2017/04/07
銀の匙Silver Spoon第3章(その1)
2月の中標津出張に引き続き、3月16日(木)、17日(金)、18日(土)の2泊3日で、またまた北海道に出張してきました。今回の行先は道東の帯広市。NTTデータ北海道さんからの依頼で、3月16日に開催される「一般社団法人北海道中小企業家同友会とかち支部 農業経営部会ICT化グループ」(帯広信用金庫 地域経済振興部後援)の3月例会で、農業分野における気象ビッグデータの活用に関して講演するための出張です。
まず、向かったのは帯広空港ではなくて、新千歳空港。新千歳空港で札幌から帯広に向かうNTTデータ北海道さんの社用車にピックアップしていただき、陸路、帯広市に向かうことにしました。この日の関東地方もよく晴れて、羽田空港を離陸した飛行機からは、眼下に関東平野がよく見えます。
飛行すること約1時間。北海道南西部にある渡島半島(おしまはんとう)が見えてきました。渡島半島は北海道西部から、内浦湾を抱き込むように南へと曲がった半島です。南部は日本海に面する松前半島と、太平洋に面する亀田半島の二方向に分岐していて(一般的には、それぞれ「渡島半島南西部」、「渡島半島南東部」と表現されます)、津軽海峡を隔ててそれぞれ本州北部の津軽半島、下北半島と向き合っています。その2つの半島に挟まれた場所に狭い函館平野があり、そこにこの地域の中心都市、函館市があります。見えてきたのはそのうちの亀田半島。半島の一番先っぽは活火山・恵山(えさん)の麓にある恵山岬です。ちなみに、恵山は気象庁が常時観測をしている活火山で、亀田半島は横津岳を主峰に、恵山や駒ヶ岳などといった活火山が連なっています。本州はよく晴れていたのに、北海道の道央、道東地方は雲がかかっているようです。恵山は確認できるものの、横津岳や駒ケ岳は確認することができませんでした。
渡島半島が見えてきたあたりから飛行機は徐々に高度を下げ、定刻に新千歳空港に着陸しました。さすがに北海道。3月の中旬だというのに滑走路脇には雪が残っています。
新千歳空港で帯広まで同行していただくNTTデータ北海道のK部長と合流し、NTTデータ北海道の社用車で帯広に向かいました。新千歳空港から帯広市までは約150km。道東自動車道を使えば約2時間の距離です。社用車の運転をしていただいたNTTデータ北海道の総務課の方に話を聞くと、札幌から日本最北端の稚内にだって社用車を使ってふつうに行くこともあるそうで、帯広までクルマで行くことなんて楽勝…ってことでした。さすが北海道。距離感が違います。
新千歳空港のある石狩地方と、帯広市のある十勝地方の間には北海道中央部を襟裳岬に向かって南北に貫く急峻な日高山脈(最高峰は標高2,053 mの幌尻岳)が横たわっていて、人々の行き来を妨げていました。明治時代の中期に、石狩地方と十勝地方を鉄道で結ぼうという計画が持ち上がり、ルート選定のために各地を踏査した上で、最終的に選んだところが、空知郡南富良野町と上川郡新得町の境界にある佐幌岳(日高山脈の最北に位置し、標高1,060m)の中腹にある標高644mの峠を通るルート。石狩と十勝から1文字ずつ取って「狩勝(かりかち)峠」と命名されたルートでした(この狩勝峠越えのルートは江戸時代から十勝街道として存在していたルートで、現在も滝川市から釧路市へ至る国道38号線はこの狩勝峠を通っています)。
この石狩地方と十勝地方を鉄道で結ぶ計画は着工から9年、明治40年(1907年)に狩勝峠のすぐ下、最大標高534 m のところで貫いて抜ける狩勝トンネル(全長954m)の完成をもって、旭川~釧路間が開通。釧路線と呼ばれるようになり、その後、大正2年(1913年)には起点を旭川から滝川に変更して釧路本線、さらには大正10年(1921年)には根室まで延伸し全通。根室本線と呼ばれることになります。
当時の狩勝越えは、札幌方面から狩勝トンネルを抜けると一気に景色が開けて、広大な十勝平野が眼下に一望できたことから「日本三大車窓」の一つにも数えられた景勝地で、乗客には大変に喜ばれるルートでした。しかし、急勾配の上にトンネル断面が小さく排煙も悪かったため、列車は上り勾配による速度低下と力行による排煙増加に加えて、熱による上昇気流や列車がシリンダー内のピストンと化すことで大量の煤煙と蒸気が機関車にまとわり付くことになり、蒸気機関車の乗務員にとっては、絶えず窒息の危険と隣り合わせの難所中の難所でした。この問題を解消するため、根室本線落合駅~新得駅間の狩勝峠の勾配を緩和するための新線の一部として、昭和41年(1966年)、新狩勝トンネル(延長5,790m)が開通し、「日本三大車窓」と謳われた狩勝トンネルを通る旧線ルートは営業廃止になりました。
道東自動車道はこの狩勝峠(日高山脈)を全長 2,351mの狩勝第一トンネルを使って抜けていきます。千歳(南千歳駅)から夕張市を経て狩勝峠(新狩勝トンネル)で日高山脈を越えたところにある新得駅までは昭和41年(1966年)に開通したJR石勝線が通っているのですが、道東自動車道はそのJR石勝線にほぼ並行して延びています。なので、狩勝第一トンネルを抜けた時には、「日本三大車窓」の一つに数えられた旧狩勝トンネルのような雄大な景色が楽しめるのかな…と大いに期待していたのですが、肝心の狩勝峠付近だけは道東自動車道はJR石勝線より若干南寄りのコースを通っているため、ちょっと期待外れでした。それでも、狩勝第一トンネルの前後で景色は一変。車窓が開け、原生林の木々の間から広大な十勝平野が顔を覗かすようになります。ちなみに狩勝第一トンネルは、最大標高 626mのところを通っていて、この地点は北海道内の高速道路で最高地点となっています。
下の写真は、途中、休憩に立ち寄った十勝平原サービスエリアで撮影したものです。遠くに見える山々は日高山脈です。
十勝平野は北海道東部に位置し、西は日高山脈、北は石狩山地、東は白糠丘陵に囲まれ、南部は太平洋に面している台地性の平野のことです。面積は東京都(約2,190㎢)より遥かに広く、埼玉県(約3,798㎢)や奈良県(約3,691㎢)に匹敵する約3,600㎢。「日本のウクライナ」と形容されるほどの農業大国で、広い北海道の中でも随一と言えるくらいの一大畑作地帯です。広い耕地に大型機械を活用した大規模農業が盛んで、畑作や酪農が中心。広い大地の中で、ジャガイモ、長芋、スイートコーン、タマネギ、小麦、大豆、小豆、甜菜(てんさい:砂糖大根)、アスパラガスなどの農産物、牛乳・チーズなどの乳製品、ハムやソーセージなどの畜産加工品…等々、多くの特産品が生産され、いずれも我が国有数の生産地になっています。特に、全国240万トンのジャガイモ生産量のうち約78%のシェアを誇るのが北海道。十勝平野はその北海道のジャガイモの約42%を生産しています。
十勝農業協同組合連合会のHPによると、平成26年産農畜産物に係る十勝管内(すなわち、十勝平野)24農協の取扱高は約2,798億円。取扱高に占める耕種部門の割合は43.8%、畜産部門が56.2%。耕種部門は畑作物と野菜、畜産部門は生乳と肉用牛の生産が主になっており、地域的には帯広市を中心とする十勝平野中央部では耕種の比率が高く、山麓部や沿海地域では酪農・畜産主体の経営になっています。
十勝農業協同組合連合会HP
まさに「日本のウクライナ」、農業大国です。
また、今回のブログの題名にもした『銀の匙 Silver Spoon』。この『銀の匙 Silver Spoon』は北海道帯広市在住の女流漫画家・荒川弘(ひろむ)さんが描き、漫画雑誌「週刊少年サンデー」に2011年から連載中の漫画のことです。北海道の帯広市にある農業高校、大蝦夷農業高等学校(通称:エゾノー )を舞台に、酪農に向き合う主人公と、個性豊かな登場人物が織りなす仲間同士の友情、恋の行方、夢と現実の狭間での葛藤、農家の社会問題、そして“命”と真摯に向き合う姿がユーモラスに描かれている、青春グラフィティ作品です。そして、この私のブログ『おちゃめ日記』にも「銀の匙 Silver Spoon(その2)」の稿で書きましたが、私の農業に関する原点はこの漫画『銀の匙 Silver Spoon』でした。
銀の匙 Silver Spoon(その2)
その『銀の匙 Silver Spoon』の舞台となった帯広の地に、ついにやって来ることができました。農業に関係する以上、いつかは帯広、十勝平野に行きたい…と思っていたのですが、それをこういう形で実現することができました。大袈裟な言い方になってしまいますが、感慨深いものがあります。八軒クン、アキちゃん、駒場クン、タマコ…、ついに来ちゃいましたよ(笑)
十勝平野の農産品には小麦や砂糖、小豆、バター、生クリーム等々…お菓子の原料となるものの多くが並んでいます。そのせいか十勝平野の中心地・帯広市やその周辺には多くの菓子店があります。新千歳空港等でも販売され、北海道土産の定番になっている「マルセイバターサンド」の『六花亭』も、実は本店は帯広市にあります。その『六花亭』のほかにも個性的なお菓子のお店がたくさんあり、NTTデータ北海道のK部長から「時間があるので、ちょっと寄ってみませんか?」と誘われて帯広市内に入る直前に立ち寄ったのが帯広市に隣接する音更町にある『柳月(りゅうげつ)』の本社工場。『柳月』は『六花亭』と並ぶ十勝の2大菓子会社で、主力商品は「三方六(さんぽうろく)」。「三方六」は昭和40年(1965年)、北海道開拓100年を記念して作られたお菓子で、名前は、三方六寸に切られた白樺の薪をイメージして付けられました。縦に切られた形のバウムクーヘンであり、白樺の木肌を2色のチョコレートで表現しています。試食をしてみたのですが、これが絶品。さっそく、自宅へのお土産用として購入しちゃいました。
柳月HP
K部長によると、この『柳月』は地域経済論や地域企業論が専門の経営学者・坂本光司さん(法政大学大学院政策創造研究科教授)が著した「日本でいちばん大切にしたい会社」(あさ出版)にも取り上げられた会社なのだそうです。製品の美味しさもさることながら、店内の明るさ、特に店員(社員)の皆さんが心から明るい笑顔で接客されている姿に感心しちゃいました。工場もガラス窓越しに自由に見学することができるのですが、食を扱う工場だけに見事なまでに清潔で、安心感を与えてくれます。「日本でいちばん大切にしたい会社」に選ばれるだけのことはあります。
「日本でいちばん大切にしたい会社」という本が出版されていることをK部長から紹介されて初めて知りましたが、それに関連して、「人を大切にする経営学会」という学会や、その「人を大切にする経営学会」が運営している「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞という賞があることを知りました。その両方のHPを覗いてみたのですが、なるほどぉ~…と思えることが多々ありました。弊社ハレックスも「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞に選ばれるような会社になれるように、さらに変革を進めていかないといけないな…と、思いを新たにしました。
人を大切にする経営学会HP
「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞HP
帯広に到着し、訪問したのは今回の講演会の主催者である一般社団法人北海道中小企業家同友会とかち支部の事務局を務めていただいている帯広信用金庫様。そこで、理事長様や地域経済振興部長様と十勝地方の農業の現状と課題、将来展望等について意見交換をさせていただきました。さすがに地元に根差した金融機関である信用金庫です。いろいろと参考になるお話を聞くことができました。
一般社団法人北海道中小企業家同友会とかち支部 農業経営部会ICT化グループの3月例会は19時開始という遅い時間帯の開始でした。皆さん、仕事を終えての参加ということで、この時間からの開始です。
この日、参加なさった方々は約20名。農業経営部会ということで、酪農家や農場主という農業関係者が主体です。その中でもICT部会ということで、農業分野へのICTの導入に強い関心をお持ちの方々ばかりの集まりです。1ヶ月前に同じ道東の中標津で行った講演と同じく「気象ビッグデータの活用で農業を元気に!」という題名で講演を行わせていただきました(もちろん、帯広ネタで少しアレンジを加えていますが…)。講演時間が1時間30分、その後の質疑応答が30分という少し長めの講演でしたが、皆さん、熱心にメモを取りながら聴いていただけました。その後の質疑応答も30分間途切れることなく次から次に質問や感想が寄せられ、非常に手応えを感じる講演だったのではないかと思っています。
さすがに『銀の匙 Silver Spoon』の舞台です。皆さん、意識が高い方々が揃っておられます。こういうことを言うと失礼にあたるかもしれませんが、本当に驚きました。やはり、農業に関係する以上は十勝の地に来てみないといけません。日本の農業の未来は十勝平野から切り拓けるのではないか…という印象を持ちました。
19時という遅い開始でしたので、講演会が終了したのは21時。その時間から場所を居酒屋に移して意見交換会(懇親会)でした。この意見交換会も先ほどまでの質疑応答に引き続いて話題が尽きることなく、あっという間に時間が過ぎていった感じもして、極めて有意義なものでした。それにしても、さすがは「日本のウクライナ」と言われる十勝地方。出てくる料理はどれも極めて美味しかったです。特にジャガイモとゴボウ、これは絶品でした。
意見交換会(懇親会)が終了して、JR帯広駅前にあるホテルに戻ってきた時には23時をとうに過ぎていました。東京からの移動に、講演に、意見交換会…と結構ハードな1日でしたが、収穫が大きかった分、疲れはほとんど感じませんでした。酔っていたこともありますが、この日はベッドに入ると、気持ちよくグッスリと眠ることができました。
……(その2)に続きます。
まず、向かったのは帯広空港ではなくて、新千歳空港。新千歳空港で札幌から帯広に向かうNTTデータ北海道さんの社用車にピックアップしていただき、陸路、帯広市に向かうことにしました。この日の関東地方もよく晴れて、羽田空港を離陸した飛行機からは、眼下に関東平野がよく見えます。
飛行すること約1時間。北海道南西部にある渡島半島(おしまはんとう)が見えてきました。渡島半島は北海道西部から、内浦湾を抱き込むように南へと曲がった半島です。南部は日本海に面する松前半島と、太平洋に面する亀田半島の二方向に分岐していて(一般的には、それぞれ「渡島半島南西部」、「渡島半島南東部」と表現されます)、津軽海峡を隔ててそれぞれ本州北部の津軽半島、下北半島と向き合っています。その2つの半島に挟まれた場所に狭い函館平野があり、そこにこの地域の中心都市、函館市があります。見えてきたのはそのうちの亀田半島。半島の一番先っぽは活火山・恵山(えさん)の麓にある恵山岬です。ちなみに、恵山は気象庁が常時観測をしている活火山で、亀田半島は横津岳を主峰に、恵山や駒ヶ岳などといった活火山が連なっています。本州はよく晴れていたのに、北海道の道央、道東地方は雲がかかっているようです。恵山は確認できるものの、横津岳や駒ケ岳は確認することができませんでした。
渡島半島が見えてきたあたりから飛行機は徐々に高度を下げ、定刻に新千歳空港に着陸しました。さすがに北海道。3月の中旬だというのに滑走路脇には雪が残っています。
新千歳空港で帯広まで同行していただくNTTデータ北海道のK部長と合流し、NTTデータ北海道の社用車で帯広に向かいました。新千歳空港から帯広市までは約150km。道東自動車道を使えば約2時間の距離です。社用車の運転をしていただいたNTTデータ北海道の総務課の方に話を聞くと、札幌から日本最北端の稚内にだって社用車を使ってふつうに行くこともあるそうで、帯広までクルマで行くことなんて楽勝…ってことでした。さすが北海道。距離感が違います。
新千歳空港のある石狩地方と、帯広市のある十勝地方の間には北海道中央部を襟裳岬に向かって南北に貫く急峻な日高山脈(最高峰は標高2,053 mの幌尻岳)が横たわっていて、人々の行き来を妨げていました。明治時代の中期に、石狩地方と十勝地方を鉄道で結ぼうという計画が持ち上がり、ルート選定のために各地を踏査した上で、最終的に選んだところが、空知郡南富良野町と上川郡新得町の境界にある佐幌岳(日高山脈の最北に位置し、標高1,060m)の中腹にある標高644mの峠を通るルート。石狩と十勝から1文字ずつ取って「狩勝(かりかち)峠」と命名されたルートでした(この狩勝峠越えのルートは江戸時代から十勝街道として存在していたルートで、現在も滝川市から釧路市へ至る国道38号線はこの狩勝峠を通っています)。
この石狩地方と十勝地方を鉄道で結ぶ計画は着工から9年、明治40年(1907年)に狩勝峠のすぐ下、最大標高534 m のところで貫いて抜ける狩勝トンネル(全長954m)の完成をもって、旭川~釧路間が開通。釧路線と呼ばれるようになり、その後、大正2年(1913年)には起点を旭川から滝川に変更して釧路本線、さらには大正10年(1921年)には根室まで延伸し全通。根室本線と呼ばれることになります。
当時の狩勝越えは、札幌方面から狩勝トンネルを抜けると一気に景色が開けて、広大な十勝平野が眼下に一望できたことから「日本三大車窓」の一つにも数えられた景勝地で、乗客には大変に喜ばれるルートでした。しかし、急勾配の上にトンネル断面が小さく排煙も悪かったため、列車は上り勾配による速度低下と力行による排煙増加に加えて、熱による上昇気流や列車がシリンダー内のピストンと化すことで大量の煤煙と蒸気が機関車にまとわり付くことになり、蒸気機関車の乗務員にとっては、絶えず窒息の危険と隣り合わせの難所中の難所でした。この問題を解消するため、根室本線落合駅~新得駅間の狩勝峠の勾配を緩和するための新線の一部として、昭和41年(1966年)、新狩勝トンネル(延長5,790m)が開通し、「日本三大車窓」と謳われた狩勝トンネルを通る旧線ルートは営業廃止になりました。
道東自動車道はこの狩勝峠(日高山脈)を全長 2,351mの狩勝第一トンネルを使って抜けていきます。千歳(南千歳駅)から夕張市を経て狩勝峠(新狩勝トンネル)で日高山脈を越えたところにある新得駅までは昭和41年(1966年)に開通したJR石勝線が通っているのですが、道東自動車道はそのJR石勝線にほぼ並行して延びています。なので、狩勝第一トンネルを抜けた時には、「日本三大車窓」の一つに数えられた旧狩勝トンネルのような雄大な景色が楽しめるのかな…と大いに期待していたのですが、肝心の狩勝峠付近だけは道東自動車道はJR石勝線より若干南寄りのコースを通っているため、ちょっと期待外れでした。それでも、狩勝第一トンネルの前後で景色は一変。車窓が開け、原生林の木々の間から広大な十勝平野が顔を覗かすようになります。ちなみに狩勝第一トンネルは、最大標高 626mのところを通っていて、この地点は北海道内の高速道路で最高地点となっています。
下の写真は、途中、休憩に立ち寄った十勝平原サービスエリアで撮影したものです。遠くに見える山々は日高山脈です。
十勝平野は北海道東部に位置し、西は日高山脈、北は石狩山地、東は白糠丘陵に囲まれ、南部は太平洋に面している台地性の平野のことです。面積は東京都(約2,190㎢)より遥かに広く、埼玉県(約3,798㎢)や奈良県(約3,691㎢)に匹敵する約3,600㎢。「日本のウクライナ」と形容されるほどの農業大国で、広い北海道の中でも随一と言えるくらいの一大畑作地帯です。広い耕地に大型機械を活用した大規模農業が盛んで、畑作や酪農が中心。広い大地の中で、ジャガイモ、長芋、スイートコーン、タマネギ、小麦、大豆、小豆、甜菜(てんさい:砂糖大根)、アスパラガスなどの農産物、牛乳・チーズなどの乳製品、ハムやソーセージなどの畜産加工品…等々、多くの特産品が生産され、いずれも我が国有数の生産地になっています。特に、全国240万トンのジャガイモ生産量のうち約78%のシェアを誇るのが北海道。十勝平野はその北海道のジャガイモの約42%を生産しています。
十勝農業協同組合連合会のHPによると、平成26年産農畜産物に係る十勝管内(すなわち、十勝平野)24農協の取扱高は約2,798億円。取扱高に占める耕種部門の割合は43.8%、畜産部門が56.2%。耕種部門は畑作物と野菜、畜産部門は生乳と肉用牛の生産が主になっており、地域的には帯広市を中心とする十勝平野中央部では耕種の比率が高く、山麓部や沿海地域では酪農・畜産主体の経営になっています。
十勝農業協同組合連合会HP
まさに「日本のウクライナ」、農業大国です。
また、今回のブログの題名にもした『銀の匙 Silver Spoon』。この『銀の匙 Silver Spoon』は北海道帯広市在住の女流漫画家・荒川弘(ひろむ)さんが描き、漫画雑誌「週刊少年サンデー」に2011年から連載中の漫画のことです。北海道の帯広市にある農業高校、大蝦夷農業高等学校(通称:エゾノー )を舞台に、酪農に向き合う主人公と、個性豊かな登場人物が織りなす仲間同士の友情、恋の行方、夢と現実の狭間での葛藤、農家の社会問題、そして“命”と真摯に向き合う姿がユーモラスに描かれている、青春グラフィティ作品です。そして、この私のブログ『おちゃめ日記』にも「銀の匙 Silver Spoon(その2)」の稿で書きましたが、私の農業に関する原点はこの漫画『銀の匙 Silver Spoon』でした。
銀の匙 Silver Spoon(その2)
その『銀の匙 Silver Spoon』の舞台となった帯広の地に、ついにやって来ることができました。農業に関係する以上、いつかは帯広、十勝平野に行きたい…と思っていたのですが、それをこういう形で実現することができました。大袈裟な言い方になってしまいますが、感慨深いものがあります。八軒クン、アキちゃん、駒場クン、タマコ…、ついに来ちゃいましたよ(笑)
十勝平野の農産品には小麦や砂糖、小豆、バター、生クリーム等々…お菓子の原料となるものの多くが並んでいます。そのせいか十勝平野の中心地・帯広市やその周辺には多くの菓子店があります。新千歳空港等でも販売され、北海道土産の定番になっている「マルセイバターサンド」の『六花亭』も、実は本店は帯広市にあります。その『六花亭』のほかにも個性的なお菓子のお店がたくさんあり、NTTデータ北海道のK部長から「時間があるので、ちょっと寄ってみませんか?」と誘われて帯広市内に入る直前に立ち寄ったのが帯広市に隣接する音更町にある『柳月(りゅうげつ)』の本社工場。『柳月』は『六花亭』と並ぶ十勝の2大菓子会社で、主力商品は「三方六(さんぽうろく)」。「三方六」は昭和40年(1965年)、北海道開拓100年を記念して作られたお菓子で、名前は、三方六寸に切られた白樺の薪をイメージして付けられました。縦に切られた形のバウムクーヘンであり、白樺の木肌を2色のチョコレートで表現しています。試食をしてみたのですが、これが絶品。さっそく、自宅へのお土産用として購入しちゃいました。
柳月HP
K部長によると、この『柳月』は地域経済論や地域企業論が専門の経営学者・坂本光司さん(法政大学大学院政策創造研究科教授)が著した「日本でいちばん大切にしたい会社」(あさ出版)にも取り上げられた会社なのだそうです。製品の美味しさもさることながら、店内の明るさ、特に店員(社員)の皆さんが心から明るい笑顔で接客されている姿に感心しちゃいました。工場もガラス窓越しに自由に見学することができるのですが、食を扱う工場だけに見事なまでに清潔で、安心感を与えてくれます。「日本でいちばん大切にしたい会社」に選ばれるだけのことはあります。
「日本でいちばん大切にしたい会社」という本が出版されていることをK部長から紹介されて初めて知りましたが、それに関連して、「人を大切にする経営学会」という学会や、その「人を大切にする経営学会」が運営している「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞という賞があることを知りました。その両方のHPを覗いてみたのですが、なるほどぉ~…と思えることが多々ありました。弊社ハレックスも「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞に選ばれるような会社になれるように、さらに変革を進めていかないといけないな…と、思いを新たにしました。
人を大切にする経営学会HP
「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞HP
帯広に到着し、訪問したのは今回の講演会の主催者である一般社団法人北海道中小企業家同友会とかち支部の事務局を務めていただいている帯広信用金庫様。そこで、理事長様や地域経済振興部長様と十勝地方の農業の現状と課題、将来展望等について意見交換をさせていただきました。さすがに地元に根差した金融機関である信用金庫です。いろいろと参考になるお話を聞くことができました。
一般社団法人北海道中小企業家同友会とかち支部 農業経営部会ICT化グループの3月例会は19時開始という遅い時間帯の開始でした。皆さん、仕事を終えての参加ということで、この時間からの開始です。
この日、参加なさった方々は約20名。農業経営部会ということで、酪農家や農場主という農業関係者が主体です。その中でもICT部会ということで、農業分野へのICTの導入に強い関心をお持ちの方々ばかりの集まりです。1ヶ月前に同じ道東の中標津で行った講演と同じく「気象ビッグデータの活用で農業を元気に!」という題名で講演を行わせていただきました(もちろん、帯広ネタで少しアレンジを加えていますが…)。講演時間が1時間30分、その後の質疑応答が30分という少し長めの講演でしたが、皆さん、熱心にメモを取りながら聴いていただけました。その後の質疑応答も30分間途切れることなく次から次に質問や感想が寄せられ、非常に手応えを感じる講演だったのではないかと思っています。
さすがに『銀の匙 Silver Spoon』の舞台です。皆さん、意識が高い方々が揃っておられます。こういうことを言うと失礼にあたるかもしれませんが、本当に驚きました。やはり、農業に関係する以上は十勝の地に来てみないといけません。日本の農業の未来は十勝平野から切り拓けるのではないか…という印象を持ちました。
19時という遅い開始でしたので、講演会が終了したのは21時。その時間から場所を居酒屋に移して意見交換会(懇親会)でした。この意見交換会も先ほどまでの質疑応答に引き続いて話題が尽きることなく、あっという間に時間が過ぎていった感じもして、極めて有意義なものでした。それにしても、さすがは「日本のウクライナ」と言われる十勝地方。出てくる料理はどれも極めて美味しかったです。特にジャガイモとゴボウ、これは絶品でした。
意見交換会(懇親会)が終了して、JR帯広駅前にあるホテルに戻ってきた時には23時をとうに過ぎていました。東京からの移動に、講演に、意見交換会…と結構ハードな1日でしたが、収穫が大きかった分、疲れはほとんど感じませんでした。酔っていたこともありますが、この日はベッドに入ると、気持ちよくグッスリと眠ることができました。
……(その2)に続きます。
執筆者
株式会社ハレックス
前代表取締役社長
越智正昭
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