経験からでは予想しがたいもの”とするならば、人間1人1人の人生なんて長くて100年。また、今に残っている正確な気象の観測データに関しても、日本ですら最近の100年ほどのデータに過ぎません。100年なんて何十億年という地球の歴史からするとほんの一瞬のことです。しかも、我々人間社会を取り囲む自然の様々なメカニズムには、まだまだ人類がいくら叡智を集めても解明できていないことがたくさんたくさん残っています。なので、気象はそもそもが人間の想像の域を遥かに超えた“異常”なものですから。
自然は常に人智が及ばないものであると思って、“畏敬の念”をもって接しないといけない!…と常々私は思っています。“自然(気象)はそもそもが異常なものだ”…と、その“異常性”を受け入れた上で、我々人類はその異常な気象の変化から身を守るために何をしなくてはいけないのか、あるいは、何に注意を払わないといけないのかを考え、そのための仕組みを組み上げ、具体的な行動を起こしていくことこそが、今の時代、求められているだと思っています。「異常だ!異常だ!」…と騒いでばかりいても、何も大きくは変わりません。
「異常気象」という言葉には、「これは異常気象なんだから、仕方ないじゃん!」…という責任逃れの無責任感や、諦め感のようなものが言葉の意味として込められている感じがして、私は嫌いです。これは“ゲリラ豪雨”という言葉も同じで、私はこのどちらも極力使わないようにしています(使う時は「俗に言う…」という言葉を頭に付けて言うようにしています)。気象に関わる人間が、異常気象やゲリラ豪雨等という言葉を軽々しく言っちゃあ、おしまいです(^^)d 言う時は「自分達はお手上げです」と、自然に対する敗北 を認めた時(頭を丸める時)です。少なくとも、我々はそうした人智を超えた(異常な)自然と真っ正面から向き合いたい…と私は思っています。
このあたり、ベースにあるのは“理学”的視点か、“工学”的視点であるかの差であると思っています。“理学”的視点からは“異常”、すなわち予想の範囲外であっても、“工学”的視点からはそれでも安心・安全を守らなくてはならないということで、なんら変わりませんから、簡単に敗北するわけにはいきませんからね(^^)d 私は、そして、弊社ハレックスはあくまでも そのスタンスを貫きたいと思っています。
このNHKスペシャル『巨大災害 ~MEGA DISASTER~ 地球大変動の衝撃(日本に迫る脅威:激化する豪雨)』の放送があった3日前の11月12日、改正土砂災害防止法が参議院本会議で可決・成立しました。この土砂災害防止法は、15年前の1999年に広島市などで31人が死亡した土砂災害をきっかけに制定され、2001年に施行されました。都道府県が基礎調査を実施した上で、土砂災害の恐れがある警戒区域や特別警戒区域を指定することや、警戒区域では避難体制作りを行うことが義務付けられ、また、特別警戒区域では宅地開発の規制が義務付けられました。
それが、先日15年ぶりに改正されたわけです。そのきっかけとなったのはまたも広島市で、今度は15年前の2倍以上の74人がお亡くなりになったわけで、これまでの土砂災害防止法ではまだまだダメだ…ということが明らかになった上でのことですから、当然のことです。
今回の改正土砂災害防止法では8月の広島市の大規模土砂災害の教訓を踏まえて、土砂災害の危険性について、都道府県がより早い段階で住民に伝えるように義務付けたのが最大の柱になっています。
「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案」について (国土交通省 水管理・国土保全局)
この改正土砂災害防止法制定を受けて、国土交通省ではこれまでの土砂災害防止法で義務付けられていた警戒区域や特別警戒区域の指定に先立つ基礎調査を今後5年程度で終えるように全ての都道府県に求めるとしています。この基礎調査では地形や地質を現地で調べ、予想される災害の影響範囲を詳細に割り出すことを目的としています。
これが出来上がると、都市の脆弱性が詳しい精度で明らかになるため、次に考えないといけなくなるのは、その脆弱性に関する情報を活用した“災い”を“害”にしないようにするための仕組みの構築ということになります。
そこにはより詳細な気象予測情報の活用というものが不可欠となるため、我々民間気象情報会社の活躍の場(期待される場面)が出てくると私は考えています。
このことを、先月、新潟県長岡市で開催された日本災害情報学会の場で発表させていただきました。
日本災害情報学会2014年大会予稿集向け原稿案(気象防災アナリストによる自治体の防災活動支援)
国連の関係機関であるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、今後地球温暖化が進行することで、今後ますます気候変動は激化していくと指摘しています。すなわち、これまで「異常だ、異常だ」と言ってきたことが単純に“異常”ではなく、“恒常化”“日常化”していくことだって十分に考えられます。
そういう避けようのない自然の変化に対して、私達はどのように備えなくてはならないのか、それぞれがそれぞれの立場から知恵を出しあって、具体的な仕組み作りや行動を起こすよう真剣に考えないといけない時期が来ている、それも待ったなし!で……と思います(^^)d
NHKスペシャル『巨大災害 ~MEGA DISASTER~ 地球大変動の衝撃(日本に迫る脅威: 激化する豪雨)』、いろいろと考えさせていただける非常に興味深い番組でした。残念ながら見逃された方は、『NHKオンデマンド(有料)』で是非ご覧ください(^^)d
NHKオンデマンド
題名が『巨大災害 ~MEGA DISASTER~ 地球大変動の衝撃(日本に迫る脅威: 激化する豪雨)』(^^)d
今年、西日本の太平洋側ではところによっては平年直の3倍以上と観測史上最多の雨が降ったのをはじめ、全国的にも記録的な大雨によって、土砂災害や河川の氾濫による洪水、都市部の内水氾濫等の自然災害が相次いで発生しました。
特に、今も記憶に新しいのが、今年8月20日に広島市で発生して74人もの尊い命を奪った局地的な集中豪雨による大規模な土砂災害。この災害は大都市の市内中心部から程近い住宅地で起きた災害だけに、全国に大きな衝撃を与えました。もともと面積の狭い島国である日本においては都市部に平地が決定的に少なく、都市部に流入する人口を受け入れるため無理に山を切り開いて宅地を造成したわけで、被災地広島市に似た場所は、日本全国各地で幾つも存在しますからね。
8月から9月というNHKスペシャル『巨大災害 ~MEGA DISASTER~ 地球大変動の衝撃』の第1集から第4集が放送されたその時期にこうした集中豪雨による河川の氾濫や土砂災害といった自然災害が多発したことから、その続編として「日本に迫る脅威: 激 化する豪雨」が制作されたのは、必然のことのように思われます。
今回の番組も前の4回のシリーズと同様、非常によく出来た番組でした。最新の研究から明らかになってきた、日本列島に流れ込んだ大量の水蒸気(暖湿気)が、いかにして災害をもたらすような局地的な集中豪雨を降らせることに結び付くのか…といったメカニズムをCG(コンピュータグラフィックス)を駆使した説明で分かりやすく解説していました。
私が言うまでもないことですが、私達が住む日本という国は世界中見回してみても極めて特殊なところであると言うことができます。
まず、特徴的なのが“地形”です。日本は北回帰線の直近の北緯25度から北緯45度という亜熱帯から温帯、さらには亜寒帯と呼ばれる中緯度地帯に位置していて、周囲をグルッと海に囲まれた南北に細長い島々から成る列島国です。日本列島の近海では暖流である黒潮(日本海流)と対馬海流、寒流である親潮(千島海流)、リマン海流がぶつかり合っています。
陸地の7割は山岳地帯で、平野の面積は僅か1割に過ぎません。その平野はいずれも沖積平野で、水捌けが悪く、雨が少しでも降れば水浸しになるような土地ばかりです。国土の7割が山岳地帯ということで、河川の勾配は急で、山に降った雨は一気に洪水となって海に流れ去り、日照りが少しでも続けば今度は水不足に悩まされます。
アジア・モンスーン気候帯に位置し、季節風(モンスーン)の影響を受け四季の変化がはっきりしているものの、全般的には(熱しにくく冷めにくい液体の海に囲まれた)海洋性気候のため、大陸の同緯度のところと比較しても冬の寒さはそれほど厳しくなく、総じて温和な気候と言えます。
冬季はシベリア高気圧が優勢となり北西からの季節風が吹き、その季節風の通り道である日本海では、暖流である対馬海流から大量の水蒸気が蒸発するため、その水蒸気に大陸からの冷たく乾いた寒気がぶつかり大量の雪を降らせます。そのため、日本海側を中心に国土の約52%が世界でも有数の豪雪地帯になっています。一方、太平洋側では空気が乾燥した晴天の日が多いのが特徴です。
夏季は、北太平洋高気圧の勢力が優勢となり、高温多湿の南東からの季節風が吹き、全国的に非常に蒸し暑い日が続きます。また、この時期は日本列島上空が偏西風の通り道になることから、台風の来襲が非常に多いという特徴があります。
また、日本海側での冬季の降雪、6・7月(沖縄奄美地方は5・6月)に前線が停滞して起こる梅雨、夏季から秋季にかけて南方の太平洋上から接近・上陸してくる台風等々により、年間降水量は各地で約1,700mmにものぼり、世界の中でも比較的降水量の多い地域となっています。
さらに、アジア・モンスーン気候帯の北限に位置する日本列島は、大陸のシベリア高気圧と南からの太平洋高気圧の影響で、北からの寒気と南からの暖気が列島付近の上空でぶつかりあうことから、大気の状態が不安定となり前線が発生しやすく、このため、日本列島の気象は一年中休むことなく、日々絶えず激しく変化をし続けていると言えます。
しかも、日本列島付近では地球の表面を覆う大きな大陸プレートが幾つも境界面を接しています。このため世界で発生する大地震の約20%はこの日本列島付近で発生し、活火山の約10%が日本列島とその周辺に位置しています。
歴史を振り返ってみると、梅雨の大雨や台風の来襲等により、日本では毎年のように多くの犠牲者を出すなどの大きな被害を受けていて、また、ほぼ1世紀の間に5回~10回は1,000人以上の死者を出すような大規模な地震に襲われています。このように日本列島に住む我々日本人は、太古の昔からこの激変する気象と、突然襲ってくる理不尽な地震や台風、大雨等という自然環境を受け入れて暮らしてきました。
日本列島の気象は一年中休むことなく、日々絶えず激しく変化をし続けている…と書きましたが、その変化がここのところこれまで以上に極端になってきているのは確かなようだ…と思っています。
その極端に激しくなった気象の変化ことを、一般に“異常気象”などと呼んでいますが、私はそもそも“異常気象”という言葉自体がおかしいのではないか…と、常々思っています。“異常”の定義をどう設定するかにかかってくるとは思いますが、そもそも“気象は異常なもの”なのです。“異常”の定義を“これまでの自分達の経験からでは予想しがたいもの”とするならば、人間1人1人の人生なんて長くて100年。また、今に残っている正確な気象の観測データに関しても、日本ですら最近の100年ほどのデータに過ぎません。100年なんて何十億年という地球の歴史からするとほんの一瞬のことです。しかも、我々人間社会を取り囲む自然の様々なメカニズムには、まだまだ人類がいくら叡智を集めても解明できていないことがたくさんたくさん残っています。なので、気象はそもそもが人間の想像の域を遥かに超えた“異常”なものですから。
自然は常に人智が及ばないものであると思って、“畏敬の念”をもって接しないといけない!…と常々私は思っています。“自然(気象)はそもそもが異常なものだ”…と、その“異常性”を受け入れた上で、我々人類はその異常な気象の変化から身を守るために何をしなくてはいけないのか、あるいは、何に注意を払わないといけないのかを考え、そのための仕組みを組み上げ、具体的な行動を起こしていくことこそが、今の時代、求められているだと思っています。「異常だ!異常だ!」…と騒いでばかりいても、何も大きくは変わりません。
「異常気象」という言葉には、「これは異常気象なんだから、仕方ないじゃん!」…という責任逃れの無責任感や、諦め感のようなものが言葉の意味として込められている感じがして、私は嫌いです。これは“ゲリラ豪雨”という言葉も同じで、私はこのどちらも極力使わないようにしています(使う時は「俗に言う…」という言葉を頭に付けて言うようにしています)。気象に関わる人間が、異常気象やゲリラ豪雨等という言葉を軽々しく言っちゃあ、おしまいです(^^)d 言う時は「自分達はお手上げです」と、自然に対する敗北 を認めた時(頭を丸める時)です。少なくとも、我々はそうした人智を超えた(異常な)自然と真っ正面から向き合いたい…と私は思っています。
このあたり、ベースにあるのは“理学”的視点か、“工学”的視点であるかの差であると思っています。“理学”的視点からは“異常”、すなわち予想の範囲外であっても、“工学”的視点からはそれでも安心・安全を守らなくてはならないということで、なんら変わりませんから、簡単に敗北するわけにはいきませんからね(^^)d 私は、そして、弊社ハレックスはあくまでも そのスタンスを貫きたいと思っています。
このNHKスペシャル『巨大災害 ~MEGA DISASTER~ 地球大変動の衝撃(日本に迫る脅威:激化する豪雨)』の放送があった3日前の11月12日、改正土砂災害防止法が参議院本会議で可決・成立しました。この土砂災害防止法は、15年前の1999年に広島市などで31人が死亡した土砂災害をきっかけに制定され、2001年に施行されました。都道府県が基礎調査を実施した上で、土砂災害の恐れがある警戒区域や特別警戒区域を指定することや、警戒区域では避難体制作りを行うことが義務付けられ、また、特別警戒区域では宅地開発の規制が義務付けられました。
それが、先日15年ぶりに改正されたわけです。そのきっかけとなったのはまたも広島市で、今度は15年前の2倍以上の74人がお亡くなりになったわけで、これまでの土砂災害防止法ではまだまだダメだ…ということが明らかになった上でのことですから、当然のことです。
今回の改正土砂災害防止法では8月の広島市の大規模土砂災害の教訓を踏まえて、土砂災害の危険性について、都道府県がより早い段階で住民に伝えるように義務付けたのが最大の柱になっています。
「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案」について (国土交通省 水管理・国土保全局)
この改正土砂災害防止法制定を受けて、国土交通省ではこれまでの土砂災害防止法で義務付けられていた警戒区域や特別警戒区域の指定に先立つ基礎調査を今後5年程度で終えるように全ての都道府県に求めるとしています。この基礎調査では地形や地質を現地で調べ、予想される災害の影響範囲を詳細に割り出すことを目的としています。
これが出来上がると、都市の脆弱性が詳しい精度で明らかになるため、次に考えないといけなくなるのは、その脆弱性に関する情報を活用した“災い”を“害”にしないようにするための仕組みの構築ということになります。
そこにはより詳細な気象予測情報の活用というものが不可欠となるため、我々民間気象情報会社の活躍の場(期待される場面)が出てくると私は考えています。
このことを、先月、新潟県長岡市で開催された日本災害情報学会の場で発表させていただきました。
日本災害情報学会2014年大会予稿集向け原稿案(気象防災アナリストによる自治体の防災活動支援)
国連の関係機関であるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、今後地球温暖化が進行することで、今後ますます気候変動は激化していくと指摘しています。すなわち、これまで「異常だ、異常だ」と言ってきたことが単純に“異常”ではなく、“恒常化”“日常化”していくことだって十分に考えられます。
そういう避けようのない自然の変化に対して、私達はどのように備えなくてはならないのか、それぞれがそれぞれの立場から知恵を出しあって、具体的な仕組み作りや行動を起こすよう真剣に考えないといけない時期が来ている、それも待ったなし!で……と思います(^^)d
NHKスペシャル『巨大災害 ~MEGA DISASTER~ 地球大変動の衝撃(日本に迫る脅威: 激化する豪雨)』、いろいろと考えさせていただける非常に興味深い番組でした。残念ながら見逃された方は、『NHKオンデマンド(有料)』で是非ご覧ください(^^)d
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執筆者
株式会社ハレックス
前代表取締役社長
越智正昭
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