2015/01/19
災害時における情報伝達手段の確保について(その1)
また今年も1月17日という日がやってきました。今から20年前の平成7年(1995年)1月17日、兵庫県神戸市を中心とした直下型の大きな地震、いわゆる『阪神淡路大震災(気象庁が命名した正式名称は「平成7年兵庫県南部地震」)』が発生し、神戸の市街地はほぼ壊滅状態。死者6.436名、行方不明者3名、負傷者43.792名、避難者総数30万人以上と言う多くの犠牲者を出す未曾有の被害を出しました。
大都市を直撃した都市型災害としては関東大震災以来であり、道路・鉄道・電気・水道・ガス・電話などライフラインは寸断され広範囲で全く機能しなくなりました。
わずか20年前の大災害と言うことで、この阪神淡路大震災に関しては記憶に新しく、あの世界中の新聞の一面を飾った阪神高速道路神戸線の倒壊の写真など、まだまだ皆さんも思い出せる光景がたくさんおありのことと思います。中には、ご自身や、ご家族・親類・友人の中に被災者がいらっしゃるって方もたくさんおいでになると思います。
実は、私もこの阪神淡路大震災に“関係者”として関わりました。
私がどのようにこの未曾有の自然災害に関わったのかにつきましては、20年前(平成7年11月)に開催されたNTTデータ主催の防災セミナーで私が講演した際の講演録にまとめておりますので、ここから何回かに分けてご紹介することにします。
NTTデータが、そして越智正昭があの地震の際に、企業としてこのような社会貢献活動をやったということを皆さんに知っていただければ幸いです。また、近年は自然災害や大火災等の緊急事態に備えるための危機管理のための新手法としてBCP(Business Continuity Plan=事業継続計画)と呼ばれるガイドラインの策定が世の中的に経営戦略の一つとして位置づけられつつあります。そうした中で、私のこの経験が少しでも参考になれば幸いだと思い、ここにご紹介します。
この講演は阪神淡路大震災の際にNTTデータ(当時はNTTデータ通信株式会社)と毎日新聞社、毎日放送が組んで実施した企業ボランティア活動について述べたものです。私はこの企画の発案者で、現場指揮官として実際の現場での陣頭指揮も執りました。
自慢になりますが、この救援活動は随所で評価され、兵庫県知事表彰、日本難聴者協会から感謝状、日本中途失聴者協会から感謝状、近畿テレコム賞(関西民放連)・特別表彰、郵政大臣表彰、NTTデータ・毎日新聞社・毎日放送各社社長表彰などなどをいただきました。なお、このブログでは講演録からテキストだけを抜き出してご紹介します。
実際には講演では30枚以上のOHPスライド(PowerPointは当時まだありませんでした)を使用しております。なにせ20年前のことなので、そのスライド゙が現在私の手もとには残っておりません(前の会社ならどこかに保存してある筈なのですが)。なので、大変申し訳ありませんが、図や写真を掲載することがかないません。大変に申し訳ないのですが、本文から類推してイメージしていただいて、雰囲気だけでも掴んでいただけたら幸いです。ご興味がおありの方は私に個別にお問い合わせください。
また、20年前のことですので、当時は携帯電話がやっと出始めた頃でした。PHS式の携帯電話というものもありました。携帯電話と言っても通話だけが出来るアナログ式の携帯電話で、現在のようなディジタル携帯電話やスマートフォンが普及してきて、モバイル環境でデータ通信が出来るようになるのは極々最近のことです。そのあたりの時代背景を頭に描いてお読みください。
ただ、「災害時における情報伝達手段の確保について」は昔も今も基本は変わりませんので、少しは参考になる部分があろうかと思っております。
では、メチャクチャ長文になりますので、(その1)~(その3)の3回に分けて掲載させていただきます。まぁ~我慢して読んでみて下さい。
なお、文中の(注)と【追記】は今回加筆したものです。私にとって非常に思い出深い出来事ですので、短い時間の講演の中では喋り切れなかったことがいっぱいありすぎて、この【追記】のほうが長くなるかと思いますが、そこはご容赦願います。
*****************************************************************
このセミナーレポートは、平成7年(1995年)11月27日に開催された「情報通信システム災害対策セミナー」の講演を収録・編集したものです。
◆講 演 Ⅰ
「災害時における情報伝達手段の確保について」
越智 正昭(おち まさあき)
株式会社NTTデータ 公共システム事業本部
第一公共システム事業部 マルチメディア担当部長
ご紹介に預かりましたNTTデータ通信株式会社公共システム事業本部の越智でございます。本日はお忙しい中をかくも大勢の方にお集まり頂きまして、ありがとうございます。災害対策のプロフェッショナルでいらしゃいます皆様を前にいたしまして、私のような弱輩がこのような高いところからお話しするのは誠に僭越ではございますが、「災害時における情報伝達手段の確保について」というテーマでお話させて頂きますので、しばしお付き合いをお願いします。
この「情報伝達手段の確保について」というテーマなのですが、災害対策という性格上から、「こうあるべきである」という「べき」論、これがとてもできるようなものではございません。ここでは、我々NTTデータ通信が社会貢献のひとつとして実施いたしました阪神大震災の被災情報システム、私は現場指揮官としてこれに参加したものですから、その被災情報システムを例にいたしまして、その時の経験等をお話しし、少しでもお役に立てるところがあれば幸いに考えております。
≪災害対策を考えて行く上での、システムの機能要件≫
今年1月に発生しました阪神大震災、我々の意識の中ではかなり以前のような感じがしますが、紛れもなく、10ヶ月前、今年のできごとでございます。この意識が少しずつ風化していくのが、非常に残念な、と言うよりも恐ろしい気がいたします。今、この時のことを改めて思い出して、災害対策がどうあるべきかということを論じていく必要があるのではないかと思っています。
災害にはいろいろな形態がございます。地震だけでなく台風であるとか、竜巻であるとか、また大火災であるとか、また最近の某宗教団体のケースのように、人災とも言うべき毒ガスなどもその中に入ってこようかと思います。その中でも、阪神大震災の特徴は、予想を遙かに超える規模の広域災害であったこと、そのために本来救助にあたるべき自治体の方々も被害者になってしまったことが特徴に挙げられるかと思います。
また、情報インフラにつきましても、予備電源、ケーブルの切断の故障で合わせて48万回線が不通になってしまったという実態がございます。またピーク時には、通常の50倍にも上る電話が殺到したため、かかりにくくなったというようなことも挙げられるかと思います。そのために、情報通信インフラを考える上で、我々は何をポイントにしなければならないか、ということで機能要件を考えた場合、次の3点が重要になると考えます。
1.被災者一般住民のみならず、関係機関すべてに情報が提供できるデータベースを構築していること。
2.平常時から蓄積された都市情報や住民情報、災害対策能力等の情報と、災害時に収集される各種情報とを連動して、的確な意志決定を支援できること。
3.支援活動や医療・物資・避難場所等の現業活動を、効果的に支援できること
この3点が火災対策を考えていくなかでの、システムの機能要件ではないかと考えます。
阪神大震災の発生直後、当社(NTTデータ)といたしましては、すぐ災害対策本部、復旧推進本部というものを中心に、社員の安全確保当社と提供しておりますシステムの復旧を急いできたわけでございます。これとは別に後方支援部隊の方でも、情報というものを生業にしているものですから、情報をベースにした社会貢献ができないかということを、先程3点目で説明いたしました支援活動、現状活動に情報がいかに使えるかという観点から、地震発生直後から検討してきたわけでございます。
今からそのお話をさせて頂きますが、その前に写真をご覧頂き、今一度あのすさまじい状況を思い起こしていただきたいと思います。地震発生の2日後の1月19日に、私はある仕事の関係で西宮市に入っております。その時は木造住宅がほとんど壊れているという状態です。これがその時の写真(1枚目、2枚目)でございます。
とにかく東京などにいますと、震度3とか震度4というものに慣れていると思いますけれども、実は私も行きました時に、震度3、震度4を神戸、西宮で経験したのですが、質が違うというように感じました。何かと言いますと、床が抜ける感じがするのです。直下型というのはこんなに恐いものかと。縦揺れがするわけです。歩いていても腰が抜ける感じがするというのが震度3です。ガキッ、と抜ける感じです。そしてゴーッと音がした途端に、ドーンという。これが神戸の震度3です。震度4になりま すと、建物がガーッと音をたてて、ギッと曲がってきます。これが神戸の余震の震度3、震度4でした。
これを見て頂ければわかると思いますが、コンクリート製の電信柱の下部が全部、鉄筋がむき出しになるという直下型の傾向を示しています。これが神戸の市内です。このあと2週間後に神戸に入りまして、被災情報システムを避難所に置いたのですが、これが丁度その時の写真です。道自体取り壊しの最中で、その作業のために道路交通の状況が5分後にはすぐに一変してしまうという状況でした。
大都市を直撃した都市型災害としては関東大震災以来であり、道路・鉄道・電気・水道・ガス・電話などライフラインは寸断され広範囲で全く機能しなくなりました。
わずか20年前の大災害と言うことで、この阪神淡路大震災に関しては記憶に新しく、あの世界中の新聞の一面を飾った阪神高速道路神戸線の倒壊の写真など、まだまだ皆さんも思い出せる光景がたくさんおありのことと思います。中には、ご自身や、ご家族・親類・友人の中に被災者がいらっしゃるって方もたくさんおいでになると思います。
実は、私もこの阪神淡路大震災に“関係者”として関わりました。
私がどのようにこの未曾有の自然災害に関わったのかにつきましては、20年前(平成7年11月)に開催されたNTTデータ主催の防災セミナーで私が講演した際の講演録にまとめておりますので、ここから何回かに分けてご紹介することにします。
NTTデータが、そして越智正昭があの地震の際に、企業としてこのような社会貢献活動をやったということを皆さんに知っていただければ幸いです。また、近年は自然災害や大火災等の緊急事態に備えるための危機管理のための新手法としてBCP(Business Continuity Plan=事業継続計画)と呼ばれるガイドラインの策定が世の中的に経営戦略の一つとして位置づけられつつあります。そうした中で、私のこの経験が少しでも参考になれば幸いだと思い、ここにご紹介します。
この講演は阪神淡路大震災の際にNTTデータ(当時はNTTデータ通信株式会社)と毎日新聞社、毎日放送が組んで実施した企業ボランティア活動について述べたものです。私はこの企画の発案者で、現場指揮官として実際の現場での陣頭指揮も執りました。
自慢になりますが、この救援活動は随所で評価され、兵庫県知事表彰、日本難聴者協会から感謝状、日本中途失聴者協会から感謝状、近畿テレコム賞(関西民放連)・特別表彰、郵政大臣表彰、NTTデータ・毎日新聞社・毎日放送各社社長表彰などなどをいただきました。なお、このブログでは講演録からテキストだけを抜き出してご紹介します。
実際には講演では30枚以上のOHPスライド(PowerPointは当時まだありませんでした)を使用しております。なにせ20年前のことなので、そのスライド゙が現在私の手もとには残っておりません(前の会社ならどこかに保存してある筈なのですが)。なので、大変申し訳ありませんが、図や写真を掲載することがかないません。大変に申し訳ないのですが、本文から類推してイメージしていただいて、雰囲気だけでも掴んでいただけたら幸いです。ご興味がおありの方は私に個別にお問い合わせください。
また、20年前のことですので、当時は携帯電話がやっと出始めた頃でした。PHS式の携帯電話というものもありました。携帯電話と言っても通話だけが出来るアナログ式の携帯電話で、現在のようなディジタル携帯電話やスマートフォンが普及してきて、モバイル環境でデータ通信が出来るようになるのは極々最近のことです。そのあたりの時代背景を頭に描いてお読みください。
ただ、「災害時における情報伝達手段の確保について」は昔も今も基本は変わりませんので、少しは参考になる部分があろうかと思っております。
では、メチャクチャ長文になりますので、(その1)~(その3)の3回に分けて掲載させていただきます。まぁ~我慢して読んでみて下さい。
なお、文中の(注)と【追記】は今回加筆したものです。私にとって非常に思い出深い出来事ですので、短い時間の講演の中では喋り切れなかったことがいっぱいありすぎて、この【追記】のほうが長くなるかと思いますが、そこはご容赦願います。
*****************************************************************
このセミナーレポートは、平成7年(1995年)11月27日に開催された「情報通信システム災害対策セミナー」の講演を収録・編集したものです。
◆講 演 Ⅰ
「災害時における情報伝達手段の確保について」
越智 正昭(おち まさあき)
株式会社NTTデータ 公共システム事業本部
第一公共システム事業部 マルチメディア担当部長
ご紹介に預かりましたNTTデータ通信株式会社公共システム事業本部の越智でございます。本日はお忙しい中をかくも大勢の方にお集まり頂きまして、ありがとうございます。災害対策のプロフェッショナルでいらしゃいます皆様を前にいたしまして、私のような弱輩がこのような高いところからお話しするのは誠に僭越ではございますが、「災害時における情報伝達手段の確保について」というテーマでお話させて頂きますので、しばしお付き合いをお願いします。
この「情報伝達手段の確保について」というテーマなのですが、災害対策という性格上から、「こうあるべきである」という「べき」論、これがとてもできるようなものではございません。ここでは、我々NTTデータ通信が社会貢献のひとつとして実施いたしました阪神大震災の被災情報システム、私は現場指揮官としてこれに参加したものですから、その被災情報システムを例にいたしまして、その時の経験等をお話しし、少しでもお役に立てるところがあれば幸いに考えております。
≪災害対策を考えて行く上での、システムの機能要件≫
今年1月に発生しました阪神大震災、我々の意識の中ではかなり以前のような感じがしますが、紛れもなく、10ヶ月前、今年のできごとでございます。この意識が少しずつ風化していくのが、非常に残念な、と言うよりも恐ろしい気がいたします。今、この時のことを改めて思い出して、災害対策がどうあるべきかということを論じていく必要があるのではないかと思っています。
災害にはいろいろな形態がございます。地震だけでなく台風であるとか、竜巻であるとか、また大火災であるとか、また最近の某宗教団体のケースのように、人災とも言うべき毒ガスなどもその中に入ってこようかと思います。その中でも、阪神大震災の特徴は、予想を遙かに超える規模の広域災害であったこと、そのために本来救助にあたるべき自治体の方々も被害者になってしまったことが特徴に挙げられるかと思います。
また、情報インフラにつきましても、予備電源、ケーブルの切断の故障で合わせて48万回線が不通になってしまったという実態がございます。またピーク時には、通常の50倍にも上る電話が殺到したため、かかりにくくなったというようなことも挙げられるかと思います。そのために、情報通信インフラを考える上で、我々は何をポイントにしなければならないか、ということで機能要件を考えた場合、次の3点が重要になると考えます。
1.被災者一般住民のみならず、関係機関すべてに情報が提供できるデータベースを構築していること。
2.平常時から蓄積された都市情報や住民情報、災害対策能力等の情報と、災害時に収集される各種情報とを連動して、的確な意志決定を支援できること。
3.支援活動や医療・物資・避難場所等の現業活動を、効果的に支援できること
この3点が火災対策を考えていくなかでの、システムの機能要件ではないかと考えます。
阪神大震災の発生直後、当社(NTTデータ)といたしましては、すぐ災害対策本部、復旧推進本部というものを中心に、社員の安全確保当社と提供しておりますシステムの復旧を急いできたわけでございます。これとは別に後方支援部隊の方でも、情報というものを生業にしているものですから、情報をベースにした社会貢献ができないかということを、先程3点目で説明いたしました支援活動、現状活動に情報がいかに使えるかという観点から、地震発生直後から検討してきたわけでございます。
今からそのお話をさせて頂きますが、その前に写真をご覧頂き、今一度あのすさまじい状況を思い起こしていただきたいと思います。地震発生の2日後の1月19日に、私はある仕事の関係で西宮市に入っております。その時は木造住宅がほとんど壊れているという状態です。これがその時の写真(1枚目、2枚目)でございます。
とにかく東京などにいますと、震度3とか震度4というものに慣れていると思いますけれども、実は私も行きました時に、震度3、震度4を神戸、西宮で経験したのですが、質が違うというように感じました。何かと言いますと、床が抜ける感じがするのです。直下型というのはこんなに恐いものかと。縦揺れがするわけです。歩いていても腰が抜ける感じがするというのが震度3です。ガキッ、と抜ける感じです。そしてゴーッと音がした途端に、ドーンという。これが神戸の震度3です。震度4になりま すと、建物がガーッと音をたてて、ギッと曲がってきます。これが神戸の余震の震度3、震度4でした。
これを見て頂ければわかると思いますが、コンクリート製の電信柱の下部が全部、鉄筋がむき出しになるという直下型の傾向を示しています。これが神戸の市内です。このあと2週間後に神戸に入りまして、被災情報システムを避難所に置いたのですが、これが丁度その時の写真です。道自体取り壊しの最中で、その作業のために道路交通の状況が5分後にはすぐに一変してしまうという状況でした。
執筆者
株式会社ハレックス
前代表取締役社長
越智正昭
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