2016/11/21
銀の匙 Silver Spoon(その1)
“死のロード”、これは本拠地甲子園球場が夏の全国高等学校野球選手権大会に使用されるため、その大会開催期間中、長期間にわたって本拠地球場が使えずに、敵地をはじめ本拠地以外の球場で戦わざるを得ない宿命を背負ったプロ野球球団阪神タイガースで使われる言葉です。
実は私も10月下旬に10日間以上連続して東京東五反田の本社を留守にして、この“死のロード”に出ていました。まずは10月21日(金)にはプロジェクトマネジメント学会関西支部さんから依頼されての講演のため日帰りで大阪に、土曜日に休んだだけで続いて10月23日(日)からは『IBM World of Watson 2016』出席のためアメリカ合衆国ネバダ州のラスベガスに、そして10月28日(金)に帰国した翌週の月曜日(10月31日)には1泊2日で北海道の札幌へ。その間の移動距離は約2万km。途中にjet lag(時差ボケ)でボケボケ状態だった期間もあり、さすがに還暦を過ぎた身にはちょっくら堪えます(特に、還暦を過ぎて自律神経の調整機能がさらに弱くなったからか、jet lagが昔より酷く感じます)。
加えて、気温差。ネバダ砂漠のど真ん中にあるラスベガスでは10月の下旬と言っても日中は陽射しが眩しく、最高気温が30℃を超えるので昼間は半袖Tシャツ1枚でもよかったのですが、この時期の北海道の札幌は既に晩秋。特に今年は例年より冬の訪れが早いようで、日中の最高気温が4℃。最低気温は0℃。東京羽田空港から札幌新千歳空港に向かう飛行機が新千歳空港に向けて高度を降ろしていった際には、眼下に雪をいただく道央の山々の風景が見えました。この気温差は予め分かっていたので、ラスベガスで着用していたサマースーツから秋冬物のスーツに着替え、今シーズン初めてコートまで羽織って出掛けたのですが、新千歳空港に到着してターミナルビルの外に出た時、頬に当たる冷たい大気に思わず首をすくめて「サブっ!(>_<) 」 滑走路の向こう側に広がるシラカバ等の広葉樹林は落葉が終わりかけ、晩秋というより初冬の風景です。これだけ気温差があると、油断したら体調を崩して風邪をひきそうです。
私は比較的多く出張する方ではありますが、出張で10日間以上会社を留守にするのは、実は14年前の社長就任以来初めてのことです。留守にしている間に社長室に蜘蛛が巣を作っているのではないか…と心配になりました。移動距離に加えて、時差、さらには気温差もあって、もうちょっと若い頃なら屁とも思わないことなのですが、前述のように、還暦を過ぎて2人の孫を持つ“ジイジ”としては、まさに“死のロード”のようなものでした。
先日のプロ野球日本シリーズで当地札幌を本拠地とするパ・リーグ覇者の北海道日本ハムファイターズは、セ・リーグの覇者広島東洋カープを対戦成績4勝2敗で破って、「日本一」となりました。札幌の町のあちこちにはそれを祝う幟やポスターが誇らしげに掲げられています。阪神タイガースファンではありますが、広島大学出身で広島カープにも強い愛着を感じている私としては、ちょっと悔しい思いがしました。
今回の札幌への出張は、北海道の酪農関係者の皆さんが作る「北海道TMRセンター連絡協議会」様から依頼を受けて、同会の2016年度秋季研修会(第11回研修会)で講演をさせていただくためでした。
TMR(Total Mixed Ration)とは、牧草やトウモロコシ等の粗飼料と各種ミネラル等の濃厚飼料を適切な割合で混合し、必要な養分を十分供給できるように調整した牛の飼料のことです。乳牛の健康維持や乳量のアップに効果があります。このTMRを地域の酪農家に供給する施設がTMRセンターです。加えて、TMRセンターでは、飼料作物畑を一括管理するため、効率的な農作業と良質のTMRを安定供給することも行っています。
私はこれまで農業関係者の皆様方を前に何度も講演をさせていただきましたが、酪農関係者の皆様方の前で講演するのは実は初めてのことです。酪農と気象ってどんな関係があるの?…と思われるかもしれませんが、よくよく考えていただくとお分かりいただけると思いますが、実は極めて密接に関係しているのです。
酪農といえば牛の飼育ですが、その餌となる牧草やトウモロコシといった植物を生育させることも酪農における極めて重要な業務です。そこには気象が大きく影響しますし、私達人間が気象・気候により体調を崩すことがあるように、牛だって気象・気候により体調は大きく左右されます。体調により乳(ミルク)の出にも大きく影響は受けるでしょうし、なにより病気にでも罹ったら、大変です。そういう意味では、通常の農業以上に気象に対して敏感な産業と言えるのではないでしょうか。
特に今年は、8月下旬に台風が複数個連続して北海道に上陸し、酪農が盛んな道東地域を中心に北海道内各地で甚大な被害が発生したこともあり、酪農関係者の皆さんの間でも、気象は重要な関心事項になっているようです。
そういうこともあり、この日の研修会の参加者は230名(もっとも、研修会の前に総会が開催されたこともありますが…)。私はご依頼を受けてこれまで各所で何度も講演をさせていただいておりますが、そういう中でもこの230名という聴衆の数は過去最大規模かもしれません。ゆうに200名は収容できるほどの広い会場だったのですが、後ろのほうには立ち見の方までいらっしゃるほどでした。参加された方々の名簿を見させていただくと、地名の欄には、中標津、別海、幌延、名寄、興部、浜頓別、富良野、宗谷、稚内、紋別、湧別、網走、更別、上士別、鹿追(順不同)……アイヌ語由来の北海道らしい地名が幾つも並んでいます。まさに広い北海道内各地から、それぞれの地域を代表する名だたる酪農家の皆さん方が一堂に会したって感じです。それに加えて、各地のJA(農業協同組合)やホクレン、TMRセンター、農機具メーカー、種苗業者、飼料会社、農業関連金融機関、北海道農政事務所、北海道庁農政部の方々の名前が並び、まさに酪農関連のオール北海道という感じです。
研修会は北海道TMRセンター連絡協議会の佐々木二郎会長(浜頓別エバーグリーン代表取締役)の開催挨拶で始まり、講演のトップバッターが私の「気象ビッグデータの活用で農業(酪農)を元気に!」と題した1時間の講演でした。
短い休憩を挟んで、続いて、伊藤忠商事株式会社北海道支社食料部の鈴木俊介氏が「スーパークーリングシステムを活用した物流」と題した講演を、さらにホクレン農業協同組合連合会 酪農畜産事業本部牛乳乳製品部の小澤博之次長と同酪農部の山本努課長が「生乳の流れの現状と今後の流通について」と題した講演、最後は、農林水産省生産局畜産部飼料課の大石晃課長補佐が「国産粗飼料関係予算について」と題した講演を、それぞれ30分ずつなさいました。
ちなみに、私が今回この北海道TMRセンター連絡協議会の研修会に講師としてお招きを受けたのは、全国農業協同組合中央会(JA全中)など農協グループが設立した国内で初めて投資対象を農業分野に特化したベンチャーキャピタル「アグリビジネス投資育成株式会社」が今年の2月10日に東京で開催した「若手後継者・経営幹部向けセミナー」に私と北海道TMRセンター連絡協議会の事務局を務められておられる株式会社オーレンス総合経営の福田直紀様の2人が講師として登壇させていただいたご縁があったからです。その際、福田様からこれと同じ講演を是非北海道でもやって欲しいとのご依頼を受け、今回それが実現したというわけです。ありがたいことです。
私の講演は、当初私が想像していた以上に好評だったようです。壇上から見る限り、聴いていただいている皆さんの目は真剣そのもので、大きく頷いたり、熱心にメモを取っておられる方の姿が目立ちました。230名という大人数を前にしての講演でしたが、確かな手応えを感じました。通常、私の講演では途中に息抜きのような小ネタを幾つも挟むのですが、今回は聴いていただく方の勢いに押されて、最初に少し小ネタを入れたくらいで、ほとんど本論だけで突っ走らせていただきました。それほど熱心に聴いていただきました。気候条件の厳しい北海道は、他の地域以上に気象情報に対するニーズは高いようです。農業関連の仕事をする以上、北海道は絶対に外せません。私が農業気象をテーマに北海道で講演するのは初めてのことでしたが、その北海道でも弊社ハレックスが実現を目指す農業向け気象情報サービスのラインナップが十分に受け入れられる下地があることを肌身で実感しました。これは大きな成果でした。
……(その2)に続きます。
実は私も10月下旬に10日間以上連続して東京東五反田の本社を留守にして、この“死のロード”に出ていました。まずは10月21日(金)にはプロジェクトマネジメント学会関西支部さんから依頼されての講演のため日帰りで大阪に、土曜日に休んだだけで続いて10月23日(日)からは『IBM World of Watson 2016』出席のためアメリカ合衆国ネバダ州のラスベガスに、そして10月28日(金)に帰国した翌週の月曜日(10月31日)には1泊2日で北海道の札幌へ。その間の移動距離は約2万km。途中にjet lag(時差ボケ)でボケボケ状態だった期間もあり、さすがに還暦を過ぎた身にはちょっくら堪えます(特に、還暦を過ぎて自律神経の調整機能がさらに弱くなったからか、jet lagが昔より酷く感じます)。
加えて、気温差。ネバダ砂漠のど真ん中にあるラスベガスでは10月の下旬と言っても日中は陽射しが眩しく、最高気温が30℃を超えるので昼間は半袖Tシャツ1枚でもよかったのですが、この時期の北海道の札幌は既に晩秋。特に今年は例年より冬の訪れが早いようで、日中の最高気温が4℃。最低気温は0℃。東京羽田空港から札幌新千歳空港に向かう飛行機が新千歳空港に向けて高度を降ろしていった際には、眼下に雪をいただく道央の山々の風景が見えました。この気温差は予め分かっていたので、ラスベガスで着用していたサマースーツから秋冬物のスーツに着替え、今シーズン初めてコートまで羽織って出掛けたのですが、新千歳空港に到着してターミナルビルの外に出た時、頬に当たる冷たい大気に思わず首をすくめて「サブっ!(>_<) 」 滑走路の向こう側に広がるシラカバ等の広葉樹林は落葉が終わりかけ、晩秋というより初冬の風景です。これだけ気温差があると、油断したら体調を崩して風邪をひきそうです。
私は比較的多く出張する方ではありますが、出張で10日間以上会社を留守にするのは、実は14年前の社長就任以来初めてのことです。留守にしている間に社長室に蜘蛛が巣を作っているのではないか…と心配になりました。移動距離に加えて、時差、さらには気温差もあって、もうちょっと若い頃なら屁とも思わないことなのですが、前述のように、還暦を過ぎて2人の孫を持つ“ジイジ”としては、まさに“死のロード”のようなものでした。
先日のプロ野球日本シリーズで当地札幌を本拠地とするパ・リーグ覇者の北海道日本ハムファイターズは、セ・リーグの覇者広島東洋カープを対戦成績4勝2敗で破って、「日本一」となりました。札幌の町のあちこちにはそれを祝う幟やポスターが誇らしげに掲げられています。阪神タイガースファンではありますが、広島大学出身で広島カープにも強い愛着を感じている私としては、ちょっと悔しい思いがしました。
今回の札幌への出張は、北海道の酪農関係者の皆さんが作る「北海道TMRセンター連絡協議会」様から依頼を受けて、同会の2016年度秋季研修会(第11回研修会)で講演をさせていただくためでした。
TMR(Total Mixed Ration)とは、牧草やトウモロコシ等の粗飼料と各種ミネラル等の濃厚飼料を適切な割合で混合し、必要な養分を十分供給できるように調整した牛の飼料のことです。乳牛の健康維持や乳量のアップに効果があります。このTMRを地域の酪農家に供給する施設がTMRセンターです。加えて、TMRセンターでは、飼料作物畑を一括管理するため、効率的な農作業と良質のTMRを安定供給することも行っています。
私はこれまで農業関係者の皆様方を前に何度も講演をさせていただきましたが、酪農関係者の皆様方の前で講演するのは実は初めてのことです。酪農と気象ってどんな関係があるの?…と思われるかもしれませんが、よくよく考えていただくとお分かりいただけると思いますが、実は極めて密接に関係しているのです。
酪農といえば牛の飼育ですが、その餌となる牧草やトウモロコシといった植物を生育させることも酪農における極めて重要な業務です。そこには気象が大きく影響しますし、私達人間が気象・気候により体調を崩すことがあるように、牛だって気象・気候により体調は大きく左右されます。体調により乳(ミルク)の出にも大きく影響は受けるでしょうし、なにより病気にでも罹ったら、大変です。そういう意味では、通常の農業以上に気象に対して敏感な産業と言えるのではないでしょうか。
特に今年は、8月下旬に台風が複数個連続して北海道に上陸し、酪農が盛んな道東地域を中心に北海道内各地で甚大な被害が発生したこともあり、酪農関係者の皆さんの間でも、気象は重要な関心事項になっているようです。
そういうこともあり、この日の研修会の参加者は230名(もっとも、研修会の前に総会が開催されたこともありますが…)。私はご依頼を受けてこれまで各所で何度も講演をさせていただいておりますが、そういう中でもこの230名という聴衆の数は過去最大規模かもしれません。ゆうに200名は収容できるほどの広い会場だったのですが、後ろのほうには立ち見の方までいらっしゃるほどでした。参加された方々の名簿を見させていただくと、地名の欄には、中標津、別海、幌延、名寄、興部、浜頓別、富良野、宗谷、稚内、紋別、湧別、網走、更別、上士別、鹿追(順不同)……アイヌ語由来の北海道らしい地名が幾つも並んでいます。まさに広い北海道内各地から、それぞれの地域を代表する名だたる酪農家の皆さん方が一堂に会したって感じです。それに加えて、各地のJA(農業協同組合)やホクレン、TMRセンター、農機具メーカー、種苗業者、飼料会社、農業関連金融機関、北海道農政事務所、北海道庁農政部の方々の名前が並び、まさに酪農関連のオール北海道という感じです。
研修会は北海道TMRセンター連絡協議会の佐々木二郎会長(浜頓別エバーグリーン代表取締役)の開催挨拶で始まり、講演のトップバッターが私の「気象ビッグデータの活用で農業(酪農)を元気に!」と題した1時間の講演でした。
短い休憩を挟んで、続いて、伊藤忠商事株式会社北海道支社食料部の鈴木俊介氏が「スーパークーリングシステムを活用した物流」と題した講演を、さらにホクレン農業協同組合連合会 酪農畜産事業本部牛乳乳製品部の小澤博之次長と同酪農部の山本努課長が「生乳の流れの現状と今後の流通について」と題した講演、最後は、農林水産省生産局畜産部飼料課の大石晃課長補佐が「国産粗飼料関係予算について」と題した講演を、それぞれ30分ずつなさいました。
ちなみに、私が今回この北海道TMRセンター連絡協議会の研修会に講師としてお招きを受けたのは、全国農業協同組合中央会(JA全中)など農協グループが設立した国内で初めて投資対象を農業分野に特化したベンチャーキャピタル「アグリビジネス投資育成株式会社」が今年の2月10日に東京で開催した「若手後継者・経営幹部向けセミナー」に私と北海道TMRセンター連絡協議会の事務局を務められておられる株式会社オーレンス総合経営の福田直紀様の2人が講師として登壇させていただいたご縁があったからです。その際、福田様からこれと同じ講演を是非北海道でもやって欲しいとのご依頼を受け、今回それが実現したというわけです。ありがたいことです。
私の講演は、当初私が想像していた以上に好評だったようです。壇上から見る限り、聴いていただいている皆さんの目は真剣そのもので、大きく頷いたり、熱心にメモを取っておられる方の姿が目立ちました。230名という大人数を前にしての講演でしたが、確かな手応えを感じました。通常、私の講演では途中に息抜きのような小ネタを幾つも挟むのですが、今回は聴いていただく方の勢いに押されて、最初に少し小ネタを入れたくらいで、ほとんど本論だけで突っ走らせていただきました。それほど熱心に聴いていただきました。気候条件の厳しい北海道は、他の地域以上に気象情報に対するニーズは高いようです。農業関連の仕事をする以上、北海道は絶対に外せません。私が農業気象をテーマに北海道で講演するのは初めてのことでしたが、その北海道でも弊社ハレックスが実現を目指す農業向け気象情報サービスのラインナップが十分に受け入れられる下地があることを肌身で実感しました。これは大きな成果でした。
……(その2)に続きます。
執筆者
株式会社ハレックス
前代表取締役社長
越智正昭
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