2015/07/10
閏秒
実は7月1日は、ふだんより1秒長い1日となりました。これは「閏(うるう)秒」の調整が行われたからです。
7月1日に行われた「閏秒」の調整は日本時間の午前8時59分59秒と午前9時00分00秒の間に「8時59分60秒」を挿入することで行われました。
「閏秒」の調整は、地球の回転の観測を行う国際機関である「国際地球回転・基準系事業(IERS:International Earth Rotation and Reference Systems Service、所在地:パリ)」が決定して世界中で行われるもので、IERSの決定を受けて世界で同時一斉に「閏秒」の調整が行われます。(日本で午前9時00分00秒に行われるのは、日本はグリニッジ世界標準時から9時間の時差があるためです。)
日本では、総務省及び日本の標準時の維持・通報を実施している独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が法令に基づいて標準時の通報に係る事務を行っており、IERSの決定に基づきNICTにおいて日本標準時に「閏秒」の挿入を実施しています。
時刻は、かつては地球の公転・自転に基づく『天文時(世界時)』から決められていましたが、セシウム133原子の遷移周波数を用いて、数十万年に1秒ずれるだけという極めて高精度の時計原子の振動を利用した原子時計が開発され、1958年からはその原子時計に基づく『国際原子時』が開始されました。
『国際原子時』の導入により、1秒の長さが非常に高精度なものとなった結果、原子時計に基づく『国際原子時』の時刻と『天文時』に基づく時刻との間で微妙なズレが生じるようになりました。
そこで、原子時計に基づく『国際原子時』の時刻を『天文時』とのズレが0.9秒以内におさまるように調整を行った時刻を世界の『標準時(協定世界時)』として使うことにしており、今回その調整を行うために「閏秒」の挿入が行われたわけです。
「閏秒」の調整は1972年から数年に1回程度行われていて、今回の「閏秒」の挿入は平成24年(2012年)7月1日以来3年ぶりのことです。
現代社会では、時刻は、単に時を知るためだけに使われているのではなく、社会・経済活動の重要な基盤となっている情報通信ネットワークやコンピューターの運用などにも重要な基盤情報の1つとして使われています。例えば、情報通信ネットワークは正確な時刻管理のもとに運用されており、また電話などの料金も秒単位で決められています。そのため、情報通信ネットワークやコンピューターを間違いなく運用するには正確な時刻情報が必要です。
私はかつて(30年以上前)、日本電信電話公社(現在のNTT)で、通信路網のディジタル化に関する基盤技術の開発に携わっていました。伝送路が従来の銅線による同軸ケーブルから、ガラスを用いた光ファイバーケーブルに転換すること等を契機に、アナログ通信からディジタル通信に置き換わるその技術開発の最前線にいました。
ディジタル通信では“0”“1”という2値の情報を送信側と受信側でうまく受け渡しする必要があるため、『同期(一言で言えば、タイミングを合わせること)』ということが極めて重要になります。伝送路は途中幾つもの通信を多重化させて通信するため、送信側と受信側だけでなく、多重化装置や復号化装置、伝送路網の切り替え装置など、通信に関わるすべての装置が同じタイミングで動作する必要があります。なので、ディジタル通信においては、“時刻”は最重要な基盤技術です。
当時の日本電信電話公社でも、セシウム発振器や(バックアップとしての)ルビジウム発振器を用いた極めて高精度の原子時計を保有していて、この極めて高精度の原子時計が発する時刻と、端末機器をはじめとした各機器に搭載されているクォーツ(水晶)発振器の時計の間のズレをいかに合わせるかが、すべての技術の鍵を握っていました。(その最前線にいたので、よく分かっています。当時はそのことばかり考えていた時期がありました。)
日本の標準時の維持・通報を実施しているところの組織が独立行政法人情報通信研究機構(NICT)であるというのも、そういう関係からだと思います。
NICTでは、電波時計等に時刻情報を提供している標準電波、放送局等に時刻をお知らせしている「テレフォンJJY」、ネットワークを利用したコンピューターの時刻合わせに使われている「NTPサービス」等、日本標準時通報サービスを行っているのですが、そのおおもとの時計に「閏秒」が挿入されたわけですから、ネットワークに接続されるすべての機器はNICTから提供される日本標準時と同期を合わせないと、ちゃんと通信ができなくなる危険性があります。
NICTからは半年前の本年1月5日に、IERSの「閏秒」挿入の決定を受けて、7月1日に日本標準時に「閏秒」の挿入を実施する旨の通達が流れたので、全国の情報処理や情報通信に関わる全てのシステムで「閏秒」挿入による影響の有無や、対応が行われたのではないか…と思っています。弊社ハレックスも、「閏秒」挿入による影響の有無に関して、問題がないことを確認はしていたのですが、近年のITシステムは複雑高度になっているので、なにか想定外の事象が起きるのではないか…という若干の不安を感じながら7月1日を迎えました。
上記のように、かつて伝送路網のディジタル化の仕事に携わり、時刻の“同期”の重要性を骨身に沁みて知っているだけに、他の人より幾分センシティブになっていた部分がありましたが、「閏秒」が挿入された午前9時00分00秒を過ぎても特に問題が報告されてこなかったので、ホッとひと安心しました。
7月2日の報道を見ても、7月1日の「閏秒」挿入を原因としたトラブルは特に発生していないようです。3年前の平成24年(2012年)7月1日にもあったことなので、その時に対応がちゃんとなされていたのでしょうね、きっと。よかったよかった(^^ゞ
7月1日に行われた「閏秒」の調整は日本時間の午前8時59分59秒と午前9時00分00秒の間に「8時59分60秒」を挿入することで行われました。
「閏秒」の調整は、地球の回転の観測を行う国際機関である「国際地球回転・基準系事業(IERS:International Earth Rotation and Reference Systems Service、所在地:パリ)」が決定して世界中で行われるもので、IERSの決定を受けて世界で同時一斉に「閏秒」の調整が行われます。(日本で午前9時00分00秒に行われるのは、日本はグリニッジ世界標準時から9時間の時差があるためです。)
日本では、総務省及び日本の標準時の維持・通報を実施している独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が法令に基づいて標準時の通報に係る事務を行っており、IERSの決定に基づきNICTにおいて日本標準時に「閏秒」の挿入を実施しています。
時刻は、かつては地球の公転・自転に基づく『天文時(世界時)』から決められていましたが、セシウム133原子の遷移周波数を用いて、数十万年に1秒ずれるだけという極めて高精度の時計原子の振動を利用した原子時計が開発され、1958年からはその原子時計に基づく『国際原子時』が開始されました。
『国際原子時』の導入により、1秒の長さが非常に高精度なものとなった結果、原子時計に基づく『国際原子時』の時刻と『天文時』に基づく時刻との間で微妙なズレが生じるようになりました。
そこで、原子時計に基づく『国際原子時』の時刻を『天文時』とのズレが0.9秒以内におさまるように調整を行った時刻を世界の『標準時(協定世界時)』として使うことにしており、今回その調整を行うために「閏秒」の挿入が行われたわけです。
「閏秒」の調整は1972年から数年に1回程度行われていて、今回の「閏秒」の挿入は平成24年(2012年)7月1日以来3年ぶりのことです。
現代社会では、時刻は、単に時を知るためだけに使われているのではなく、社会・経済活動の重要な基盤となっている情報通信ネットワークやコンピューターの運用などにも重要な基盤情報の1つとして使われています。例えば、情報通信ネットワークは正確な時刻管理のもとに運用されており、また電話などの料金も秒単位で決められています。そのため、情報通信ネットワークやコンピューターを間違いなく運用するには正確な時刻情報が必要です。
私はかつて(30年以上前)、日本電信電話公社(現在のNTT)で、通信路網のディジタル化に関する基盤技術の開発に携わっていました。伝送路が従来の銅線による同軸ケーブルから、ガラスを用いた光ファイバーケーブルに転換すること等を契機に、アナログ通信からディジタル通信に置き換わるその技術開発の最前線にいました。
ディジタル通信では“0”“1”という2値の情報を送信側と受信側でうまく受け渡しする必要があるため、『同期(一言で言えば、タイミングを合わせること)』ということが極めて重要になります。伝送路は途中幾つもの通信を多重化させて通信するため、送信側と受信側だけでなく、多重化装置や復号化装置、伝送路網の切り替え装置など、通信に関わるすべての装置が同じタイミングで動作する必要があります。なので、ディジタル通信においては、“時刻”は最重要な基盤技術です。
当時の日本電信電話公社でも、セシウム発振器や(バックアップとしての)ルビジウム発振器を用いた極めて高精度の原子時計を保有していて、この極めて高精度の原子時計が発する時刻と、端末機器をはじめとした各機器に搭載されているクォーツ(水晶)発振器の時計の間のズレをいかに合わせるかが、すべての技術の鍵を握っていました。(その最前線にいたので、よく分かっています。当時はそのことばかり考えていた時期がありました。)
日本の標準時の維持・通報を実施しているところの組織が独立行政法人情報通信研究機構(NICT)であるというのも、そういう関係からだと思います。
NICTでは、電波時計等に時刻情報を提供している標準電波、放送局等に時刻をお知らせしている「テレフォンJJY」、ネットワークを利用したコンピューターの時刻合わせに使われている「NTPサービス」等、日本標準時通報サービスを行っているのですが、そのおおもとの時計に「閏秒」が挿入されたわけですから、ネットワークに接続されるすべての機器はNICTから提供される日本標準時と同期を合わせないと、ちゃんと通信ができなくなる危険性があります。
NICTからは半年前の本年1月5日に、IERSの「閏秒」挿入の決定を受けて、7月1日に日本標準時に「閏秒」の挿入を実施する旨の通達が流れたので、全国の情報処理や情報通信に関わる全てのシステムで「閏秒」挿入による影響の有無や、対応が行われたのではないか…と思っています。弊社ハレックスも、「閏秒」挿入による影響の有無に関して、問題がないことを確認はしていたのですが、近年のITシステムは複雑高度になっているので、なにか想定外の事象が起きるのではないか…という若干の不安を感じながら7月1日を迎えました。
上記のように、かつて伝送路網のディジタル化の仕事に携わり、時刻の“同期”の重要性を骨身に沁みて知っているだけに、他の人より幾分センシティブになっていた部分がありましたが、「閏秒」が挿入された午前9時00分00秒を過ぎても特に問題が報告されてこなかったので、ホッとひと安心しました。
7月2日の報道を見ても、7月1日の「閏秒」挿入を原因としたトラブルは特に発生していないようです。3年前の平成24年(2012年)7月1日にもあったことなので、その時に対応がちゃんとなされていたのでしょうね、きっと。よかったよかった(^^ゞ
執筆者
株式会社ハレックス
前代表取締役社長
越智正昭
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