2017/02/13
NAGOMI Setouchi(なごみ・せとうち)
1月7日から、弊社ハレックスとお付き合いのあるラジオ局TOKYO FM(エフエム東京)さんが瀬戸内圏に属する香川県、愛媛県、徳島県、兵庫県、岡山県、広島県、山口県のFMラジオ局7社と共同で『NAGOMI Setouchi(なごみ・せとうち)』という新番組を始められました。瀬戸内7県の魅力を国内外に発信している観光振興マネジメント組織「せとうちDMO(一般社団法人せとうち観光推進機構)」と連携して、毎月、瀬戸内に関係の深い有名人の方々が瀬戸内海の様々なところを旅して、瀬戸内の魅力を発信していこうという番組です。(DMOとは「まち・ひと・しごと創生総合戦略Destination Management/Marketing Organization」の略)
TOKYO FM 「NAGOMI Setouchi」公式HPトップ
一般社団法人 せとうち観光推進機構(せとうちDMO)公式HP
TOKYO FMさんによると、これまで東日本大震災で被災した福島県など特定地域に焦点を当てた“特番”はあったそうなのですが、全国38局の「全国FM放送協議会」(JAPAN FM NETWORK,:JFN)のキー局ではあるものの、東京都を主たる放送対象エリアとしている同局がその放送対象エリア外のどこか特定の地域を舞台にした番組を“恒常的に制作”するのは初めてのことなのだそうです。TOKYO FMでは瀬戸内の活性化などを図るプロジェクトと位置付け、番組を軸に海外ネットワークなども駆使して「せとうち文化」を広く伝えていくとしています。
番組のパーソナリティーは、フリーアナウンサーの山根基世さん。毎月1人の表現者が「旅人」となって瀬戸内の島や海、森を訪れ、住民との触れ合いや生活・文化の体験から着想を得てアート作品を創り上げていく様子を伝えていきます。
初回の1月は愛媛県四国中央市出身で世界的に有名な書道家・紫舟さんが旅人となり、粟島、豊島、犬島、男木島…と主に香川県の島々を旅しました。紫舟さんは2013年に香川県で開催された「瀬戸内国際芸術祭2013」にご自身の作品を出展なさっていて、そうした島々を巡りながらそのご自身の作品が展示されていた施設を再訪するという内容でした。
今月2月はギタリストの村治佳織さんが私の故郷・愛媛県を旅しています。肩にギターケースをかけ、バッグには文豪・夏目漱石の小説『坊ちゃん』の文庫本をしのばせて…。訪れる場所は三津浜、道後温泉、内子町、下灘駅……。どこも実に味わい深いところです。
実はTOKYO FMの冨木田道臣会長と千代勝美社長から依頼されて、不肖私も瀬戸内出身ということで、この番組制作プロジェクトにアドバイザーのような形で参画することになりました。冨木田会長は香川県高松市のご出身です。昨年の夏に私は香川県の東京事務所さんから依頼されて、香川県東京事務所が開催した香川県出身の財界人や東京に事務所を構えている香川県の地元企業の方々との交流会で講演させていただいたのですが、講演後、真っ先に私のところに駆けつけて声をかけていただいたのが冨木田会長でした。
それ以降交流が始まり、何度かお会いして、地元香川県や四国、瀬戸内の話をさせていただくうちに「越智さんって面白い人だねぇ〜」ということになり、「今度、TOKYO FMが中心となってこういう番組を始めることにしたんだけど、越智さん、手伝ってくれ」ということになりました。私は愛媛新聞社から依頼されて、ここ2年半ほど同社が運営する会員制サイト『愛媛新聞オンライン』で毎月コラム「晴れ時々ちょっと横道」を連載させていただいているのですが、そのコラムでは主に愛媛県を中心とした四国や瀬戸内地方の歴史や文化について書かせていただいています。そこで書いた内容や調べたことなどをお話しさせていただいたのですが、思わぬところで活きちゃいました。
特に、「同じ瀬戸内海でも四国側から見た瀬戸内海と、対岸の中国地方側から見た瀬戸内海では、見た時の印象がガラッと変わるのをご存知ですか?四国側からだと太陽を背にすることになるので、眩いばかりの“順光”の景色になるので、底抜けに明るい感じの瀬戸内海。中国地方側からだと眩しい太陽に目を細めながら見ないといけない“逆光”の景色になるので、ちょっと暗い感じもする瀬戸内海。人それぞれ好みがあるのでどっちがいいとも言えませんが、どっちも味わい深いですよねぇ〜。また、そのことが、同じ瀬戸内海を囲む地域と言っても、それぞれの地域の文化の違いに少なからず影響を与えていると私は思っています」って申し上げたのが決め手になったようです。その直後に「手伝ってくれ」というお言葉をいただきましたから。
私は四国の愛媛県の出身で、中学高校時代を同じく四国の香川県で過ごし、大学は瀬戸内海を挟んで対岸にある中国地方の広島県の大学。まさに生まれ育った郷里は“瀬戸内”と言ってもいいくらいの瀬戸内育ちです。その郷里“瀬戸内”を番組で取り上げていただけるわけです。お断りする理由が見つからないので、二つ返事でお引き受けすることとしました。
瀬戸内海を囲む瀬戸内地域は、昭和9年(1934年)3月16日に雲仙天草国立公園、霧島錦江湾国立公園とともに、「瀬戸内海国立公園」として日本で初めて国立公園として指定された極めて風光明媚なところです。瀬戸内海は本州、四国、九州に挟まれた内海で、前述の7県(香川県、愛媛県、徳島県、兵庫県、岡山県、広島県、山口県)のほか、大阪府、和歌山県、大分県、福岡県がそれぞれ海岸線を持っています。瀬戸内海は東西方向約450km、南北方向は15~55km、平均水深約31mという内海で、数多くの島嶼群で構成されていて、豊かな生態系を持つことで知られています。気候は瀬戸内海式気候と呼ばれ、1年を通して温暖で降水量が少ないという特徴があります。
現在もそうですが、海は物流の大動脈で、瀬戸内海も古来から畿内地方と九州地方を結ぶ幹線航路としてヒトとモノが行き来し、大いに繁栄しました。その歴史は縄文時代まで遡ることができます。このため、瀬戸内地域にはそうした長い歴史の様々な痕跡と文化が、今も各地に残されています。日本で初めて国立公園として指定された多島海の美しい風景に加えて、この歴史と文化…、観光資源としてはこの上ないものが揃っているのですが、東京に出てきて思うことは、残念ながらそのような瀬戸内地域の素晴らしさが世の中的にはほとんど知られていないってことです。
これには様々な理由があろうかと思います。その中でも、瀬戸内地域が全体として中途半端に豊かなことが一番の理由なのではないかと私は分析しています。前述のように気候が温暖で、豊かな生態系を持つ海が目の前にあるということで、美味しい陸の幸、海の幸に恵まれていますし、古くから海運業や造船業をはじめとしてそれなりに柱となる産業があったことから中途半端に豊かで、暮らしやすいところなのです。なので、観光というものにさほど力を入れてこなかった…というのが実状です。それには「煩わしいから、わざわざこんなところに来ていただかなくても結構」というような排他的な心理が瀬戸内地域の人達の頭の中に多少潜んでいるのではないか…と推察しています。
もちろん、これまでも府県レベルや各自治体、地元企業のレベルで観光誘致に向けた様々な取り組みがなされてきたことは存じ上げています。ですが、それはあくまでも“点”としての取り組み。瀬戸内海は前述のように東西方向約450km、南北方向15~55kmという海で、11の府県が海岸線を有している広い海です。そこの主たる交通手段は船。船の速度は昔と比べて随分と速くなったとはいえ、陸路における交通手段と比べると昔と今の速度の差はさほど大きいものではありません。ということは、この瀬戸内海を取り囲む瀬戸内地域各地の交流は盛んだったと推定されます。なので、瀬戸内地域に関しては“点”ではなく、あくまでも瀬戸内海という“面”で捉える必要があります。これまでの行政主体の観光振興策ではそこのところがどうしても難しく、課題となっていました。その課題を解決するために組織されたのが観光振興マネジメント組織「せとうちDMO」で、その「せとうちDMO」を中核に瀬戸内エリア全体を俯瞰してマネジメントすることにより、“瀬戸内”が国内外の多くの人々から選ばれる地域(ブランド)となることができたなら、本当に素晴らしいことであると、瀬戸内育ちの人間としては大いに期待しているところです。また、その取り組みの末端の末端に少しでも関われることを、たいへん嬉しく思っています。
先ほど、“瀬戸内”が国内外の多くの人々から選ばれる地域(ブランド)へ…ということを書かせていただきましたが、瀬戸内の景色の美しさはこれまで数多くの欧米人から高く評価されてきました。幕末期における医師であり博物学者であったシーボルトをはじめ、明治維新直後に瀬戸内海を訪れたシルクロードの命名者として知られるドイツ人の地理学者フェルディナンド・フォン・リヒトホーフェンも、その著書『支那旅行日記』の中で瀬戸内海の風景を「これ以上のものは世界のどこにもないであろう」と大絶賛して書き記しているほどです。実は瀬戸内海という地名も、シーボルトやリヒトホーフェンの影響を受けて明治期にこの地を訪れた欧米人達がこの海域のことをThe Inland Sea(内海)と呼んだことによるもので、そのThe Inland Seaを日本人の地理学者たちが「瀬戸内海」と訳して呼んだことが瀬戸内海という地名の始まりとされています。ちなみに、現在も瀬戸内海の英語表記は「Seto Inland Sea」です。
最近では、この瀬戸内地域を訪れていただく外国人観光客の姿が以前と比べて増えてきているように感じています。それも欧米人の方々が…。私は90歳の父と88歳の母を残しているため、時々週末に実家のある愛媛県松山市に帰省しているのですが、実家近くを通る遍路道では白装束で歩いて旅(霊場巡礼)をする欧米人の方々の姿を以前よりも多く目にするようになりました。聖地巡礼という文化は、日本人以上に欧米人には受け入れやすいのだろうと想像します。香川県と岡山県で毎年開催されている「瀬戸内国際芸術祭」、いまや世界で最も美しいサイクリングロードの1つとして有名になりつつある愛媛県と広島県の間を結ぶ「しまなみ海道」にも欧米人を中心に多くの外国人観光客が訪れていただくようになってきました。観光で訪れるだけでは飽き足らず、瀬戸内海の島々に移り住む欧米人の数も多いという話を聞いたことがあります。
機は熟していますね。これからは『Setouchi』です!
この『NAGOMI Setouchi(なごみ・せとうち)』、ラジオの番組でありながら、瀬戸内海の美しい風景がそのまま伝わってくるような素晴らしい番組です。皆さん、是非お聴きください。
「NAGOMI Setouchi」番組について&各局放送時間
【追記1】
それにしても、この7県が一緒に手を携えて一つの目標に向かって進んでいくって画期的なことではないでしょうか。往々にして隣接する県同士は仲が悪いものではありますが、これまでこの瀬戸内地域は特にその傾向が強かったように思います。ハッキリ言って“バラバラ”。そういう中で、この7県がガッチリとタッグを組んだわけです。地元で育った人間だけに、それがいかに画期的なことであるかが分かります。これは本気ですね。
【追記2】
『NAGOMI Setouchi(なごみ・せとうち)』の初回の1月は香川県の島々が取り上げられたのですが、もしかすると、それはTOKYO FMの冨木田会長が関係しているのかもしれません。新年のご挨拶に訪問させていただいた折に、冨木田会長に「初回が香川県って、やはり冨木田会長の関係ですか?」って大変に失礼なことをお訊きしたのですが、冨木田会長は笑って「私は番組の内容には基本的にクチを挟まない主義だ」とお答えになられました。とは言っても、番組制作者としては気を遣っちゃいますよね(笑)冨木田会長の故郷瀬戸内に対する思いは並々ならないところがありますから。
香川県は私が中学高校時代を過ごしたもう1つの故郷ですので、香川県が一番最初に取り上げられたことは、メチャメチャ嬉しかったですよ…とお伝えしました。また、二番目に取り上げられたのが私の生まれ故郷である愛媛県ですし、気を遣っていただいて、ありがとうございます…とも(笑)
TOKYO FM 「NAGOMI Setouchi」公式HPトップ
一般社団法人 せとうち観光推進機構(せとうちDMO)公式HP
TOKYO FMさんによると、これまで東日本大震災で被災した福島県など特定地域に焦点を当てた“特番”はあったそうなのですが、全国38局の「全国FM放送協議会」(JAPAN FM NETWORK,:JFN)のキー局ではあるものの、東京都を主たる放送対象エリアとしている同局がその放送対象エリア外のどこか特定の地域を舞台にした番組を“恒常的に制作”するのは初めてのことなのだそうです。TOKYO FMでは瀬戸内の活性化などを図るプロジェクトと位置付け、番組を軸に海外ネットワークなども駆使して「せとうち文化」を広く伝えていくとしています。
番組のパーソナリティーは、フリーアナウンサーの山根基世さん。毎月1人の表現者が「旅人」となって瀬戸内の島や海、森を訪れ、住民との触れ合いや生活・文化の体験から着想を得てアート作品を創り上げていく様子を伝えていきます。
初回の1月は愛媛県四国中央市出身で世界的に有名な書道家・紫舟さんが旅人となり、粟島、豊島、犬島、男木島…と主に香川県の島々を旅しました。紫舟さんは2013年に香川県で開催された「瀬戸内国際芸術祭2013」にご自身の作品を出展なさっていて、そうした島々を巡りながらそのご自身の作品が展示されていた施設を再訪するという内容でした。
今月2月はギタリストの村治佳織さんが私の故郷・愛媛県を旅しています。肩にギターケースをかけ、バッグには文豪・夏目漱石の小説『坊ちゃん』の文庫本をしのばせて…。訪れる場所は三津浜、道後温泉、内子町、下灘駅……。どこも実に味わい深いところです。
実はTOKYO FMの冨木田道臣会長と千代勝美社長から依頼されて、不肖私も瀬戸内出身ということで、この番組制作プロジェクトにアドバイザーのような形で参画することになりました。冨木田会長は香川県高松市のご出身です。昨年の夏に私は香川県の東京事務所さんから依頼されて、香川県東京事務所が開催した香川県出身の財界人や東京に事務所を構えている香川県の地元企業の方々との交流会で講演させていただいたのですが、講演後、真っ先に私のところに駆けつけて声をかけていただいたのが冨木田会長でした。
それ以降交流が始まり、何度かお会いして、地元香川県や四国、瀬戸内の話をさせていただくうちに「越智さんって面白い人だねぇ〜」ということになり、「今度、TOKYO FMが中心となってこういう番組を始めることにしたんだけど、越智さん、手伝ってくれ」ということになりました。私は愛媛新聞社から依頼されて、ここ2年半ほど同社が運営する会員制サイト『愛媛新聞オンライン』で毎月コラム「晴れ時々ちょっと横道」を連載させていただいているのですが、そのコラムでは主に愛媛県を中心とした四国や瀬戸内地方の歴史や文化について書かせていただいています。そこで書いた内容や調べたことなどをお話しさせていただいたのですが、思わぬところで活きちゃいました。
特に、「同じ瀬戸内海でも四国側から見た瀬戸内海と、対岸の中国地方側から見た瀬戸内海では、見た時の印象がガラッと変わるのをご存知ですか?四国側からだと太陽を背にすることになるので、眩いばかりの“順光”の景色になるので、底抜けに明るい感じの瀬戸内海。中国地方側からだと眩しい太陽に目を細めながら見ないといけない“逆光”の景色になるので、ちょっと暗い感じもする瀬戸内海。人それぞれ好みがあるのでどっちがいいとも言えませんが、どっちも味わい深いですよねぇ〜。また、そのことが、同じ瀬戸内海を囲む地域と言っても、それぞれの地域の文化の違いに少なからず影響を与えていると私は思っています」って申し上げたのが決め手になったようです。その直後に「手伝ってくれ」というお言葉をいただきましたから。
私は四国の愛媛県の出身で、中学高校時代を同じく四国の香川県で過ごし、大学は瀬戸内海を挟んで対岸にある中国地方の広島県の大学。まさに生まれ育った郷里は“瀬戸内”と言ってもいいくらいの瀬戸内育ちです。その郷里“瀬戸内”を番組で取り上げていただけるわけです。お断りする理由が見つからないので、二つ返事でお引き受けすることとしました。
瀬戸内海を囲む瀬戸内地域は、昭和9年(1934年)3月16日に雲仙天草国立公園、霧島錦江湾国立公園とともに、「瀬戸内海国立公園」として日本で初めて国立公園として指定された極めて風光明媚なところです。瀬戸内海は本州、四国、九州に挟まれた内海で、前述の7県(香川県、愛媛県、徳島県、兵庫県、岡山県、広島県、山口県)のほか、大阪府、和歌山県、大分県、福岡県がそれぞれ海岸線を持っています。瀬戸内海は東西方向約450km、南北方向は15~55km、平均水深約31mという内海で、数多くの島嶼群で構成されていて、豊かな生態系を持つことで知られています。気候は瀬戸内海式気候と呼ばれ、1年を通して温暖で降水量が少ないという特徴があります。
現在もそうですが、海は物流の大動脈で、瀬戸内海も古来から畿内地方と九州地方を結ぶ幹線航路としてヒトとモノが行き来し、大いに繁栄しました。その歴史は縄文時代まで遡ることができます。このため、瀬戸内地域にはそうした長い歴史の様々な痕跡と文化が、今も各地に残されています。日本で初めて国立公園として指定された多島海の美しい風景に加えて、この歴史と文化…、観光資源としてはこの上ないものが揃っているのですが、東京に出てきて思うことは、残念ながらそのような瀬戸内地域の素晴らしさが世の中的にはほとんど知られていないってことです。
これには様々な理由があろうかと思います。その中でも、瀬戸内地域が全体として中途半端に豊かなことが一番の理由なのではないかと私は分析しています。前述のように気候が温暖で、豊かな生態系を持つ海が目の前にあるということで、美味しい陸の幸、海の幸に恵まれていますし、古くから海運業や造船業をはじめとしてそれなりに柱となる産業があったことから中途半端に豊かで、暮らしやすいところなのです。なので、観光というものにさほど力を入れてこなかった…というのが実状です。それには「煩わしいから、わざわざこんなところに来ていただかなくても結構」というような排他的な心理が瀬戸内地域の人達の頭の中に多少潜んでいるのではないか…と推察しています。
もちろん、これまでも府県レベルや各自治体、地元企業のレベルで観光誘致に向けた様々な取り組みがなされてきたことは存じ上げています。ですが、それはあくまでも“点”としての取り組み。瀬戸内海は前述のように東西方向約450km、南北方向15~55kmという海で、11の府県が海岸線を有している広い海です。そこの主たる交通手段は船。船の速度は昔と比べて随分と速くなったとはいえ、陸路における交通手段と比べると昔と今の速度の差はさほど大きいものではありません。ということは、この瀬戸内海を取り囲む瀬戸内地域各地の交流は盛んだったと推定されます。なので、瀬戸内地域に関しては“点”ではなく、あくまでも瀬戸内海という“面”で捉える必要があります。これまでの行政主体の観光振興策ではそこのところがどうしても難しく、課題となっていました。その課題を解決するために組織されたのが観光振興マネジメント組織「せとうちDMO」で、その「せとうちDMO」を中核に瀬戸内エリア全体を俯瞰してマネジメントすることにより、“瀬戸内”が国内外の多くの人々から選ばれる地域(ブランド)となることができたなら、本当に素晴らしいことであると、瀬戸内育ちの人間としては大いに期待しているところです。また、その取り組みの末端の末端に少しでも関われることを、たいへん嬉しく思っています。
先ほど、“瀬戸内”が国内外の多くの人々から選ばれる地域(ブランド)へ…ということを書かせていただきましたが、瀬戸内の景色の美しさはこれまで数多くの欧米人から高く評価されてきました。幕末期における医師であり博物学者であったシーボルトをはじめ、明治維新直後に瀬戸内海を訪れたシルクロードの命名者として知られるドイツ人の地理学者フェルディナンド・フォン・リヒトホーフェンも、その著書『支那旅行日記』の中で瀬戸内海の風景を「これ以上のものは世界のどこにもないであろう」と大絶賛して書き記しているほどです。実は瀬戸内海という地名も、シーボルトやリヒトホーフェンの影響を受けて明治期にこの地を訪れた欧米人達がこの海域のことをThe Inland Sea(内海)と呼んだことによるもので、そのThe Inland Seaを日本人の地理学者たちが「瀬戸内海」と訳して呼んだことが瀬戸内海という地名の始まりとされています。ちなみに、現在も瀬戸内海の英語表記は「Seto Inland Sea」です。
最近では、この瀬戸内地域を訪れていただく外国人観光客の姿が以前と比べて増えてきているように感じています。それも欧米人の方々が…。私は90歳の父と88歳の母を残しているため、時々週末に実家のある愛媛県松山市に帰省しているのですが、実家近くを通る遍路道では白装束で歩いて旅(霊場巡礼)をする欧米人の方々の姿を以前よりも多く目にするようになりました。聖地巡礼という文化は、日本人以上に欧米人には受け入れやすいのだろうと想像します。香川県と岡山県で毎年開催されている「瀬戸内国際芸術祭」、いまや世界で最も美しいサイクリングロードの1つとして有名になりつつある愛媛県と広島県の間を結ぶ「しまなみ海道」にも欧米人を中心に多くの外国人観光客が訪れていただくようになってきました。観光で訪れるだけでは飽き足らず、瀬戸内海の島々に移り住む欧米人の数も多いという話を聞いたことがあります。
機は熟していますね。これからは『Setouchi』です!
この『NAGOMI Setouchi(なごみ・せとうち)』、ラジオの番組でありながら、瀬戸内海の美しい風景がそのまま伝わってくるような素晴らしい番組です。皆さん、是非お聴きください。
「NAGOMI Setouchi」番組について&各局放送時間
【追記1】
それにしても、この7県が一緒に手を携えて一つの目標に向かって進んでいくって画期的なことではないでしょうか。往々にして隣接する県同士は仲が悪いものではありますが、これまでこの瀬戸内地域は特にその傾向が強かったように思います。ハッキリ言って“バラバラ”。そういう中で、この7県がガッチリとタッグを組んだわけです。地元で育った人間だけに、それがいかに画期的なことであるかが分かります。これは本気ですね。
【追記2】
『NAGOMI Setouchi(なごみ・せとうち)』の初回の1月は香川県の島々が取り上げられたのですが、もしかすると、それはTOKYO FMの冨木田会長が関係しているのかもしれません。新年のご挨拶に訪問させていただいた折に、冨木田会長に「初回が香川県って、やはり冨木田会長の関係ですか?」って大変に失礼なことをお訊きしたのですが、冨木田会長は笑って「私は番組の内容には基本的にクチを挟まない主義だ」とお答えになられました。とは言っても、番組制作者としては気を遣っちゃいますよね(笑)冨木田会長の故郷瀬戸内に対する思いは並々ならないところがありますから。
香川県は私が中学高校時代を過ごしたもう1つの故郷ですので、香川県が一番最初に取り上げられたことは、メチャメチャ嬉しかったですよ…とお伝えしました。また、二番目に取り上げられたのが私の生まれ故郷である愛媛県ですし、気を遣っていただいて、ありがとうございます…とも(笑)
執筆者
株式会社ハレックス
前代表取締役社長
越智正昭
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